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許哲珮、2019年12月24日にニューアルバムをリリース!

令和2年1月2日、時刻は午後0時を回りました。

皆さま、明けましておめでとうございます。
人知れずコッソリ不定期放送中、フェイクラジオ・sasanoji電台です。

本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

 

令和になって初めてのお正月、皆さま、どちらでお過ごしですか。
故郷、それとも旅先、仕事場だよ!という方もいらっしゃるでしょうね。

僕はいつ以来でしょう、記憶にないくらい久しぶりに、故郷ではなく東京で年末年始を迎えました。12月にちょっと手術をしまして、帰省ラッシュの中で移動するのはキツイかなというのもあったんですけども、1人で過ごす年末年始が思いのほか心地よくてですね。リハビリしつつ、自分で用意したおせちや雑煮などを食べながら、の~んびりと正月気分を満喫しております。

 

さて今回は、僕をTW-POPの沼に引きずり込んだ張本人の1人、許哲珮Peggy Hsuのニューアルバム『失物之城』をピックアップいたしますよ。

 

許哲珮Peggy Hsu『失物之城』(2019年)

peggy-hsu2019
パッケージデザインは小油Little Oilが手掛けている。[*1]

 

2001年にCDデビューした台湾を代表する個性派女性アーティスト、許哲珮(シージャーペイ)の8thアルバムです。2010年のEP『馬戲團1號』を入れると9枚目ということになりますかね。前作『搖擺電力公司』からは4年3ヶ月ぶり。2019年12月24日、クリスマスイブにデジタル配信された待望の新作です。

 

まずは1曲どうぞ。5曲目に収録のアルバムタイトルナンバー『失物之城』です。編曲は原住民族・阿美アミ族出身の歌手兼作曲家、陳依婷Miogo Chenが担当しています。

 

クレジットを見ると、前作『搖擺電力公司』に続いて許哲珮と鬼才作曲家・王希文Owen Wang[*2]による共同プロデュースのようですが、スイングジャズ風だった前作とは全くスタイルが異なりますね。緻密に重ねられた弦楽と電子楽器の音が立体的に迫ってきます。ひとり仄暗い水底に沈み込んで行くような孤独と不安を感じさせる…、僕の大好きなPeggyの音です。

 

続いては6曲目収録の『最後一封情書』です。ピアノは許郁瑛YuYing Hsuアコーディオンは十九兩の張瀚中Achino Chang。2018年の第53屆金鐘獎で樓一安と戲劇節目編劇獎を共同受賞した人気俳優、莫子儀Morning Moがゲストボーカルで参加しています。

 

冒頭のフランス語の女声モノローグ、印象的ですよね。誰だと思います?

なんと、古欣玉Mami Kuさんですよ。旺福Won FuのMamiさんと言ったほうが通りがいいですねかね。日本語が喋れるのは知ってましたけど、フランス語も上手なんですね~。ビックリしました。

 

この『最後一封情書』は、『過去(前世)』、『現在(今生)』、『未来(思念之旅)』をテーマとした前世今生三部曲の1曲目で、『過去』について歌っています。

最後のラブレター、ノスタルジックでメロディアスなナンバーですね。これも好きな曲です。

 

2018年2月、Peggyはご主人のRickさん(2011年結婚)と自身の音楽事務所『雪人音樂』を起ち上げました。事務所名は2009年のアルバム『雪人』と同じですね。彼女がとても雪が好きなこと、2017年に誕生した愛娘の名前に『雪』の字が入っていることなども、決めた理由の1つだそうです。

 

 

Peggyは翌2019年10月7日から、クラウドファンディングサイト・嘖嘖zeczecでニューアルバムの製作資金を公募。2ヶ月半で目標額30万台湾元の約3.7倍、110万4千台湾元が集まり、12月22日20時、本プロジェクトを終了しました。

