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第32屆金曲獎の予想は、激ムズ!【反省会】

令和3年8月29日、日曜日。時刻は午後10時を回りました。

皆さん、こんばんは。いかがお過ごしでしょうか。人知れずコッソリ不定期放送中、フェイクラジオ・sasanoji電台です。

 

第32屆金曲獎から1週間経ちました。皆さん、授賞式ご覧になりましたか。会場は前回と同じTaipei Music Center(台北流行音樂中心)でしたね。例年使用されるTaipei Arena(台北小巨蛋)の半分くらいの規模のホールですが、それでも前回はいろいろと縛りがある中で、観客も入れて、さすが金曲獎というスケールの舞台に仕上げていました。しかし今回は、レッドカーペットから無観客、関係者のみでの開催ということで、いつもより質素な雰囲気になってしまったのは仕方のないところでしょう。でもね、アーティストたちのパフォーマンスはいつも以上に濃厚だったと思いますよ。今回も最初から最後まで、ガッツリと楽しませていただきました。来年はきっと台北小巨蛋での金曲獎、観ることが出来ると思います。

 

 

さて今夜はですね、前回、前々回の放送でやりました第32屆金曲獎予想のォ~、反省会ですね、やっておこうと思います。
じつは2、3日前までコレ、やらないつもりでした。なんというか…金曲獎に入れ込みすぎて不満やら文句ばっかりになってしまったのでww。他人の、しかも他国のお祭りにですよ、日本人の自分があ~だこうだ言うのも無粋だなと思ってボツにしかけていたのですけども、いちおう区切りとして、そのヤバいところは抑えつつ、ちょっとだけお喋りすることにいたしました。よろしければMVだけでも観て行ってくださいませ。

 

 

 

第32屆金曲獎
The 32nd Golden Melody Awards

 

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この1週間、個人・メディア問わずTwitterで多く取り上げられていたのは、年度アルバム賞の桑布伊、最優秀華語歌手賞の田馥甄と杜振熙(蛋堡Soft Lipa)、最優秀バンド賞の落日飛車、最優秀新人賞の壞特?te(Whyte)あたりだったでしょうか。中でも壞特は正体不明の新人ということで、とりわけ注目度が高かったようですね。今回の授賞式で初めて彼女の歌を聴いて興味を覚えた、という方も少なくありませんでした。今まで聴いたことがなかったアーティストや歌に出会えたり、音楽を通じて台湾の歴史や文化を身近に感じたり出来るのも、この金曲獎の魅力の1つでしょう。

それからこれは不幸中の幸いと言っていいのかな、今回たまたまフジロックと開催日が重なってしまったんですけども、両方YouTubeで中継をやっていましたので、そのレコメンドで初めて金曲獎の存在を知ったというフジロック視聴者の方もいらっしゃったようです。台湾にもこんな大きな音楽賞があるんだよ、と知ってもらえる良い機会になったのではないかと思います。惜しむらくはフルスケールでの金曲獎をご覧いただけなかったのがね、まあ~ちょっと悔しかったですけどね。

 

 

第32屆金曲獎《評審團獎》:萬芳及其團隊(萬芳『給你們』)

  

今回の金曲獎は、主要関連合わせて8部門にノミネートされた曹雅雯と桑布伊、7部門ノミネートの萬芳と田馥甄、5部門ノミネートの杜振熙と孫盛希、4部門ノミネートの韋禮安、告五人、李泉、このあたりへの注目度がひじょうに高かったでしょうか。彼らがどれくらい持っていくのか、というところに関心が多く集まっていたと思います。が、結果は何とも微妙なバラけ方をしましたね。

複数受賞しているのは曹雅雯(3)、杜振熙(3)、田馥甄(3)、桑布伊(2)の4名ですが、曹雅雯は関連の《最佳編曲人獎 / 鍾興民》を除くと2部門。杜振熙も関連の《最佳MV獎 / 王宗欣》を除くと2部門。田馥甄は関連の《最佳作詞人獎 / 葛大為》と《最佳專輯製作人獎 / 陳建騏》を除くと《最佳華語女歌手獎》の1部門だけ。桑布伊は《年度專輯獎》と《最佳原住民語歌手獎》の2部門で変わらず、という感じです。

