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sasanoji radio Awards 2018 【Best Band】編

2018

 

こんばんは。
人知れずコッソリ不定期放送中、フェイクラジオ・sasanoji電台です。

 

今年の第30屆金曲獎(流行音樂類)の受賞者発表は6月29日(土)、ちょっと尻に火が付いてまいりました。2018年を振り返るsasanoji radio Awards 2018、今夜は【Best Band】編をお送りします。

この部門が激戦になるのは毎度の事。とは言え、昨年はいつも以上に熱かったですね~。本当に要注目のバンドが多かったです。中にはここで扱ったほうが良さそうな新人もいましたが、なるべく多くのバンドを取り上げたかったので、重複を避けるため敢えて新人部門のほうに回した候補もあります(…誰かは申しませんが^^)。

 

というわけで、僕が選んだ2018年度【Best Band】部門の候補は以下の6組となりました。

 

* * * * * *

落日飛車Sunset Rollercoaster『Cassa Nova 半熟王子』(3月,自主練習工作室)

Sunset_rollercoaster2018 

寺尾ブッタ氏[*1]の事務所・浪漫的工作室が起ち上げた独立系レーベル・BIG ROMANTIC RECORDSがプッシュし続けていた落日飛車(ルオリーフェイチャー)、日本でもついにブレイクしましたねー。結成は2010年頃。最初期はインダストリアルテクノをやっていたそうで、バンド名のSunset Rollercoasterは、その前身となる2人組テクノユニット時代に作った曲のタイトルが由来とのこと。曾國宏(Vo,Gt)、羅尊龍(Dr)、Kevin(Ba)の3名からスタートし、2011年に1stアルバム『Bossa Nova』をリリース。その後3年余の休団期間を経て2015年に活動を再開しました[*2]。2011年のサマソニ出演、2016年の傑作EP『Jinji Kikko』等で既に日本でも知られる存在となっていましたが、この2ndアルバムで一気にシーンの先頭に躍り出ました。アジアのみならず欧米からも注目を集めている、台湾を代表するアーバンポップバンドです。

 

ゲシュタルト乙女Gestalt Girl『生まれ変わったら。』(3月,空氣腦)

Gestalt_girl2018 

現在はMikan(Vo,Gt)、Kaiaki(Gt)、Yú(Ba)の3名で活動中[*3]。2016年、ネット上で自作曲や日本語歌カバーを発表していた台湾人女性・Mikanを中心に結成された、バンド名も日本語、歌詞も日本語という異色の台湾バンド・ゲシュタルト乙女の2nd EPです。2017年2月に環球Universal Musicからデジタルリリースされた1st EP『タイムトラベル』(インディーズ盤は2016年11月リリース)は、前回扱いに困って急遽設けた特別枠で取り上げる奥の手を使ってしまいました。今回も再び4曲入りのEP作品ということで少々迷ったのですが、今までJ-POPや洋楽をメインに聴いていた、あるいは台湾を意識したことがなかった多くの若い世代に台湾への扉を開かせた、その彼女たちの音楽センス、独特の世界観はやはり大いに評価されるべきと考えました。フルアルバムのリリースが待たれる、要注目の若手バンドです。

 

顯然樂隊Obviously『我最討厭搖滾樂』(5月,相信音樂)[*4]

Obviously2018 

2012年結成。女性ボーカル・阿琺Alfa[*5]を中心とする高雄出身の男女4人組オルタナティブロックバンド・顯然樂隊(シェンランユエドゥイ)です。現メンバーは阿琺(Vo,Gt)、小杜(Dr)、奕夫(Gt)、子瑄(Ba)の女性1名、男性3名。2014年に5曲入りEP『世界是如此的殘酷又如此的美好』をリリース、本作が1stアルバムとなります。ボーカル・阿琺のインパクトが強烈~^^。個性的な顔立ち、存在感もさることながら、ミュインミュインと電波を飛ばしているようなアクの強い歌唱は、ちょっと好みが分かれるところかもしれませんね。収録されている8曲は全て阿琺の手によるもの。彼らはワーキングクラスやアンダークラス側から見た世の中、阿琺自身の実体験も含めた日常の社会的な話題をテーマに歌っていて、自分たちの音楽を『社會學搖滾(社会学ロック)』と呼んでいてます。かなりディープな世界観を備えた個性派インディーズバンドです。

 

南瓜妮歌迷俱樂部PUMPKINney Fan Club『他我』(5月,好有感覺音樂)

