sasanoji電台【台湾ポップス専門】

こちらはsasanoji電台第1廣播、TW-POP専門チャンネルです。

岑寧兒が問う、あなたにとってHomeとは何ですか?

 

今夜最初にお聴きいただいたのは、5月26日にリリースされました香港出身の実力派女性シンガーソングライター・岑寧兒Yoyo Shamの初広東語EPHome is...から、OPナンバー這裡でした。

 

 

令和4年8月14日、日曜日。時刻は午後11時4分30秒になるところです。

皆さん、こんばんは。いかがお過ごしでしょうか。人知れずコッソリ不定休放送中、フェイクラジオ・sasanoji電台です。

 

お盆休みも終わりですね。行動制限のないお盆は3年ぶりですか。皆さんは帰省されましたでしょうか。久しぶりに両親、兄弟、親戚、地元の友人の顔を見たよという方、きっと多いことでしょう。一方で、コロナの感染者数がまた増えてきて心配なので今年も見合わせたよと、ずいぶん長いこと故郷に帰っていません、という方も少なくないと思います。帰りたいのに帰れないというのはつらいですよね。自由に動ける日常が早く戻ってきてほしいです。

 

さて今回は、久しぶりに香港出身の女性シンガーソングライター・岑寧兒(ツェンニーンアル)Yoyo Shamを取り上げます。

Yoyoは長く台湾を拠点に活動していたのですが、2020年10月に生まれ故郷の香港に戻りました。拠点を香港に移した、ということですね。この放送で彼女を初めて取り上げたのが2012年3月ですから、10年余…になりますか。ずっと気に掛けていた推しの1人です。その推しが台湾から去ってしまってちょっと寂しく思っていたのですけども、5月26日、2年ぶりに新作をリリースしました。今夜は彼女にとって初めての広東語作品となります、4曲入りEPHome is…をご紹介いたします。よろしければしばらくお付き合いくださいませ。

 

 

岑寧兒Yoyo Sham『Home is…』(2022年)

 

プロフィールを簡単にご紹介しておきましょう。岑寧兒1984年11月7日生まれ、現在37歳。香港出身の女性シンガーソングライターです。お父さんは俳優兼監督の岑建勳John Shumですね。2005年にカナダ留学から戻ったYoyoは、名プロデューサー・李宗盛Jonathan Leeとの出会いをキッカケに音楽の道に進み、北京にある彼のスタジオで裏方として働きながら多くの薫陶を受けました。台湾のクリエイターズサイト・StreetVoice上で発表した楽曲が音楽ファンの注目を集め、2010年、活動の拠点を台湾に移して本格的に音楽活動を開始。本作を含めこれまでに4枚のEPと2枚のスタジオ録音アルバム、1枚のライブアルバムをリリースしています。金曲獎には2016年の第27屆で《最佳新人》部門(1stアルバム『Here』)にノミネート、2019年の第30屆で《最佳專輯製作人》部門と《最佳國語女歌手》部門(2ndアルバム『Nothing is Under Control』)にそれぞれノミネートされていますが、残念ながら受賞はなりませんでした。落ち着いた温暖系の歌声とサウンドが魅力の実力派アーティストです。

 

 

ではここでYoyoの最新EPHome is…から、2曲目に収録の無常家をどうぞ。作曲は彼女の友人、香港の女性シンガーソングライター・林二汶Eman Lamが担当しています。

 

 

今作のメインテーマは《Home》、《家》です。《故郷》、《居場所》、あるいは《スタイル》と言い換えてもいいかもしれません。収録されている4曲には《家》にまつわるテーマがそれぞれ設けられていて、1曲目『這裡』は《回家Going Home》、2曲目『無常家』は《無家Homeless》、3曲目『勿念』は《想家Homesick》、4曲目『風的形狀』は《離家Leaving Home》となっています。