僕個人としては、7部門にノミネートされていた萬芳が全部逃したというのが、かなりショックでした。最終的に当日《評審團獎》という特別賞が別に与えられて無冠とはなりませんでしたが、7部門もノミネートしておいてそれはないだろうと思いましたね。ま、それをやっちゃうのが金曲獎、というのも分かってはいるのですけど、なんとも後味が悪かったです。

 

 

第32屆金曲獎《年度專輯》:桑布伊『得力量』
第32屆金曲獎《最佳原住民語歌手》:桑布伊

 

第32屆金曲獎《最佳原住民語專輯》:漂流出口『海女』

 

次は、コレですね。桑布伊の《年度專輯獎》。これもsasanoji電台的にはかなり後味が悪かったです。《年度專輯獎》は、時代によって名称は異なりますが、第2屆(1990年)から第15屆(2004年)まで設定されていた部門で、第16屆(2005年)から各言語別のアルバム賞が出来たのに伴って一旦部門としては消えました。それが第28屆(2017年)のときに、言語アルバム賞を残したまま突然復活したんですね。で、何が起きたかというと、言語部門トップを獲っていない作品が年間トップを受賞するという『ねじれ現象』が起きてしまいました。その後これまでねじれは起きておらず、評価基準を改めたのかと思っていたのですが、今回は久しぶりにねじれましたね。《年度專輯獎》に輝いたのは原住民族・卑南(プユマ)族出身のアーティスト、桑布伊の『得力量』でしたが、このアルバムは《最佳原住民語專輯獎》を獲っていません。《最佳原住民語專輯獎》は、桑布伊を抑えて漂流出口の『海女』が受賞しています。この辺の評価基準というのが本当にワケがわからないんですよ。もう1つ、第28屆でねじれを生んだ人というのが今回と同じ桑布伊で、これが二度目なんです。桑布伊は別に悪くないのですが、でも釈然としない気持ちにはなりますよね。桑布伊に《年度專輯獎》を与えるなら、《最佳原住民語專輯獎》も桑布伊にしておくべきだったと、僕は思います。《最佳原住民語歌手獎》のほうは桑布伊で文句なしですね。

漂流出口の《最佳原住民語專輯獎》は、完全に外しました。原住民語アルバムとしてはかなり個性的というか…尖った作品で、その可能性の部分が大きく評価されたのでしょうね。そこが桑布伊に勝った理由と言われると、ちょっと疑問ではあります。

 

 

第32屆金曲獎《最佳華語男歌手》:杜振熙
第32屆金曲獎《最佳華語專輯》:杜振熙『家常音樂』
第32屆金曲獎《最佳MV》:『家常音樂』(王宗欣)

 

お次はコチラ。今回の金曲獎で最も特異な作品と言っていいでしょう、蛋堡Soft Lipaこと杜振熙の6年半ぶりの新作、8thアルバムとしている記事もありますが、僕は6thアルバムと解釈しています『家常音樂』です。
蛋堡は2019年に長年所属したヒップホップレーベル・顏社を離れ、自身のレーベル・任性的人を起ち上げました。このアルバムはCD版(完売)、ダウンロード版ともに任性的人のサイトでのみ扱っている商品で、サブスクなど一般の音楽プラットフォームで聴くことは出来ません。蛋堡自身も今後そういったところで流す気は全くないと語っています。僕もYouTubeで流れている楽曲しか聴けておらず評価しようにも出来ない状況だったので予想からは外したのですが、やられましたね。こういった作品を候補に入れてくるのは何か思惑があってのことで、今回はそれを読み切れませんでした。

《最佳華語男歌手獎》は、最終審査員17人による投票が5回目まで縺れ込んで、最終的に蛋堡が9対6で韋禮安に競り勝った、ということのようです。韋禮安、悔しいなあ。

《最佳MV獎》についても、ここの候補に選ばれているからには技術的に何かすごいことをやっているのだろうなとは思ったのですが、こういう分野が苦手なので、やっぱり読みきれませんでした。実際、何かすごいことをやっているのでしょうか?

