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梁文音、『福井県ブランド大使』に任命。

文音Rachel Liang『情人×知己』(2011)

Rachel-liang2011

 

文音(リャンウェンイン)。1987年生まれ。英語名はRachel Liang。台湾の原住民族・ルカイ族タイヤル族のハーフです。アルバムデビューは2008年。同年公開の台湾映画『海角七號』で60年前の小島友子役を演じていたのが彼女です。

今年4月にリリースされた本作『情人×知己』は、前作『愛,一直存在』から1年5ヶ月ぶりとなる3枚目のオリジナルアルバム。これまでの作品と同様、彼女のイメージである癒し、ホッとする優しさ、暖かさをコンセプトに、F.I.R.の阿沁、五月天Maydayの瑪莎、劉若英Rene Liu、葛大為(グーダーウェイ)ら人気アーティストたちが集結し、ほんわかと和む、ポップでキュートなアルバムに仕上がっています。ちょっとだけしっとりと大人になった印象かな。ちょっとだけね^^。

預購版には『情人版』と『知己版』の2つのバージョンがあって、曲目、曲順等は同じですが、『知己版』のほうは日本をイメージしたジャケット写真(駅のホーム?憂いを含んだ彼女の表情がいいのです)となっています。特典として『福井県ガイドブック』が付いていたようですね。7月に発売された『音為愛典藏盤』は、MV5本とそのメイキングを収めたDVD付きの2ndエディション。曲目は同じ、全10曲入りの2枚組です。

 

1曲目に収録、アルバムタイトルナンバー『情人知己』。

 

万葉集の一節が印象的なこの『情人知己』のMV、ご覧いただいてわかるとおり、撮影は日本の福井で行なわれました。国境を跨いだ遠距離恋愛がテーマの、ジ~ンと心に沁みる暖かい作品となっていますね。そしてMVの最後、彼女から東日本大震災で被災した方々へのメッセージも入っています。このアルバムが震災直後にリリースされたということもあるのですが、じつは震災が発生したその日、レイチェル・リャンは日本にいたのです。

3月9日、レイチェルはこのMVを撮影するため3日間の予定で福井に入りました。そして最終日となる3月11日、東日本大震災が発生したのです。彼女はあの大混乱の中での日本人スタッフらの冷静な対応、手助けに感謝するコメントを残しています。
でも芦原温泉郷で『美人の湯』を初体験したり、電車の中で出会った男子高校生たちと記念写真を撮ったりと、楽しい思い出もたくさん作って帰ったみたいですね。4月、台北にある石川県の温泉旅館『加賀屋』で行なわれた新曲発表会では、その和風の雰囲気にふれて、福井への想いをまた募らせていたようです。レイチェル・リャンは『ふくいブランド大使』にも任命されています。

 

レイチェル・リャンは19歳のとき、アイドル養成バラエティ番組『我愛黑澀會』に巴冷(パーロン)というニックネームで出演していました[*1]。この番組には当時『超級星光大道』第1シーズンで大人気となっていた楊宗緯Aska Yangもゲストで登場し、レイチェル・リャンと対戦しています。また彼女自身も『超級星光大道』第1シーズンの第20ステージ、アスカ・ヤンがリマッチの末、蕭敬騰Jam Hsiaoに勝利した回ですが、道場破り(PK戦)の挑戦者として出場し、対戦相手の潘裕文Peter Panを下すなど、その才能には審査員らも早くから注目をしていました。

そして2007年7月からスタートした『超級星光大道』第2シーズンに出場。期待通りの歌唱力で勝ち進み、最後わずかに及ばず2位となってしまいましたが、翌年にはメジャーレーベル・環球音樂Universal Musicと契約、1stアルバム『愛的詩篇』でトントン拍子にデビューを飾ります。このアルバムは台湾、中国大陸、マレーシア、シンガポールなどアジア地域で大ヒット。台湾の本家金曲獎では惜しくも新人賞を逃したものの、シンガポールの金曲獎では、なんと新人賞ではなく、居並ぶ先輩らを抑え堂々の『最優秀女性シンガー賞』受賞となりました。また2008年は映画『海角七號』にも出演。彼女が歌ったエンディング曲『風光明媚』と共に注目を集めています。翌2009年にリリースした2ndアルバム『愛,一直存在』も続いて大ヒットし、デビュー以来順風満帆、…かと言って少しも肩肘張っていない、いつもふんわりと明るいレイチェル・リャンなのです。

 

2曲目に収録、阿沁が作曲した『一百萬種親吻』。ドラマ『拜金女王』のエンディング主題歌。

 

でも、そんな彼女にも影の部分はあるのですね。写真やMVで見せる明るい表情からは想像出来ませんが、レイチェル・リャンはTVに出るようになるまでずっと、孤児院で育ちました。彼女は13歳のとき、弟と一緒にキリスト教系の孤児院『六龜山地育幼院』に引き取られました。母親は彼女が小さな頃に酒浸りとなり、父親については詳しくは出てきていませんが、共に早くに離別、あるいは死別しているようです。レイチェルは昨年、TV番組『誰來晚餐3』の撮影で桃園少年之家(ユースホーム)を訪れた際その頃のことを思い出して、当時は母親への恨みがいっぱいでそれを捨てることが出来なかったと、涙を流しました。孤児院での生活に馴染めず、一刻も早く逃げ出すことばかりを考えていたそうです。そんな彼女もやがて信仰と共に心を開き、周囲からの愛を受け入れるようになりました。歌うことに目覚めたのです。レイチェルは今、子供の頃に受けたたくさんの親切な人たちからの助けや信仰を胸に、自分もそうした影響を与えられる人になろうと志しているようです。

 

6曲目に収録、『孩子』。『子供』という意味ですね。

 

さてレイチェル・リャン、2度目の登場でした。本当はもっと早く出したかった~。『情人×知己』発売後、HMVではまだ『知己版』(預購版)がラインナップされていたので注文をしたところ、さんざん、さんざ~ん待たされたあげく『入手困難』(現在は廃盤)とのメールが…。そうこうしているうちに2ndエディションが出たのでそちらを購入しましたが。C-POPでは売り上げが良かったりすると、あとでオマケ付きの別バージョンが追加リリースされることがよくあります。しかもたいていの場合、そちらのほうがリーズナブルなので買いどきがムズカシイ。今回は結果的に得をしました^^。

 

『情人版』(預購版)はまだHMVにあるみたい。

 

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脚注

*1:『巴冷』はルカイ族に伝わる物語・百步蛇王に嫁いだという少女の名前。