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sasanoji radio Awards 2018 【Best Female Artist】編

2018

 

こんばんは。
人知れずコッソリ不定期放送中、フェイクラジオ・sasanoji電台です。

 

2018年を振り返るsasanoji radio Awards 2018、今夜は【Best Female Artist】編をお送りいたします。毎年最も熾烈というか、弱肉強食感漂うのがこの部門。次から次へと若手が台頭してきて、トップにいた人たちがアッという間に食われてしまう下剋上…。昨年はとくにその印象が強かったですねー。

 

それでは僕が選んだ2018年度【Best Female Artist】部門の候補6名です、どうぞ。

 

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袁婭維Tia Ray『TIARA』(5月,華納)

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1984年生まれ、中国湖南省出身の実力派女性シンガー・袁婭維(ユェンヤーウェイ)です。これが2ndアルバムとなりますが、どうです!彼女が放つオーラの強さは。まるで女王のような貫禄ではないですか。2004年、袁婭維は20歳のときに北京のホテルでラウンジ歌手をしていたところを日本のレーベルに発掘されて来日。2年ほど専門的な音楽のトレーニングを受け、帰国後はドラマの主題歌を歌ったり、有名歌手のバックコーラスや歌唱指導、2010年からは友人の黒人ミュージシャンたちと結成したネオソウルバンド・Tha KnutZでボーカルを務めるなどしていました。広く知られるキッカケとなったのは、2012年にソロで出場した大陸の歌唱コンテスト番組『中國好聲音』。そこで高い評価を受けた彼女は、決勝を待たずに大手レーベル・金牌大風Gold Typhoon[*1]と契約。2014年、1stアルバム『T.I.A.』(華納)でメジャーデビューを飾りました。アルバムは本作を含めまだ2枚しか出していませんが、じつは長いキャリアを持つ本格派の歌手だったのですね。日台での知名度は今ひとつですが、知っておいて損はないアーティストだと思います。超推薦。

 

李佳薇Jess Lee『相反的是』(6月,華納)

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1988年生まれ、マレーシア出身の実力派女性シンガー・李佳薇(リージャーウェイ)です。人気オーディション番組『超級星光大道』第7シーズン(2010~2011年)の優勝者で、2011年に華納音樂Warner Musicから1stアルバム『感謝愛人』でメジャーデビューしました。ただ、そのデビューがちょっと気の毒だったんですね。1stシングル『煎熬』のセンセーショナルなMVばかりが注目をされて、いきなりエロドロ恋愛系みたいなレッテルを貼られてしまった[*2]。当時の彼女はどちらかというと地味な感じで、おそらく話題作りのために会社側が仕掛けた戦略だったのでしょう。2016年の3rdアルバムあたりからですかね、イメージチェンジに取り組み始めたのは。ポップな楽曲を多めにして、見た目も黒髪のロングストレートから明るい色のウェーブヘアに。最近では肩上くらいまで短くしています。バラエティ番組に出演している彼女を見て、こんなに饒舌で楽しそうに笑う人だったんだと印象を新たにしました。この4thアルバムはこれまでになく明朗で、可愛らしい雰囲気に満ちています。たしかにエロドロが持つ強烈なパワーは失われてしまいましたが、でも、ようやくその呪縛から解き放たれた彼女の分岐点的作品として、僕は評価してあげたいです。

 

孫盛希Shi Shi『女.人 Woman』(7月,滾石),『希遊記』(10月,滾石)

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1990年生まれ、韓国華僑[*3]出身の若手のホープ、女性シンガーソングライター・希希Shi Shiこと孫盛希(スンションシー)です。2012年に出場したオーディション番組『華人星光大道』第2シーズンで第6位に入賞。2014年、滾石唱片Rock Recordsから1stアルバム『GIRLS』でメジャーデビューしました。本2作が3rdアルバムと4thアルバムになるわけですが、1年に2枚ですよ2枚。彼女、2016年の2ndアルバム『Between』が金曲獎に引っかからなかったのが相当に悔しかったようで、そのリベンジも込めた倍返しでしょうか。ボイストレーニングもかなり積んだのでしょう、高音部の音域が明らかに上がっています。メロディメイクはさらに緻密で、僕は音楽理論は全くわかりませんけど、気持ちの良いフレーズの組み合わせ方がバツグンに巧いと感じました。意表を突かれるつなぎ方をしているところも結構あって、全体としては複雑化しているのに、気持ちの良さは全く損なわれていない。ジグソーパズルのピースのように、ここしかないというポイントにビタリとハメ込んでくる。このセンス、本当に鳥肌が立ってしまう。近い将来、彼女は必ずトップを獲るでしょう。案外それはもう目の前まで来ているのかもしれません。

 

劉艾立Erika『天鵝說』(11月,華納)