 

 

第32屆金曲獎《最佳新人》:?te壞特

 

《最佳新人獎》の最終審査は、やはりYELLOW黃宣と壞特?te(Whyte)の争いになったようで、2回目の投票で壞特?teがYELLOWに勝っています。個人的には壞特?teに獲ってもらいたいと思っていたので、今回の金曲獎はこれだけで上々、と思ったくらい本当に嬉しかったですね。いろいろな言語で歌っているので、言語別に部門が分かれている金曲獎はちょっと不利になりますけども、彼女にはこのままやりたい音楽をやっていってほしいと思います。

 

 

第32屆金曲獎《最佳台語男歌手》:許富凱

 

ここは的中でした。7回目のノミネートで初受賞。感涙に咽ぶのも当然ですよね。このレベルまで高めて獲れないとしたら一生獲れないです。それくらい素晴らしい作品でした。台湾語歌謡、あまり興味がないなという方にも、ぜひ聴いてみてほしい1枚です。言葉はわからなくても、きっと伝わってくるものがあると思いますよ。

 

 

第32屆金曲獎《最佳台語女歌手》:曹雅雯
第32屆金曲獎《最佳台語專輯》:曹雅雯『自本』
第32屆金曲獎《最佳編曲人》:鍾興民(曹雅雯『鹹汫』)

 

ここの予想もほぼ的中でしたね。これまでの台湾語歌謡の枠を超えた、ひじょうにエモーショナルな作品に仕上がっていると思います。台湾語歌に馴染みのない日本の音楽ファンにもぜひオススメしたい1枚です。

《最佳台語女歌手獎》の本命に推した張涵雅Hanya、5回目のノミネートでしたが、また受賞を逃しました。残念です。張涵雅は元から現代的なポップスのスタイルなのですが、ひょっとするとですよ、一度台湾語歌謡のほうに行ってみてもいいかもしれませんね。そこで得られるものもきっとあると思います。

 

 

第32屆金曲獎《最佳樂團》:落日飛車

 

ここは的中でした。今回はどこをポイントに見ればいいのかよく分からないラインナップではありましたが、この中から本命を選ぶとすれば、キャリアも十分で、既に世界から高く評価されている落日飛車しかないよなあという感じでした。仮に他の候補が獲ったとしても、それはそれで納得しただろうと思います。今回はそんなバンド部門でしたが、まあ~すっかり独立系(インディーズ)の牙城ですよね。メジャーバンドの巻き返しを期待したいところです。

 

 

第32屆金曲獎《最佳演唱組合》:尋人啟事

 

ここもほぼ的中ですね。久しぶりに本格的なアカペラグループが現れたな、と思いました。メンバーの殆どは臺北市立萬芳高級中學(高校)のアカペラ部出身で、結成自体は2014年なので新人というわけではないのですが、本作が初アルバムとなります。ここは最近男女ユニットが強いので、こういった多人数のボーカルグループがドンドン入ってきてくれると賑やかで楽しい部門になりますよね。

  

 

第32屆金曲獎《最佳客語歌手》:羅文裕

 

ここもほぼ的中です。黃珮舒は2年連続3回目のノミネートでしたが、今回も受賞はなりませんでした。羅文裕はこの部門2回目のノミネートで二度目の受賞。やはり強かったですね。溢れ出る明朗さ、歌の美しさ、どれも今の時代に求められているものだろうと思います。

 

 

第32屆金曲獎《最佳客語專輯》:春麵樂隊

 

対抗に入れましたが、これはもう的中扱いにしてもらってもよいのではないでしょうかww。個人的には彼らが獲ってくれることを望んでましたし、S電賞2018で最優秀新人候補に選んでいたsasanoji電台、えらい!ということで。でも正直、これが金曲獎を受賞したか、という驚きもありましたけどね。こういった個性的な作品が評価される、これも金曲獎の面白いところだと思います。

 

 

第32屆金曲獎《最佳作曲人》: HUSH(蘇慧倫『安和』)

 

第32屆金曲獎《最佳單曲製作人》:方大同(方大同『麵麵』)

 

第32屆金曲獎《最佳演唱錄音專輯》:『出沒地帶』(孫盛希)

 

萬芳と同じく昨年デビュー30周年を迎えた蘇慧倫は、関連の《最佳作曲人獎 / HUSH》1部門のみに終わりましたが、萬芳と並んでプレゼンターを務めている場面では、同じ年月芸能界を歩んできた同期の2人にしか出せない雰囲気が感じられて、とても微笑ましかったです。

