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sasanoji radio Awards 2014 【Best Newcomer】編

sasanoji radio Awards 2014、今回は【Best Newcomer】部門です。選んだ候補は以下の5名。

 

楊永聰James『Stay』(2月)

james2014 

 

王彙筑Vera『少女維拉』(4月)

vera2014 

 

孫盛希Shi Shi『Girls』(6月)

shi-shi2014 

 

姚亦晴Shiny『Shiny』(9月)

shiny2014 

 

克麗絲叮Christine Welch『一百萬個可能』(11月)

christine-welch2014 

 

候補1人目は、甘~いルックスとは裏腹の渋~いボーカルが魅力の男性シンガー・楊永聰(ヤンヨンツォン)です。1985年生まれ、イギリス・ロンドンの出身。英文名はJames Morris-Cotterill。イギリス人を父に、香港人を母に持つハーフです(両親は彼が10歳のときに離婚、母親の手ひとつで育てられた)。名門大学UCL卒業後、世界最大手の保険会社Allianzに就職しましたが、歌手になる夢を持っていた彼はその安定した生活に満足出来ず、全てを捨てて台湾へ(父親は弁護士だったが自身でバンド活動を行なうほどの音楽好きで、どうやらその影響を強く受けたらしい)。2012年、PK戦の挑戦者として出場した人気オーディション番組『華人星光大道』第2シーズンで本選出場者たちを圧倒する活躍を見せ、彼の名前は一気に知られることとなりました。翌2013年に出場した大陸の歌唱コンテスト番組『中國夢之聲』第1シーズンでも審査員の李玟、韓紅らを感嘆させ見事6位入賞を果たしています。デビューアルバムとなる本作『Stay』(華研國際)には自作の英文歌2曲を含む全10曲を収録(中文歌5曲、英文歌5曲)。『忘了我是誰』、『北京北京』といった名曲カバーのほか、Rihannaの『Stay』、The Animalsの『The House Of The Rising Sun』などの洋楽カバーも入っている、本当に渋い、新人らしからぬ雰囲気を備えた作品となっています。

 

候補2人目は、ショートカットの爽やかな容姿とハツラツとした歌声が印象的な女性シンガーソングライター・維拉Veraこと王彙筑(ワンフイジュー)です。1992年生まれ、嘉義県の出身。2011年に出場したアマチュア歌唱コンテスト『南方之星比賽』の創作部門で優勝、個人部門で準優勝して有名プロデューサー・鍾興民、大物女性シンガーソングライター・黃韻玲らに見出され、彼らのもとで練磨を重ねました。鍾興民が音楽を担当した2012年公開の青春映画『女朋友。男朋友』では黃韻玲作曲の挿入歌『越美麗越危險』の演唱歌手に抜擢、各地でプロモーションを行ない注目を集めています。本作『少女維拉』(果核音樂)はその恩師2人がプロデュースを務めた彼女のデビューアルバムで、収録されている全10曲のうち7曲が自身の作詞作曲によるナンバー。メーカーインフォメーションでは陳綺貞、張懸、盧廣仲に続く創作新人と紹介されていますが、その表現が大げさであったとしても、たしかに只者ではない感は漂っています。まだ22歳ということで今後の伸びしろを合わせて考えれば、注目しておいて間違いなしの新世代の女性シンガーソングライター…だと思います^^。

 

候補3人目は1990年生まれ、韓国華僑(韓国に在住する華人。現在の在韓華人の大部分は大陸の国共内戦から逃れて来た国民党支持者を祖とする中華民国人で、彼女は3世になる)出身の女性シンガーソングライター・希希Shi Shiこと孫盛希(スンションシー)です。10歳でピアノを、中学に入ってからは父親の指導でギターも弾き始め、大学時代にはロックバンドを結成してコンテストで優秀な成績を収めるなど楽曲創作のほうでも才能を発揮するようになりました。2012年に出場した人気オーディション番組『華人星光大道』第2シーズンで6位に入賞し、メジャーレーベル・滾石唱片Rock Recordsと契約。本作『Girls』は1年半のトレーニングを経てリリースされた彼女のデビューアルバムです。全10曲のうち7曲は自身で作曲をしたもの。徐佳瑩や韋禮安ら実力者提供の楽曲も収録されていますが、僕には孫盛希の自作曲の方が魅力的に感じられました。宇多田ヒカルをイメージさせるハスキーな歌声とクールなメロディーライン、OPナンバーの『你的誰』を初めて聴いた時は思わず身震いしてしまったほどです。韓国育ちだけのことはある、これまで台湾にはあまりいなかったタイプの新人かもしれません。白眉は女性ラッパー・葛仲珊Miss Koをフィーチャーした7曲目収録の『瘋起來』。必聴です。

