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女巫、芮斯。

芮斯Rui Si『美麗的末日預言』(2012)

Rui-si2012

 

2012年12月29日リリース。第15屆金曲獎(2004年)の伝統芸術音楽部門で最優秀歌唱賞に輝いた原住民族・排灣パイワン族出身の女性シンガー、芮斯(ルイスー)の3rdアルバムです。発行は以莉・高露Ilid Kaoloら原住民族音楽を専門に扱っているレーベル・風潮音樂Wind Musicです。

 

 

上のYouTube映像は昨年11月24日に台北・新光三越で行なわれた屋外ライブの模様を撮影したものです。ときどき音楽を聴いていて、あるいはMVを見ているとき、不意に涙が込み上げてくることがあります。この映像もそうでした。原住民族の言葉はもちろん中国語もまったくわからないのに、これを初めて見たとき躊躇なく涙が溢れ出てきてしまいました、ドバァ~ッと…。

何が琴線に触れたのでしょう…。彼女の佇まい、歌声から伝わってくる言葉以外の、慈愛、祈り、スピリチュアルな何か…か。

 

 

民族名は芮絲若斯(発音不明^^;)、中国語名は曾金美。台湾最南部・屏東縣、パイワン部族の女頭目の娘として生まれました。故に“排灣公主(パイワンプリンセス)”とも呼ばれています。
生年は明らかにされていません。18歳のときに故郷を離れ、30歳頃まで台北で暮らしていたようです。1984年(何歳のときかわかりませんが)、台北のTV局・台灣電視公司の人気芸能コンテスト番組『五燈獎』[*1]に出場し、最高栄誉である『五度五關獎』を受賞しています。

 

1990年代に入って台湾では原住民族文化を復興しようという運動が盛んになり、彼女も故郷に戻りました。芮斯は歌も素晴らしいのですが一流伝統刺繍アーティストとしても有名で、彼女の作品をテーマとした本やDVDも出版されているほどです。また、台湾留学中に彼女の歌声と出会い原住民族文化に魅了されたという香港出身の番組プロデューサー・胡健と共に原住民族ミュージカル劇団『RS傳唱者音樂劇團』を設立し、中心メンバーとしても活躍。2003年には原住民族文化を体験・研修するプログラム『排灣古調口傳研習計畫』を地元で実施するなど、民族文化の継承活動にも従事しています。

歌手としては同2003年にリリースした1stアルバム『芮斯歸來』で第15屆金曲獎の伝統芸術音楽部門に於いて最優秀歌唱賞を受賞。2010年リリースの2ndアルバム『米靈岸Miling'an』(部族の言葉で『伝説』の意)では、第22屆金曲獎の流行音楽部門のほうで最優秀原住民語歌手部門にノミネートされています。今回の3rdアルバム『美麗的末日預言』はそれ以来、2年ぶりとなる作品です。

 

かつて芮斯のスピリチュアルな歌声を聴いて感動した部族の長老たちが、『もし100年早く生まれていたなら、あなたは巫女になれただろう』と語ったそうです。僕も彼女の歌声に、何か…を感じた気がします。

 

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芮斯 - Facebook
米靈岸 - Facebook

 

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脚注

*1:日本の田辺製薬の台湾子会社提供による歌唱コンテスト番組が前身で、1964年から33年間に渡って放送していた。1994年には卑南プユマ族出身の女性シンガー・張惠妹(ジャンフイメイ)が出場し『五度五關獎』を受賞している。