支援者へのCDや物品の発送は、支援額800台湾元以上の方[*3]が2019年12月。ちょうどクリスマスに受け取った方もいるようですね。キャンドルメーカー・JEY JEY STUDIOと共同製作したオリジナルアロマキャンドル3種セット[*4]なんてのもあります。これはちょっと欲しいかも…^^;。支援額680台湾元の方への発送は2020年2月予定となっておりますが、店頭にも並ぶのでしょうか。彼女、誕生日が2月2日なので、ひょっとするとその辺りで出してくるかもしれません。チェックしておきましょう。

 

前世今生三部曲その2。テーマは『現在』。7曲目収録の『在沒有你的城市晚安』です。編曲&ギターは新鋭シンガーソングライター・李友廷Yoting Lee。佛跳牆の林奧迪Audi Linがベースで参加しています。

 

波の音…、これもいいですね~。
心が…静まって…静まって…。

 

Peggyが今作のテーマとしているのは、
『過去』と『現在』と『未来』、
『意識』と『無意識』、『現実』と『夢』、
『前世』と『現世』…です。

 

数年前、Peggyは催眠術を体験しました。2014年のアルバム『圓舞曲』に『催眠』という曲が入っているので、おそらくその頃に影響を受けたものと思いますが、彼女はどうやら、とても神秘的な経験をしたようです。それで催眠について本格的に勉強を始めて、ついには米国催眠士協会(NGH)の認定催眠術師の資格を得るまでになりました。現在は数多くの歌手、俳優、芸術家たちのメンタルケアを行なう催眠療法士としても活躍しています。

今回Peggyは、それをこのアルバムでやろうとしているのですね。

 

弦楽が美しい4曲目収録の『垂死天鵝』と、日本の三重奏団・KOBUDO(古武道)[*5]が編曲と演奏で参加した10曲目収録の『』。演奏者の呼吸や、その空間で起こった全てを記録するために、楽曲のほとんどを敢えてノークリック[*6]でレコーディングしているそうです。

 

これはなかなか、こわいアルバムですよ~。

ヘッドホンをして、ひとり個室で聴くことをPeggyは推奨していますけど、彼女のアカペラコーラスで始まる49秒のIntro的なOPナンバー『溫泉小鎮』で、いつものPeggyの導入部だな、と思わせておいてからの、催眠術で意識を飛ばしにくるような迷宮サウンドで畳み掛ける流れ。ラスト、11曲目の『離別曲』などはもう、天井から自分を見下ろしているような不思議な気分になりました。今回のアルバムではポップな楽曲は敢えて控え、聴き手の心理の深層に語りかけることのみに専念しているかのようです。

 

昨日からもう何度聴いただろう、1曲目の『溫泉小鎮』でハッ…と我に返り、またフワ~…とした気分になって…、その繰り返し…。このアルバム、ぜったい何か入っている!

皆さんもぜひヘッドホンをして、自分の部屋で、寝室で、1人で聴いてみてください。本当にヤバイから。

 

それでは最後に前世今生三部曲その3。『未来(思念之旅)』をテーマとした8曲目収録の『Someone Over the Rainbow』を聴きながらお別れです。2020年が皆さまにとって素敵な1年となりますように。sasanoji電台でし…。

 

 ジーンズが若干キツくなったのは、たぶん気の所為…。

 

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本日のオンエア曲

 

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脚注

*1:許哲珮の『圓舞曲』、林瑪黛のジャケットや視覚効果を担当している。

*2:2012第23屆金曲獎最佳專輯製作人獎、最佳作曲人獎入圍、2013第50屆金馬獎最佳原創電影音樂入圍。

*3:NT$800,NT$1080,NT$1200,NT$13750,NT$24950。

*4:天鵝之淚(白鳥の涙),山之精靈(マウンテンエルフ),巨人之盾(ジャイアントシールド)。

*5:2006年正式結成。ユニット名は古川展生(Vc)、妹尾武(P)、藤原道山(Shakuhachi)の名前から一文字ずつ取って付けた。

*6:電子メトロノームを使用しないこと。