Pumpkinney_fan_club2018 

南瓜妮歌迷俱樂部(ナングァニーガーミィジーラブー)は今年で結成10年。2009年夏、大学卒業の思い出にと柯家洋(Vo)[*6]、何俊葦(Gt)らが政大主催の音楽コンテスト・金旋獎に出場するため急遽作ったバンドが原形。当初はコンテスト終了後そのまま解散するつもりでしたが、想定外の好成績を収めてしまったため、陳弘禮(Ba)[*7]と林一根(Dr)[*8]を誘い改めて正式に結成しました。これまでに1st EP『微光』(2010年)、2nd EP『果陀』(2013年)、シングル『海王星』(2014年)をリリース。本作が結成9年目にして初めてのアルバムとなります。ブリティッシュ色の濃いロマンティックでサイケなシンセポップ、ニューウェイブサウンドはどこか懐かしく自然と身体が揺れてしまいますが、描かれている世界はタイトルのとおり哲学的で内向き。全10曲それぞれに設定されている人物を観察していたら、いつの間にか自分の内面を覗き込んでいるという…。ジャケットの装丁を含め、とても完成度の高い作品となっています。

 

DSPS『時間的產物』(7月,空氣腦)

Dsps2018 

DSPS(DELAYED SLEEP PHASE SYNDROME)、日本語では睡眠相後退症候群。2014年に曾稔文(Vo,Gt)、江珈臻(Ba)、胖虎Punkhooの鼓手・莊子恆(Dr)の3名によって結成され、1年後、海豚刑警の吉他手・徐子權(Gt)が新たに加入、現在のドリームポップ色豊かなスタイルとなりました。2016年の1st EP『我會不會又睡到下午了』[*9]は傑作の呼び声高く、日本の早耳な音楽ファンの間でも新作が待望されていましたが、ついに出ました、1stアルバム。これも傑作です。OPは奇妙なバンド名の由来となった最初期の楽曲『D.S.P.S.』。硬軟揃った全10曲からは、これまで彼女たちが血肉としてきたもの全てへのリスペクトが感じられます。這邊音樂那邊設計の装丁も見事と言うほかない。ここに珈臻[*10]の名前が無いのが本当に残念。ちなみにタイトルナンバー『時間的產物』で日本語朗読を担当しているのは、スパガ・メンバーの坂林佳奈さんです。

 

大象體操Elephant Gym『水底』(11月,WORDS Recordings)

Elephant_gym2018 

2012年に張凱翔Tell Chang(Gt)、張凱婷Tif Chang(Ba)の兄妹と、元・低明度時期Low-Brightness Periodの鼓手・涂嘉欽Tu Chia-Chin(Dr)によって結成された高雄出身の3人組マスロック(數字搖滾)バンド、大象體操(ダーシャンティーツァオ)の2ndアルバムです。これまでに1st EP『平衡』(2013年)、1stアルバム『角度』(2014年)、2nd EP『工作』(2016年)をリリースしていますが、本作はそれらとは若干趣を異にしています[*11]。発行は日本の独立系レーベル・WORDS Recordings。ゲストボーカルとしてソウルバンド・WONKの長塚健斗、京都を拠点に活動をしている女性シンガーソングライター・YeYeが参加するなど、かなり日本(海外)を意識した仕様となっています。また、大象體操は2017年に自分たちの事務所・合作運動を起ち上げ、製作、プロモーション面での権限も強化しているようです。結果として日本向けのアップロードが遅れ気味となっているのは残念ですが…。いずれにしても今後の動きに目が離せない要注目のバンドです。

 

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以上がsasanoji radio Awards 2018【Best Band】部門の候補6組でした。
日本で話題となっているバンドを4組、注目して欲しいバンドを2組、ガラにもなくバランスを取って選んでみました^^。透明雑誌以降長らく途絶えていた日本の台湾バンドブーム、ようやくまた動き始めましたかねー。

ほか注目しているバンドを挙げておくと、まず子夜觀星手Midnight Stargazers。独特の雰囲気があって大好きなバンドなのですけど、正体がイマイチよくわからなくて諦めました。これは要注目というか要観察。S電賞2016のBest Band候補・椅子樂團The Chairsもぜひ入れたかったのですが惜しくも次点です。茶涼粉Chaliangfen王榆鈞與時間樂隊Yujun Wang & Timesも良かったですね。金曲獎的に選ぶと四分衛Quarterbackは外せないでしょう。皆さま、こんなところでいかがでしょうか。

 

第30屆金曲獎の候補が発表されたので追記しておきます。

【最佳樂團獎】
南瓜妮歌迷俱樂部『他我』
閃靈『政治 Battlefields of Asura』
落日飛車『CASSA NOVA 半熟王子』
血肉果汁機『深海童話』
旺福『旺情歌』
美秀集團『電火王』
Tizzy Bac『知人 Him』

 

7枠ですかー。この部門、たま~に7枠のときがあるんですよね。一番最近では草東沒有派對が獲った2017年の第28屆。その前は麋先生が獲った2014年の第25屆ですか。インディーズが多いのがこの部門の特徴で、現在の千態万状な台湾バンドシーンの熱さを如実に反映しているとも言えるでしょうか。

