sasanoji電台【台湾ポップス専門】

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ソロアーティスト、盧凱彤。

盧凱彤Ellen Loo『你根本不是我的誰』(2012)

Ellen-loo2012sep

 

盧凱彤(ルーカイトン)。1986年生まれ、カナダ出身。英語名はEllen Joyce Loo、またはEllen Loo。香港を活動の拠点とする若手実力派女性シンガーソングライターです。
2002年に女性デュオ・at17としてデビュー。2010年末をもってユニットでの活動を休止し、同年1stシングル『Summer of Love』でソロデビューしました。翌2011年にリリースした1stアルバム『掀起』は業界からも高い評価を受け、今年新たに始まった音楽賞『第一屆音樂推動者大獎』では4部門にノミネート。見事【年度突破(Breakthrough of the Year)】賞を受賞しています。現在26歳ですが、既にキャリア充分の10年選手です。

 

今回ピックアップしたのは、9月4日に香港で限量リリースされた(…らしい)2曲入りシングル『你根本不是我的誰』(寰亞唱片)です。ただしこのCDは香港でリリースする前に一度、台湾でも販売していました。

7月28日、台中の迴響音樂藝文展演空間(SOUND LIVE HOUSE)で行なわれた彼女のライブ、『This land was made for you and me 一人一吉他音樂會』で限定販売したのが最初で、香港のものは正規ルートに乗った限量盤だったということでしょうか。残念ながら存在に気がついたときにはもう、入手不能となっていました…。

 

新曲『你根本不是我的誰』と、昨年11月27日に香港文化中心(HKCC)で行なわれたライブから『蜜蜂』。このシングルには『你根本不是我的誰』と『蜜蜂』のDemo版が収録されています。


※janicespさん、TNX!

 

今年の初め、盧凱彤は9月に2ndアルバムをリリースする予定で準備中…と語っていたようですが、これはその予告編みたいなものだったのかもしれませんね。新作はどうやらもう少し先になりそうです。

 

盧凱彤は1986年、カナダで生まれました。子供の頃から西洋の音楽に接する機会が多く、ビッグバンドジャズを子守唄のように聴いていたそうです。カナダにいたのは数年で、その後は香港で育ちました。お父さん(どういう人なのか詳しい話は出てきませんが)の影響で9歳からクラシックギターを学び、12歳頃にはもうお兄さんと一緒にギターを弾きながら歌っていたそうです。

2000年、14歳のとき、盧凱彤はお兄さんとユニットを組んで歌唱コンテスト『原音2000』に出場します。そこで出会ったのが、友人たちとこのコンテストに参加していた、後にガールズデュオ・at17を結成することになる林二汶Eman Lamでした。林二汶は盧凱彤より4つ年上。彼女もやはり小さい頃からギターを学んでいました。お兄さんに影響されて弾き始めたそうですが、じつは林二汶のお兄さん、香港の実力派シンガーソングライターである林一峰Chet Lamなのです。もちろん2000年当時は本格デビューする前でしたが、1998年に張智霖のアルバムに楽曲提供するなど、既に頭角を現していました。また、香港の音楽プロダクション・人山人海(PMPS)を設立した大物シンガー・黃耀明は、林一峰のDemoに歌を吹き込んでいた林二汶の才能にも早くから注目をしていたようです。

原音2000歌唱比賽のあと、盧凱彤は林兄妹が歌うイベントに参加するようになりました。それで試しに盧凱彤と林二汶でDemoを録ってみたところ、これが思いのほか良好で、2001年末にガールズフォークデュオ・at17を結成。翌2002年1月1日付けで人山人海と正式契約をしました。ユニット名の由来は、林二汶が尊敬しているアーティスト・Janis Ianの名曲『At Seventeen』から…というのが1つ。それからユニット結成時、盧凱彤が15歳、林二汶が19歳で、平均すると17歳だったから…という、ちょっと眉唾っぽい理由も含んでいるようです。

 

at17の4thアルバム『Sing Sing Sing』(2005年)から『我們的序幕』、新曲+ベスト集『Threesome + at17』(2007年)から『同聲同氣』、5曲入りEP『Over The Rainbow Vol.2』(2008年)から『依然・親愛的 feat. 林嘉欣』。


※pmpsmediaさん、TNX!

 

at17は、2002年の1stアルバム『Meow Meow Meow』から、2009年の最終作(現時点での)『Over The Rainbow Vol.4』まで、ベスト盤を含め9枚のアルバムをリリースしています(コンピレーションを除く)。香港では同時期、TWINSという美少女デュオ(双子ではない)が活躍していて比較されることも多かったようですが、従来のガールズデュオの常識を覆すキャラクターの組み合わせと、年齢に似合わない類い稀なるテクニック、玄人受けする楽曲センスで多くの音楽ファンに愛されてきました。

2人は2010年12月に台北で開催された『Simple Life簡單生活節』でのライブを最後にユニットとしての活動を休止。それぞれにソロ活動を充実させていきます。[*1]

 

盧凱彤は2010年11月5日に、1stシングル『Summer of Love』でひと足先にソロデビューしました。ただしこの曲は彼女のオリジナルではありません。1992年にフィンランドの女性シンガー・Helen Hoffnerが歌ってヒットした原曲(アルバム『Wild about Nothing』に収録)を、翌年王菲Faye Wong(当時は王靖雯)が中国語カバーし(6thアルバム『十萬個為什麼?』に収録)、それをさらに盧凱彤が再編曲したものです。アメリカンロックテイストのオリジナルとはまったく異なる、挑戦的なオルタナティブロックに生まれ変わっていますね。

 

