sasanoji電台【台湾ポップス専門】

こちらはsasanoji電台第1廣播、TW-POP専門チャンネルです。

僕を台湾ポップスの沼に引きずり込んだ3枚のCD。

令和2年3月8日、日曜日。午後3時を回りました。

こんにちは。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
人知れずコッソリ不定期放送中、フェイクラジオ・sasanoji電台です。

 

今回は、僕が台湾ポップス(TW-POP)にハマるキッカケとなった3枚のアルバム、3人の女性アーティストとの出会いについてお話をいたしますね。

まず、そこに行くまでに音楽とは全然関係のないマニアックな話をしなくてはならないのですけど、その辺り、どうかご了承くださいませ。

 

最初に1曲、何か掛けておきましょうか。2月26日にデジタル配信されたベテラン女性シンガー・萬芳Wan Fangの新曲です。『時間梯』をどうぞ。

今年デビュー30周年を迎えた萬芳の新曲『時間梯』でした。これまでの彼女の雰囲気とはちょっと違いますよね。前衛的な香り漂う作品となっています。プロデュースはこちらもデビューして30年以上というベテラン、女性シンガーソングライターの黃韻玲Kay Huang。MVの監督も大物ですよ、范曉萱Mavis Fanの『我要我們在一起』、魏如萱Waa Weiの『在不確定的世界裡』で金曲獎【最佳音樂錄影帶獎】を受賞している黃中平JP Huangが務めています。

 

ではここから、興味のない方にとってはヒジョ~につまらない話をいたします。ごめんなさい。

 

皆さま、BCLって知ってますか。

 

フツー、なンじゃそりゃ、ですよね。
いまGoogle検索してみたら、なんか化粧品ブランドがトップに出てきましたが、違います。

50代以上の男性でしたら、ひょっとするとご存知の方いらっしゃるかもしれませんね。
BCLというのは、Broadcasting Listening、あるいはBroadcasting Listenersの略で、ざっくり言うと、外国の短波放送を専用のラジオで受信して楽しもうという、かなりマニアックな趣味です。

現在では“趣味界の絶滅危惧種”なんて呼ばれ方してますけども、これが1970年代後半から1980年代に掛けて、メカ好き、ラジオ好きの男子を中心に若者たちの間で流行ったんですね。日本の民間短波放送局・ラジオたんぱ(現在のラジオNIKKEI)で、あのタモリさんがBCL番組をやっていたくらい、当時はブームとなっていました。僕も中学時代にBCLを始めて、何度か中断時期はありましたが、7、8年くらい前まではよく外国の放送を聴いていましたね。このブログも元々はそれら海外短波局の受信記録を残しておくために作ったものだったんですよ。

 

では、本日の2曲目です。2014年にCDデビューしたアメリカ・ニューメキシコ州出身の女性シンガーソングライター、克麗絲叮Christine Welchの新曲『入夢』をどうぞ。

克麗絲叮(クリスディン)の新曲『入夢』でした。シカゴの名門・ノースウェスタン大学で中国語を専攻した彼女は、詩經、唐詩宋詞などの中国古典文学に魅了され、大学3年のときに北京外国語大学に留学。同級だった台湾人女性の影響で台湾の音楽やドラマにも親しむようになり、卒業後、台湾に移住しました。2010年、YouTube上で公開した楊丞琳Rainie Yangや王力宏Wang Leehomら有名歌手のヒット曲をカバーした自撮りMVで人気者となり、2014年11月、著名プロデューサー・陶山Skot Suyamaとの共同プロデュースで1stアルバム『一百萬個可能』(滾石唱片)をリリース。その後しばらく音沙汰が聞こえてきませんでしたが、2018年に『一百萬個可能』がTikTokで流れたのがキッカケで、なんと大陸で話題となっていたんですね。彼女は今年1月1日に北京で開催された年越しライブ《環球跨年冰雪盛典2020 New Year Global Gala》に出演、『一百萬個可能』を歌っています。

 

つまらない話に戻りましょう。

一般的なラジオで受信出来る中波(MW:Medium Wave)よりも波長が短い短波(SW:Short Wave)は、直進性に優れ、上空の電離層(F層)で反射して遠方まで届くため、主に海外向けのラジオ放送や遠距離通信等で使用されています。

日本向けに日本語番組を放送している国際放送局もあるんですよ。中国のCRI中国国際放送(旧・北京放送)や台湾のRTI台湾国際放送(旧・自由中国の声)、韓国のKBSワールドラジオ(旧・ラジオ韓国)などは有名ですよね。もちろん日本のNHKも各国語で海外向けの放送を行なっています。かつてはイギリス、ドイツ、ロシア(ソ連)、オーストラリアなども日本語番組を放送していましたが、リスナーの減少や経費削減、インターネットの発達等もあって、ずいぶん前に廃止されてしまいました。短波放送そのものから撤退してネット配信に移行する放送局も増えていますが、一方で国土面積が広く中波での聴取が困難だったり、デジタルインフラの整備が進んでいない地域を持つ国々、例えば南米やアフリカなどでは、今も国内向けに短波を使用している局が多くあります。