今回Yoyoは実際に《回家》…故郷に戻ったのですけども、彼女自身はそれほど物理的な《家》には執着していないようですね。心の落ち着き場所、自分にとっての《特別》がある場所が即ち《家》ということなのだと思います。彼女は香港で生まれ、17歳でカナダに留学し、帰国後は中国(北京)から台湾(台北)と、長いあいだ故郷を離れて暮らしてきました。引っ越しも何度もしているそうですが、そういった暮らしの中で得た考え方なのか、それとも元々そういった意識の持ち主だったのか…。以前、香港の人気女性歌手・謝安琪Kay Tseが初めての標準中国語(華語)アルバム『第二個家』(2010年)をリリースしたときに、『心休まる場所さえ探し出せば、世界中どこにいても家にいるのと同じ』と言っていましたが、《家》、《定住》に拘りを持つ日本人にはなかなか辿り着くのが難しい感性なのかもしれません。

 

 

では3曲目勿念にいきましょうか。これはMVが全部で4種類もあります。女優の林嘉欣Karena Lam、鍾雪瑩Chung Suet Ying、韋羅莎Rosaがそれぞれ主演を務めています。最初は1本のMVにするつもりだったそうですが、女優さんの演技があまりにも素晴らしかったので、監督のHalftalkが4つの異なるバージョンに分けて仕上げたのだそうです。とくに林嘉欣が主演した1本目ですね、これはYoyoが歩んできたストーリーがモチーフとなっていて、本当は台湾で撮影したかったらしいのですが、ご存知のとおりコロナ禍で移動が困難だったため、なんと金曲獎受賞監督・陳映之に助力を請うて台湾のシーンを撮影してもらったそうです。この4本のMVは10月14日20時に同時公開されて話題を呼びました。

 

 

参加アーティストの顔ぶれもアットホームな感じがして良いですよね。従兄の陳哲廬Jerald(Swing,張山Charatay)、友人の林二汶Eman Lam(at17)、陳蕾Panther Chan(歌手)、林家謙Terence Lam(歌手)、Mike Orange(觸執毛Chochukmo)、陳詠謙Chan Wing Him(作詞家)ら、気を許せる仲間たちが集まっています。笑ってしまったのがYoyoと陳蕾とMike Orangeの3人は《Mario Kart 8》のゲーム仲間で、《錦田車隊》というチームを組んでいるんですか?そのメンバーを呼んで3曲目『勿念』を作ったというね~。もぉ~楽しそうな現場だなww。

 

この作品はYoyoが友人の作詞家・陳詠謙の家に遊びに行ったとき、『あなたは広東語のアルバムを出したことがないですよね』と言われたのがキッカケで制作したのだそうです。陳詠謙もですが、故郷を捨て別の国に行くか迷っている香港人がたくさんいます。そして故郷から離れた土地で望郷の念を抱いている香港人もたくさんいます。そんな香港を故郷に持つ人たちのために、Yoyoは広東語だけのEPアルバム『Home is…』を作りました。家族や友人が住む香港、激変する故郷を彼女は海を隔てた台湾から見ていたわけですが、おそらくそれがこの《故郷に帰る》という大きな決断をする理由の1つにはなっているのだろうと思います。『家とは何か』、『あなたの家はどこにあるのか』を問う、癒やし度の高い雰囲気とは裏腹の、かなり深い内容の1枚となっています。

 

 

今夜は岑寧兒Yoyo Shamの最新作Home is…をご紹介してまいりましたが、いかがだったでしょうか。自分の《Home》、あなたは見つかりそうですか?

では、本日のラストナンバーです。4曲目に収録の風的形狀を聴きながらお別れいたしましょう。明日からまた仕事ですかね。気を緩めないで、また暑い日が続きますから体調管理にもじゅうぶんに気をつけてお過ごしください。それでは今夜はこの辺で。お相手はsasanoji電台でした。ごきげんよう。拜拜!

 

 

僕の《Home》はどこですか。

 

 

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