方大同の金曲獎ノミネートは、《最佳國語男歌手獎》を受賞した2017年の第28屆以来。今回は《最佳單曲製作人獎》1部門のみでしたが、かなり強力なナンバーが並んでいた中、見事獲得しております。モニターに映っていた姿がちょっとやつれているように見えたのですけど、元気にやっているのでしょうか。

主要関連合わせて5部門にノミネートされていた孫盛希は、関連の《最佳演唱錄音專輯獎》1部門のみでしたね。今回はメンツがトップランカー揃いだったので、これも致し方のないところでしょう。こういうこともあります。 

 

 

第32屆金曲獎《年度歌曲》:盧廣仲『刻在我心底的名字』

 

ここは完全に外しました。最終審査員による1回目の投票で『刻在我心底的名字』(盧廣仲)と『阿峰今天沒有來』(萬芳)に絞られて、2回目の投票で『刻在』に決定しています。かなり早い選考だったようですね。これは意外でした。
僕は今回、盧廣仲の作詞作曲ではなかったので、そこに惑わされた感はあったかもしれません。言い訳をすれば…ですけどね。そう、たしかに曲の雰囲気は彼の色だったんですけど、盧廣仲の自作曲ではないのですよ。なので、僕はけっこう早くに対象から外してしまいました。う~ん、萬芳にしても、告五人にしても、そんなにアッサリ敗れるとは思えないのですけどね~。ここは、う~ん、です。盧廣仲ファンの方、怒らないでね。

 

 

第32屆金曲獎《最佳華語女歌手》:田馥甄
第32屆金曲獎《最佳作詞人》:葛大為(田馥甄『無人知曉』)
第32屆金曲獎《最佳專輯製作人》:陳建騏(田馥甄『無人知曉』)

 

最後はこの人です、田馥甄。ここは的中いたしました。S.H.EのHebeが遂にここまで来たか、という感じですよね。
《最佳華語女歌手獎》の最終選考は、1回目の投票で田馥甄、譚維維、萬芳の3名に絞られて、2回目の投票で萬芳が落選。3回目の投票で田馥甄が10対4で譚維維に競り勝っています。萬芳が2回目で脱落しているのも意外でしたが、大陸歌手の譚維維がここまで善戦していたというのは、かなり驚きですね。もしも彼女が獲っていたら、大陸歌手としては2001年(第12屆)の那英以来の受賞でした。
ただ、票差はかなり開いていますし、田馥甄の受賞に異を唱える方はおそらくいないでしょう。僕ももちろん田馥甄で異議なしです。萬芳でも異議なしでしたけどね。

 

 

以上、第32屆金曲獎予想の反省会でした。

今回の金曲獎は最後のほうの大きな部門で連敗しちゃって、ちょっとモヤモヤ~ッとした気分が残ってしまったのですけど、途中まではね、いつも外している華語以外の部門がヒットしたりして、難しかったですけど面白い金曲奬ではありました。

それからですね、sasanoji電台的視点で注目していたのが、何樂音樂という2018年に設立されたばかりの新・独立系レーベルなんですけども、今回そこから大量にノミネートされていたんですね。例えば、萬芳、田馥甄、許富凱、守夜人、理想混蛋らが何樂音樂の所属、13部門で計19のアーティストや作品が候補に選ばれていました。昨年の第31屆では大御所・陳珊妮も何樂音樂からノミネートされていましたし、この勢力は要注目しておいたほうがよいのではないかと思います。

 

 

それでは今夜最後の曲です。10月15日リリース予定、魏嘉瑩Arrow Weiの3rdアルバムからタイトルナンバー『你好嗎?』を聴きながらお別れいたしましょう。まだまだ暑い日が続きます。体調管理には十分に気をつけて、水分・ミネラルもしっかり補給して、まず目の前にある出来ることから片付けていきましょう。そうすればいずれ、光も射してくることでしょう。では皆さん、おやすみなさい。お相手はsasanoji電台でした。

 

 

魏嘉瑩、ヤバいわ~。

 

 

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本日のオンエア曲

 

 

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