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本名は劉婉婷。1992年生まれ、米・カリフォルニア州出身の中国系アメリカ人。2016年にメジャーレーベル・華納音樂Warner Musicからデビューした女性シンガー・Erikaこと劉艾立(リウアイリー)の2ndアルバムです。彼女も李佳薇と同じオーディション番組『超級星光大道』第7シーズン(2010~2011年)の出身。このときの優勝者はもちろん李佳薇。Erikaは第5位でした。Erikaは18歳のとき歌手になるために台湾にやって来ました。番組終了後は事務所(喜鵲娛樂)の先輩である蕭敬騰の世界ツアーにコーラスメンバーとして同行。台灣藝術大學戲劇系に進み、ドラマ・演劇も学んでいます。2016年、1stアルバム『I Am Erika』で念願のCDデビュー。翌2017年、第28屆金曲獎最佳新人獎にノミネートされました。当時の彼女にはソングライターの気配は見えませんでしたが、時間を掛けて勉強したのでしょう、2ndアルバムとなる本作では全12曲中7曲を彼女自身が手掛けています(うち2曲は作詞も)。また、ミュージカルに出演するなど女優業にも進出、表現力の幅を広げています。まだここに入れるのは早いかとも思いましたが、聴き比べる中で強く印象に残った進境著しいこの若手を、期待も込めて選んでみました。

 

艾怡良Eve Ai『垂直活著,水平留戀著。』(12月,EMI/環球)

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1987年生まれ、2017第28屆金曲獎の最佳國語女歌手・艾怡良(アイイーリャン)の4thアルバムです。2010年、艾怡良は23歳のときにオーディション番組『超級偶像』第5シーズン(2010~2011年)に出場し、過去に例のない高成績を収めて優勝。翌2012年、索尼音樂Sony Musicから1stアルバム『如果你愛我』でメジャーデビューしました。このデビューアルバムでは1曲のみ作詞作曲に携わっていましたが、2015年頃からはメジャー歌手へも楽曲提供するようになり、2016年の3rdアルバム『說 艾怡良』では6曲を作詞作曲(ほか作詞のみが1曲)するなど、現在はソングライターとしても非凡な才を見せています[*4]。この作品で艾怡良は第28屆金曲獎に於いて年度專輯獎、最佳國語專輯獎、最佳國語女歌手獎など全7部門にノミネートされ、見事最佳國語女歌手獎を獲得。その3rdから2年7ヶ月、EMIにレーベルを移しリリースした本作は全曲が彼女のオリジナルとなり、今回の金曲獎でも最佳國語女歌手獎を含む主要関連5部門にノミネートされています。艾怡良は前回の受賞のあと、しばらく燃え尽き症候群みたいになっていたようですが、再び気力充実、女王の座を狙ってきましたよ。

 

蔡健雅Tanya Chua『我要給世界最悠長的濕吻』(12月,環球)

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1975年生まれ、シンガポール出身。1999年アルバムデビューのベテラン・蔡健雅(ツァイジエンヤー)、3年ぶり11枚目の國語アルバムです。彼女の経歴についてはもう語らずともよいでしょうか。金曲獎のイメージが強い蔡健雅ですが、じつはノミネート数自体は多いものの、受賞したのは第17屆(2006年)の最佳國語女演唱人獎、第19屆(2008年)の最佳專輯製作人獎と最佳國語女歌手獎、第23屆(2012年)の最佳國語女歌手獎の4つだけ、意外と少ないのですね。僕は今でも2009年の8thアルバム『若你碰到他』が最高傑作だと思っていて、第21屆(2010年)で4部門にノミネートされながら1つも獲れなかったのが未だに不思議でならないのですけど、この後から彼女の作品は実験的なオルタナティブ色が濃くなっていくんですね。トップにあってもそこで固まりたくない気持ち、分かります。ただ、取っ付き難くなってしまったのも事実で、2011年の『說到愛』以降の作品は残念ながら僕の愛聴盤とはなりませんでした。で、11年ぶりに華納に戻ってリリースした本作。一言で言うと、久々に愛聴盤に出来る蔡健雅でした。これが彼女が求めていたモノの本当の姿なのかは分かりません、プロの評価ともまた違うのかもしれませんが、少なくとも僕はこれを聴いてホッとしました。何故か、ありがとう~と言いたい気分になりました。まあ、ジャケット写真についてはノーコメントですけどね^^;。

 

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以上がsasanoji radio Awards 2018【Best Female Artist】部門の候補6名でした。
ベテラン、現トップ、そのライバル、台頭する若手、もっと注目されてよいはずの実力派、などをバランス良く選んでみました。…て、独断と偏見と言いながら金曲獎よりも僕のほうがよほど気を使っているではないですかww。

ほか注目どころを挙げておくと、ベテラン勢では、4年ぶりに新作をリリースした天后・許茹芸Valen Hsu、同じく4年ぶりに國語アルバムをリリースした香港の実力派アーティスト・莫文蔚Karen Mok陳綺貞Cheer Chenは5年ぶり、萬芳Wan Fangは3年9ヶ月ぶり。それからライブ盤だったのでネットでのチェックのみとしましたが6年ぶりにアルバムをリリースした安溥anpu(張懸)らの存在感はさすが。

