戴佩妮Penny Tai『原諒我就是這様的女生』（2009）
戴佩妮（ダイペイニー）。1978年生まれ、マレーシア出身。英語名はPenny Tai。ギターやピアノの演奏、MVの撮影もこなし、ダンスの腕前はプロ級。2006年に出版した初エッセイ集『Oh My Day』はベストセラーにもなっている。これらマルチな才能から『マレーシアの才女』と呼ばれる実力派女性シンガーソングライターです。
2009年リリースの本作『原諒我就是這様的女生』はオリジナルアルバムとしては8作目、前作『iPenny』から2年8ヶ月ぶりとなる作品です。DVD付き全14曲入りのアルバムで、その14曲全てが戴佩妮自身が作詞作曲したもの。また彼女が結成したバンド・Penny & D Powerによる作品でもあります。
アルバムタイトルを日本風にすると、『ゆるしてね、こんな私を』という感じでしょうか。人が恋をするとき、相手のことばかりを気にしたり、愛しすぎたりしたことで逆に自分を傷つけてしまった、そんな姿を自身を含め今までたくさん見てきた、彼女はこの2年間自問自答して、自分を大切にすると心に決め、その心境を歌に込めたのだそうです。つまりこれは彼女からファンに向けての、あるいはそうでない人にも、『自分はなかなか頭を下げない女だから、将来どんな決定をしたとしてもゆるしてね』という気持ちを伝えるメッセージソング、彼女自身の決意表明なのですね。本作では過去の作品にあったような悲しいラブソングは影をひそめ、ハードな曲、ポップな曲、自分自身を見つめなおした感性的な曲が目立っているようです。
ラストナンバー『這就是我』。これが私なのって、この曲を最後に入れてくるなんて、戴佩妮、本気だ！
来月新作が出るというので、先日スポット的に紹介してしまいましたが、それではもったいないので改めて取り上げることにしました。
その予定されている新作は佛跳牆Buddha Jumpというバンド名義でのリリースとなるようですが、これは4年前に彼女が結成したバンドが起源ということなのでD Powerの進化形態ということでよいのでしょうか。メンバーは戴佩妮（Vo）、江尚謙（Dr）、吳貞儀（Key）、陳君豪（Gt）、黃宣銘（Gt）、林奧迪（Ba）の6名。新曲のMVが一部公開されていますが、『原諒我就是這様的女生』のレコーディングでは苦労したというメンバーも、しっかりとキャリアを積んで貫禄充分（見た目も）。ペニーも今では全幅の信頼を寄せているようですね。
戴佩妮はマレー半島の先端ジョホール州北部の都市スガマトに生まれ、ジョホーバルで育ちました。小学4年の頃に中国の民族舞踊とモダンダンスを習い始め、国内外の舞台にも参加。1997年からはアマチュアとして教える立場となり、一時期はプロのダンサーを目指したこともあったようです（生まれつき偏平足だったためあきらめたらしい）。MVには彼女自身が見事なダンスを披露するものもあるのですが、なるほど納得ですね。音楽創作を始めたのは1995年ということですから、彼女が16～17歳の頃。これも国内外のコンテストに積極的に参加し、いくつもの賞を受賞しています。どうやら一度やり始めたらトコトンまで追求しないと気がすまないタイプ、ひと言でいうと頑固な性格なのでしょうか^^;。その後ペニーは卒業論文で『マレーシアに於ける現代フォークソングの発展史』を研究。そこで彼女は台湾ポップスの影響力を認識し、そしていずれは台湾へ行くと心に決めたのでした。
1曲目に収録、アルバムタイトルナンバー『原諒我就是這樣的女生』。
いきなり謝られたらもう、見守るしかないですよねー。このMVを含め今までに見られなかった作風から、清純派が路線変更したと、かなり話題になったそうです。
1999年、ペニーはマレーシアで出会った台湾の有名作曲家・陳子鴻Eric Chenに発掘されました。詳しいいきさつは不明ですが、それをキッカケに台湾へと渡り、長く彼女の作品を支え続けることになる喜歡音樂Enjoy Musicのプロデューサー・黃怡らと共にアルバムを制作、翌2000年にEMIからデビュー作『Penny』をリリースしました。このときペニーはまだ21歳。当時は台湾ポップミュージック界最年少シンガーソングライターとしてのデビューだったようです。この作品は台湾・アジア地域で60万枚以上を売り上げる大ヒット作となり第12屆金曲獎の新人賞候補に選ばれましたが、惜しくも受賞には至りませんでした。なにしろその年新人賞を獲得したのはシンガポールの歌姫・孫燕姿Stefanie Sun。そのほかの候補も周杰倫Jay Chou、林凡Freya Lim、范瑋琪Christine Fanという、これはもう巡り合わせとしか言いようがありませんが、それからのペニーはノミネートはされるものの、受賞できない無冠の日々を長らく送ることになります。
11曲目に収録、2008年にネットでリリースされたペニー変革期の曲『LAFITE』。このMVを見れば、彼女がもう後戻り出来ないところにいることがわかる。
ペニーは1st以降も毎年コンスタントにヒット作をリリースし続け、才能を発揮。2006年、6thアルバム『愛瘋了』のタイトル曲『愛瘋了』で、ようやく金曲獎・最優秀作曲者賞を獲得することが出来ました。そして同じ年、7thアルバム『iPenny』を作り終えたあと彼女は新たな試みをスタートさせます。メジャーレーベル・EMIを離れ、その後3年間の楽曲発表をネットで行ない、かつMVの撮影（他のアーティストも含めた）にも積極的に関わっていく道です。それらの楽曲は2007年から2008年にかけて喜歡音樂から全8曲が順次リリースされ、2008年5月に行なわれた台北國際會議センター・コンサート記念として7曲分がダウンロード出来るアクセスコード付きフォトブック『2008我到底是誰？』も発売されました。また8thアルバム『原諒我就是這様的女生』には、その中からの4曲が改めて収録されています。
2009年に行なわれた『野薔薇演唱會Live』から『戴佩妮的時光機』。『你要的愛』、『街角的祝福』、『愛瘋了』、『明天以後』のメドレー。
2010年リリースのDVD付き3枚組ライブアルバム『野薔薇演唱會Live專輯』から『野薔薇』。
なんだか浜崎あゆみとイメージがダブってきた。泣けてくる。カッコイイ。