 

 

上の音声ファイルは日本からはちょうど地球の反対側、1万7千キロ離れたブラジルの国内向け放送の音です[*1]。聞こえるのですよ、日本で、ブラジルのラジオが。250kWという強出力ではあるのですけどね。でも、これがはるばる海を越え山を越えて飛んで来たって思いながら聴くと、ちょっとロマンチックでしょ^^。

 

それでは、お待たせいたしました。いよいよ本日のメインのお話に入ります。

その海の向こうから届いた音の中に、キリスト教系の放送局・CVCの中国語プログラム、CVC-Chinaというのがあって…、え~と、ここを話しておかないと次に繋がりませんので、もうちょっとだけ。ごめんなさい。(^^;)

ま、中国語プロといってもトークのほとんど無い、同じC-POPのオムニバステープをずっと回しているだけ…みたいな番組でしたが、僕はそれを気に入ってBGM代わりによく聴いていました。で、2009年の同時期だったと思います、そのCVC-Chinaで繰り返し流れていた中で特に強く印象に残った曲が、あったんですよ~。それがこちらの3曲です。

 

 

梁靜茹Fish Leongの『情歌』、徐佳瑩LaLa Hsuの『身騎白馬』、そして許哲珮Peggy Hsuの『美好的』です。有名曲ですよね。J-POPとも洋楽とも違う、どこか懐かしさを感じさせる、柔らかで温かいメロディと優しい言葉の響き…。この雰囲気に僕はすっかり魅了されて、どうしてもCDが欲しくなってしまったのです。沼の入口に立ってしまったわけですね。

 

C-POPについては、中国国際放送台湾国際放送の日本語番組で多少の馴染みはありましたが、当時は今ほど熱心に聴いていなかったので、知識もほとんど無く、この3曲がいったい誰が歌っている何という曲なのか、全くわかりませんでした。日本語や英語であれば歌詞で検索するとか、今なら音声検索アプリで調べるとかあるんでしょうけど、どうやって辿り着いたのか忘れてしまいましたが、梁靜茹の靜茹&情歌-別再為他流淚、徐佳瑩のLaLa首張創作專輯、許哲珮の美好的をなんとか見つけて、2009年8月にHMVオンラインストアで購入しました。この3枚が、僕が手にした初めてのC-POPのアルバムです。

 

梁靜茹Fish Leong『靜茹&情歌-別再為他流淚』(2009)

fish-leong2009 

1999年デビュー、マレーシア出身の実力派女性シンガー・梁靜茹(リャンジンルー)の10thアルバムです。全12曲を収録。先行曲を含め全てがシングル化されているという、本当に名曲揃いの素晴らしい作品。2曲目には、青山テルマの『そばにいるね』の中文カバー『沒有如果』[*2]も入っています。

ジャケット写真も素敵ですよね。今こういう表現をすると怒られちゃうのかな、歌声も容姿もとってもフェミニンで、しっとりとした大人っぽい雰囲気。大好きです、梁靜茹。彼女のこういったフェミニンな微笑をたたえたジャケット写真て実はほとんど無くて、だいたい明るい笑顔だったり、キリッとした表情をしているんですよね。
本作のコンセプトは、“過ぎ去った愛にサヨナラを告げて、怖がらず新しい愛を求めよう”ということなんですけれども、当時のプライベートでの彼女と重なる部分もあって、それがあの微笑に表れているのかな、と思ったりしました。

このアルバム、所属レーベルの相信音樂(当時)は2009年の第20屆金曲奬へのエントリーを見込んで、2008年12月のリリースを予定していたのですが、彼女はさらなる完成度を目指して、その権利を放棄してまでレコーディングを延長。翌2009年1月のリリースとなっています。第20屆金曲奬にはライブアルバム『今天情人節』のほうでノミネートされていましたが、もしも本作だったら、おそらく獲っていたのではないかな~という気がしますね。

 

徐佳瑩LaLa Hsu『LaLa首張創作專輯』(2009)

lala-hsu2009 

1984年生まれ、2008年に出場した台湾の人気オーディション番組《超級星光大道》第3シーズンの優勝者、徐佳瑩(シュージャーイン)のデビューアルバムです。収録されている11曲は全て彼女自身が作詞作曲したもの。この作品でLaLaは第21屆金曲獎(2010年)に於いて、最佳新人獎、最佳年度歌曲獎、最佳國語專輯獎など主要関連6部門[*3]にノミネートされ、見事、最佳新人獎を獲得しています。

CVCではアルバムのOPナンバー『喔伊細』もよく流れていましたね。あれ~、オイシイって言ってるよね~とか、カワイイ曲だな~とか思いながら聴いてました。その頃はもちろん彼女のことは知らなくて、誰が歌っているんだろうと調べていく中で、あ、徐佳瑩LaLa Hsuっていうんだ、『身騎白馬』と同じ人が歌ってるんだな、台湾にはこんな大掛かりなオーディション番組があるんだなと学んでいったんですね。だから僕の台湾ポップスの勉強は、徐佳瑩から始まった、と言っても過言ではないです。