そして2011年4月の2ndシングル『雀斑』に続いて、6月、DVD付きのソロ1stアルバム『掀起』をリリースします。

 

盧凱彤Ellen Loo『掀起』(2011)

Ellen-loo2011jun

 

1年半を掛けて制作したこの作品は音楽ファンの間でたいへんな人気となり、一時入手困難な状態にもなっていたようです。1ヶ月後にはライブ映像を増補した限定バージョンもリリースされましたが、現在は通常版、DVD増補版ともすでに廃盤となっていて、残っているのは市場在庫のみです。見かけたらお早めに。[*2]

2曲目に収録の『雀斑』と、3曲目に収録の『等等』。

 

盧凱彤Ellen Loo『一個人回家』(2011)

Ellen-loo2012jan

 

2011年12月、新歌2曲を収録したシングルCDと、2011年7月の掀起連場コンサートを収録したライブCDをセットにした『一個人回家』をリリース。これは新曲よりもオマケCDのほうがメインみたいな作品です。

タイトルナンバー『一個人回家』と、『卡嚓』。下はこの作品のリリース直前に行なわれたらしいKKBOX主催によるライブの模様。

 

盧凱彤は一流のギタリストでもあります。at17時代から鄭秀文Sammi Chengや陳奕迅Eason Chan、楊千嬅Miriam Yeungら大物アーティストのライブ専属ギタリストを務めていたのは有名な話。写真家としての才能も豊かで、これまでに2冊の作品集を発表しています。香港の女性シンガーソングライター・岑寧兒Yoyo Shamとは共に参加していた『陳奕迅DUOコンサート』以来の友人ですが、Yoyoは昨年リリースした自身の1st EP『4-6 pm』のジャケットに、盧凱彤撮影によるシブいモノクロ写真を使っています。[*3]

 

いっぽう林二汶は、その愛嬌たっぷりなキャラクターを活かして女優業にも進出。映画や舞台、TV番組の司会などバイプレイヤーとして活躍中です。今年香港で開催された『ドラえもん誕生100年前』イベントでは、成長したジャイ子のイメージキャラクターに扮して話題となっていました^^。
また、音楽のほうではお兄さん・林一峰とのライブやコラボ作品をメインに、これまでにEP、ライブ盤を含め7作品をリリース。今年8月にリリースしたアルバム『林二汶Eman Lam』は、2011年の『Songs for EX』を除けば彼女にとって初めての本格的なソロアルバムとなります。9月には『Wanna Beコンサート』を行なうなど、ソロアーティスト・林二汶としての活動が充実してきています。[*4]

2010年リリース、お兄さんとのコラボアルバム『林一歌林二唱』から『無忘花』。今年8月リリースの本格ソロアルバム『林二汶Eman Lam』から『Wanna Be』と、岑寧兒とのデュエットで『聽說』。

 

at17の正式活動休止から、もうすぐ2年になります。
その2年前の『Just The Two of Us...Until We Meet Again Live』で、2人は気になることを言っていました。2012年、つまりat17デビュー10周年に、もう一度コンサートをやると。3月に行なわれた林二汶のライブに盧凱彤がゲスト出演していたようですが、まさかそれじゃないですよね~。EPでもいいから、何かCDは出してほしい。ユニット名は『at28』くらいで(at30になる前に)。

 

このブログでは通常、台湾人アーティスト、あるいは既に台湾盤をリリースしている華人アーティストを中心に取り上げています。台湾のCDを買って台湾に感謝したいというのがこのブログを始めたキッカケだったので。
今回のシングル『你根本是我的誰』は香港盤ですが、一瞬台湾で売っていましたし、盧凱彤は個人的にかなり好みで…^^;。林二汶も合わせて取り上げてみました。

 

僕が盧凱彤を意識して聴くようになったのは『雀斑』以降です。一聴惚れ…とでもいいますか、初めて『雀斑』のMVを見たとき、胸がキュンとなってしまいました。徐佳瑩の『身騎白馬』を初めて聴いたときもそんな感じだったでしょうか…。
あ、鈴木祥子の3rdアルバム『風の扉』を聴いたときの感覚にも似ているかな。

恥ずかしいですけど、恋…みたいなもの?

ギターのスクラッチノイズさえ、『そばかす』みたいで可愛らしい^^。

 

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盧凱彤 Ellen Loo - Facebook

 

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脚注

*1:at17はあくまで正式なユニット活動を休止しているだけであって、解散したわけではありません。2011年4月の『黃韻玲香港コンサート』に揃って登場するなど、機会があれば一緒に歌っているようです。

*2:盧凱彤の1stアルバム『掀起』のジャケットには花火をしている場面が使われていますが、その撮影中、彼女はちょっと可哀想なアクシデントに見舞われています。おそらく右手で花火を持っての撮影だったのでしょう、突然花火の下側から火が出て、手の平を火傷してしまったのだとか。じつは彼女、『雀斑』のMV撮影時にも、どういう状況だったのかわかりませんが手足に擦り傷を負っていたそうで、アルバムのジャケット撮影時、その傷もまだ完治していませんでした^^;。

*3:盧凱彤撮影によるモノクロ写真が印象的な岑寧兒の1st EP『4-6 pm』のジャケットは、小さいながらもインパクトのあるデザイン(林小乙)で注目を集め、今年の第23屆金曲獎で【最佳專輯裝幀設計獎】にノミネートされました。

*4:林二汶は楽曲提供でも良い仕事をしています。マレーシアの女性シンガー・李幸倪Gin Leeが2011年にリリースした初広東語EP『Here I Come』のリードナンバー『潛水』は、彼女が作曲したものです。林二汶はこの曲のプロデュースにも携わっています。