 

候補4人目は環球音樂旗下のメジャーレーベル・EMIに所属する超新星少女、Shinyこと姚亦晴ヤオイーチン)です。本名は呂宛樺。王彙筑よりもさらに若い1996年生まれです。2010年、姚亦晴(呂宛樺)は13歳のときに女子中高生を対象としたアイドル発掘バラエティ『美少女時代』に参加して注目を集め、一度芸能界入りのチャンスをつかんだのですが、ここでは学業との両立を心配したお父さんの許しが出なかったため本格的な活動とはなりませんでした。本格デビューのキッカケとなったのはそれから3年後の2013年、彼女がエキストラの1人として出演した人気男性2人組ユニット・自由發揮のMV『ABC』。彼女が映っている時間は僅か数秒と短かったものの、これに金曲獎受賞プロデューサー・阿弟仔が大注目。お父さんに直談判してついに口説き落とし、2014年9月11日、彼女の18歳の誕生日に、張惠妹羅志祥楊丞琳ら大物アーティストが所属する有名レーベル・EMIから、5曲入りEP『小世界』でCDデビューを果たしました。容姿やMVだけ見ればたしかにアイドル…という括りになるのでしょうが、それだけでは収まりきらない上手さや力強さが感じられて、ちょっと照れながら候補に選んでみました^^。

 

候補5人目は1988年生まれ、アメリカ・ニューメキシコ州からやって来たストロベリーブロンドの女性シンガーソングライター、克麗絲叮(クリスディン)です。シカゴの名門・ノースウェスタン大学で中国語を専攻した彼女は、詩經、唐詩宋詞など中国古典文学に魅了され、大学3年のとき北京外国語大学に留学。同級だった台湾人女性の影響で台湾の音楽やドラマにも親しむようになり、卒業後、台湾に移住しました。2010年、楊丞琳王力宏ら人気歌手のヒット曲をカバーした自撮りMVをYouTube上で公開したところ、これが数十万アクセスを記録する人気に。有名プロデューサー・陶山Skot Suyamaの目に留まり、2011年から共同での創作活動を開始しました。以降、YouTubeだけでなくマスメディアへの露出も増加。2012年1月には『超級巨星紅白藝能大賞』、9月には大陸の音楽番組『我要上春晚』に出演し好評を博しています。CD作品としては2014年7月に2曲入りCD付きの初個人詩集『克麗絲叮的尋尋覓覓』を発表していますが、実質的なデビュー作となるのはやはり同年11月にリリースされた本作、陶山との共同プロデュースアルバム『一百萬個可能』(滾石唱片)のほうでしょう。収録されている全8曲すべてが彼女の作詞(1曲のみ英文歌)、うち3曲は作曲にも携わっています。西洋と東洋の融合を感じさせる、彼女の『本気』が伝わってくる1枚です。

 

以上がsasanoji radio Awards 2014、【Best Newcomer】部門候補でした。

2014年度のこの部門は全体的にやや低調で、今回はいつもより3枠減の5名としています。ほか、正統派女性デュオ・晨悠、アメリカ帰りの若手男性シンガーソングライター・周興哲Ericも良かったのですが、個人的なストライクゾーンに僅かに及ばず今回は見送りました。慢慢說樂團Murmurshowも一応新人という扱いにはなっているようですが、利得彙Freda Liが既にCDデビューしているので外しています。それから、インディーズ系女性シンガーソングライター・詹宇庭を中心に結成された男女3人組バンド・Hello Nicoはかなり気になったのですが、新人という枠に入れるのはどうかとも思ったので外しました。寧ろバンド部門で候補に入れてくる音楽賞があるのではないかと思っています。