幸いLaLaが出場した《超級星光大道》の映像は、非公式のものですけども、たくさんYouTubeにUPされていたので、彼女の凄さを追体験することが出来ました。本作に収録されている11曲のうち7曲は、既に番組の中で歌われていたんですね。どれもこれも一度聴いたら忘れられない印象的な曲ばかり。これが新人だというのですからビックリですよ。僕個人の印象としては、彼女の登場以降、彼女を超える新人はまだ現れていないと思っています。

 

許哲珮Peggy Hsu『美好的』(2009)

Peggy-hsu2009_1 

現在は多数のアーティストのメンタルをケアする催眠療法士、2017年に誕生した1女のママでもあります、個性派女性シンガーソングライター・許哲珮(シージャーペイ)の3rdアルバムです。

2009年6月リリースの本作『美好的』と半年後の2009年12月リリースの4thアルバム『雪人』は、四季をテーマとした二部作となっています。『美好的』が春と夏、『雪人』は秋と冬です。許哲珮は2001年のデビュー作『氣球』から、2019年にクラウドファンディングサイトで資金を募り製作した8thアルバム『失物之城』まで、EP『馬戲團1號』(2010年)を含め、これまでに9枚のアルバムをリリースしていますが、本作『美好的』は、その中でも飛び抜けて明るくポップ、楽しい楽曲が並んでいます。一方、秋と冬がイメージの『雪人』は対象的に重厚でダーク、幻想的な雰囲気。『美好的』は正味30分ほどの小品で、スケール感から言っても、おそらく『雪人』を際立たせるため敢えて明度を高く、ポップに演出したのでしょう。

許哲珮は2007年頃から音楽と並行して児童ミュージカル(俳優兼音楽監督)にも活動の範囲を広げていて、以降、演劇的なコンセプトを取り入れた作品が増えてくるのですけど、本作『美好的』と続編の『雪人』は、ちょうどその転換点に当たる作品なんですね。音楽人・許哲珮の第1幕から第2幕へと繋ぐ、必聴の2枚です。

 

最初にこの3枚のアルバムを手に出来たこと、最初にこの3人のアーティストに出会えたこと、僕は本当に幸運だったと思っています。もちろん、BCLをやっていたことも幸運でした。もしもやっていなければ、ひょっとすると、いや、たぶん彼女たちとは出会えていなかったでしょう。今、こうやって台湾ポップスのことを話していられるのも、BCLのおかげ、ということですかね。

 

近年になって日本でもようやくC-POP、マンドポップの存在が一般の音楽ファンに認知され始めてきました。仲間が増えて本当に嬉しいです。ただ、ライブハウスや独立系のレーベル、音楽専門Webメディアなど、現場やそれに近い場所にいる業界の方たちから発信される情報って、ややポストロック、バンドのほうに片寄り気味かな~という印象も、僕は持っています。

実際、Twitterで最近マンドポップを知って興味を持ち始めた人たちのツイートを読んでみると、これがちょっと意外だったんですけど、ポストロックやオルタナティブではなく、僕と同様にスタンダードなところから入っている人が、わりと多いんですよね。ところが、それらスタンダードなところをピックアップしている現場や音楽専門Webメディアというのが、ほとんど無い。興味は持ってみたけれど、マンドポップって何?で放置されているような状況で、これはもったいないですよね~。

僕のように個人で発信しているブログは、けっこうあるんですよ。ただ、よほどの有名ブログでもないかぎり、なかなか検索のトップランクには引っ掛からない。やっぱり、音楽専門のWebメディアで扱ってくれるのが良いのかな~、という気がするのです。

 

ここ2ヶ月ほど、中国の大型音楽番組《歌手・当打之年》にMISIAが出演して、彼女のファンを中心に日本でもちょっとした盛り上がりとなっています。YouTubeでその番組を観てC-POPに興味を持った日本人も少なくないと思うんですよね。連日、ネガティブなニュースが流れていますけど、ここでひと押ししてもらえるとありがたいんですけどね~。

 

最後は愚痴みたいになってしまいました…^^;。

 

それでは、本日のラストナンバーです。たまにはJ-POPで締めるのもいいですよね。中国の大型音楽番組《歌手・当打之年》の第1回戦、MISIAが歌って会場を感動の渦に巻き込んだ『逢いたくていま』を聴きながらお別れいたします。皆さま、ごきげんよう。sasanoji電台でした。

 

歌手・当打之年》のMISIA、感動しました。
永久保存版クラスに凄かったです。皆さまもぜひ。

 

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本日のオンエア曲

 

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脚注

*1:Radio Nacional da Amazonia(11780kHz),2011年11月13日15時36分前後の音声。

*2:この曲はアルバムリリース前にドラマ『敗犬女王』の主題歌に採用されましたが、その時点では青山テルマが所属するユニバーサルから楽曲使用許可を得ていない、謂わばパクリ状態でした。その後、正式に許可を得たようで、アルバムには作曲者としてSouljaの名前がクレジットされています。

*3:最佳年度歌曲獎,最佳國語專輯獎,最佳作曲人獎,最佳編曲人獎,最佳單曲製作人獎,最佳新人獎。