若手実力派では、大陸の少数民族・彝イ族出身の新世代シンガー・吉克雋逸Summer.JK、大連出身でカナダ国籍のシンガーソングライター・于文文Kelly Yu、香港出身の実力派シンガーソングライター・岑寧兒Yoyo Sham、Roomieの元メンバー・林采欣Bae Lin、前回の金曲獎で最佳國語女歌手獎にノミネートされた呂薔Amuyi、4年ぶりに新作をリリースした白安Ann、2枚目のソロアルバムをリリースした棉花糖(活動休止中)のボーカル・小球Ball(莊鵑瑛)などは要注目。

個人的に注目しているのは、大陸南方海南島に居住する少数民族・黎リー族出身の個性派シンガーソングライター・蘇運瑩Sue、3年7ヶ月ぶりに新作をリリースした梁文音Rachel Liang、約7年ぶりにアルバムをリリースした第23屆金曲獎の最佳新人候補・吳南穎Fiona、独立系レーベル・喜國娛樂所属の実力派シンガー・伊雪Eisheiインドネシア華僑出身の若手シンガーソングライター・樂夏Leshiaらが僕の推し^^。

金曲獎的には林憶蓮Sandy Lam蔡依林Jolin Tsai許茹芸Valen Hsu莫文蔚Karen Mokあたりは欠かせないでしょうね。あ、あと王心凌Cyndi Wang、相変わらずアイドルっぽさは抜けていないものの、かなり良かったですよ、このアルバム。もうそろそろどこか入れてあげてほしいかな^^。女性部門まだまだ書き足りませんが、こんなところでいかがでしょうか。

 

では第30屆金曲獎の候補も見ていきますね。僕のほうは今回たまたまですけど國語作品のみだったので、最佳國語女歌手獎だけ触れます。

【最佳國語女歌手獎】
艾怡良『垂直活著,水平留戀著。』
孫盛希『希遊記』
岑寧兒『Nothing is Under Control』
蔡依林『Ugly Beauty』
林憶蓮『0』

 

これを見てまず驚いたのが、蔡健雅が入っていないこと。僕は若干点数は甘めでしたが入れました、久しぶりのアルバムだし、敬意を込めて(気を使ってます^^)。今回蔡健雅の入圍は…最佳作曲人獎のみですか~、寂しいな~これは。枠数は前回も5つですから、そこの不自然さはないです。盗作騒ぎの影響でもないでしょうし…。やはり世代交代ですかねー、厳しいですね〜女性部門は。

艾怡良は2017年の受賞者、蔡依林は2007年、林憶蓮は2013年にそれぞれ受賞しています。おもしろいのが蔡依林と林憶蓮、この2人今回も入れて2007年以降3度ノミネートされているのですけど、全部かぶってるんですよねー。現在は1対1のイーブン。さて今回はどういう結果になりますか。

孫盛希は2015年の最佳新人獎以来の金曲獎ノミネート!対象作は『希遊記』のみですけど『女.人 Woman』も出してますし、本当に頑張りました。年度專輯獎、最佳國語專輯獎、最佳編曲人獎にも選ばれています。おめでとう!

岑寧兒も2016年の最佳新人獎以来のノミネートですね。彼女は今回プロデュースも務めていて、最佳專輯製作人獎にもノミネートされています。これは嬉しいだろうなー、本当に良かった!それから余談になりますが、この岑寧兒のアルバムにはもう1つ注目したい点があって。製作した会社、如此有限公司(代表・陳正倫)というのですけど、知ってます?設立は2012年とのことですが、僕は初めて見ました、ていうか憶えてないです(代理発行は好有感覺音樂)。この部門は毎年メジャーレーベルが大変に強いところで、そこへ聞いたことのない独立系のレーベルが割って入るなんて、これはちょっとした事件ですよ。どんなやり取り(バトル)を経て枠を獲得したのか、その辺の裏話を審査員に聞いてみたくなりました。以上、余談でした。

では金曲獎予想ですが、本命は蔡依林で決まりでしょうかねー。対抗は艾怡良か林憶蓮…、林憶蓮にしておきますか。そのほうが面白そうだ。単穴は孫盛希…、いや岑寧兒…、ん~やっぱり孫盛希で^^;。ということで、僕は単穴・孫盛希推しでいきます!でも、岑寧兒にも獲ってほし~い!

 

追記:
第30屆金曲獎【最佳國語女歌手獎】は、対抗・林憶蓮が受賞しました~!おめでとう~!!

 

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たぶんこれが最後のS電賞。

 

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脚注

*1:2014年に華納音樂Warner Musicに買収、彼女の身柄はそのまま華納に移動した。

*2:日本生まれの台湾人女優・初家晴(韓国人とのクォーター)を起用したMVの性描写があまりにも過激(放送禁止になるほどの)だったため、ネガティブなイメージを持った音楽ファンが一気に引いてしまい、結局地味な歌詞版ビデオに変更せざるを得なくなった。

*3:韓国に在住する華人。現在の在韓華人の大部分は大陸の国共内戦から逃れて来た国民党支持者を祖とする中華民国人で、彼女は3世になる。

*4:記憶に新しいところでは2017年の徐佳瑩のアルバム『心裡學』の首波主打『言不由衷』(作詞のみ)、同じく2017年、張惠妹のアルバム『偷故事的人』のタイトルナンバー『偷故事的人』が彼女の提供楽曲。