それでは順に見ていきますね。まず、南瓜妮歌迷俱樂部。これは本当に驚きました。まさか金曲獎が選ぶとは全く想像してなかった。ていうか、メディアだってそれまでほとんど話題にしていなかったでしょう。S電賞の候補を発表したとき、日本人の僕はコレを選んだよ、金曲獎さん、どぉよ?みたいな気持ちが正直自分の中にあって…^^;。いやぁ、参りました。

閃靈は4年ぶり、4回目の入圍。2003年の第14屆で一度受賞しています。初入圍での受賞ですね。あとの2回は麋先生(第25屆)と佛跳牆(第26屆)に阻まれています。メタルはあまり得意ではないのですけど、金曲獎なら当然入るでしょうね。アリだと思います。今回は主要関連6部門でノミネートされています。

落日飛車も金曲獎が選ぶとは思っていなかったですねー。金曲獎、こういうタイプ好きでしたっけ?あーそう言えば前回、甜約翰が入ってましたよね。何か専用枠みたいなものが出来たのでしょうか^^。冗談はさて置き、落日飛車が選ばれる、これも今の台湾バンドシーンの変化を反映したものなのかもしれませんね。

2006年結成の血肉果汁機は、これが初めての金曲獎入圍でしたか。彼らもメタル系ですね…。閃靈も血肉果汁機もTwitterをフォローしているんですけどねw。金曲獎的にはアリ…なんでしょうかね。

旺福は5回目の入圍ですが、これまで受賞は無しです。2005年の第16屆が初入圍で、前回は2016年の第27屆。蘇打綠に獲られた回ですか。あれっ、2008年の第19屆も蘇打綠に獲られていますね^^;。今作はUSBリリースという変わった販売形態で僕は未入手なのですけど、Spotifyにあったのでそちらでチェックしました。これはアリでしょう。

2016年結成の美秀集團はこれが初入圍。台湾味が濃いですね^^。

Tizzy Bacも旺福と同じ5回目の入圍で、これまで受賞は無し。Tizzy Bacは僕も入れたかった~。貝斯手・許哲毓の遺作ですからね~。これは金曲獎、よく入れてくれたと感謝したいです。完全にアリですね。

金曲獎予想ですが、7枠は難しいですよ~。本命は閃靈…かな。よくわからないんですけどね^^;。対抗はTizzy Bac、単穴は南瓜妮歌迷俱樂部。ということで、今回は思い切って南瓜妮歌迷俱樂部で行きます!

 

追記:
第30屆金曲獎【最佳樂團獎】は、本命・閃靈が受賞しました~!おめでとう~!!

 

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たぶんこれが最後のS電賞。

 

* * * * * *

脚注

*1:日本(東京・青山)と台湾(台北)でライヴハウス月見ル君想フを展開、アジアのインディーシーンをコーディネートするキーパーソンの1人。

*2:主要メンバーは曾國宏(Vo,Gt)、羅尊龍(Dr)、陳弘禮(Ba)、王少軒(Key)、張浩嘉(Perc)の5名で、現在は黃浩庭(Sax)、黃士瑋(Dr)らもクレジットされている。

*3:結成時は4名。初代ベース担当のyuは2017年12月に離団し、新たにCrocが加入。昨年12月、ドラムのChoがジュース屋の経営に専念するため離団。今年3月、方向性の違いから2代目ベース担当のCrocが離団している。

*4:現在は英語名がSuper Obviousに変更されている。

*5:2015年に男性MIDI奏者・MADと短期の音楽ユニット・梁香Fragrance Liangを結成。同名アルバム『梁香』をリリース後、日本の9つの都市を巡るジャパンツアーを行なっている。

*6:俳優・柯震東のお兄さん。副業でバーを経営している。他のメンバーもそれぞれ副業を持っている。

*7:26屆金旋獎樂團組第一名・念樂隊の貝斯手。南瓜は第二名だった。現在は落日飛車の貝斯手としても活躍中。

*8:現名は林宜壕。父親は廟宇建築の棟梁で、新北市の汐止雲天宮はその父親が手掛けたもの。彼も副業として家業を手伝っている。

*9:翌年、日本の独立系レーベル・SECOND ROYAL RECORDSとBIG ROMANTIC RECORDSによって7インチアナログ盤が国内リリースされた。

*10:2018年初めに自身の将来を考えて離団を決意。1stアルバムでは厭世少年、海豚刑警の貝斯手・鐘奕安がサポートを務めている。

*11:じつはEP『工作』リリース後、3人が目指す方向性にズレが生じ始めていた。マスロックにこだわりつつ深く滑らかなビートに変えていきたい凱翔、パフォーマンスを際立たせるのに歌は必要ないと言う凱婷、鼓手の本能としてもっと多くのリズムを叩きたい嘉欽。個を尊重した結果、3人それぞれが楽曲を作って持ち寄ることになった。クレジットは全てElephant Gymとなっている。