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台湾のトムとハックはサンダル履き。

湯姆與哈克Tom & Huck『夾腳鞋』(2012)

Tom-huck2012
25cm×25cmのレコードジャケット風。ブックレット入り。

 

前作『野狼125』から1年9ヶ月ぶり。10月5日に角頭音樂からリリース(滾石唱片が代理発行)された台湾東部・花蓮を拠点とする男性フォークデュオ、花東海岸の音樂頑童(ヤンチャ坊主?)こと湯姆與哈克(タンムーイーハークー)の2ndアルバムです。暖かい花蓮の海をイメージさせる、聴けば思わず口元が緩んでしまうようなアコースティックサウンドが心地良い全8曲を収録。

 

6曲目に収録のタイトルナンバー『夾腳鞋』と、4曲目『我的寶貝』。

 

湯姆與哈克は、湯姆(黃黎明,メガネの方)と哈克(馮正義,カウボーイハットの方)の男性2名による台湾語メインのフォークデュオです。これまでに自主製作盤『站火車』(2004年)と『不醉不歸』(2007年)、角頭音樂から実質1stアルバムとなる『野狼125』(2010年)をリリースしています。彼らの詳しいプロフィール等はよくわかりませんが、『野狼125』リリース時に結成16年と紹介されていたので、既に20年近く一緒にやっているようです。元々2人は西部の都市で別々に活動をしていて、その後、故郷・花蓮のステージで出会いユニットを結成。台湾西部と東部の経済的不均衡を列車に例えて皮肉った曲『站火車』(作詞作曲は湯姆)で一躍知られる存在となりました。こなしたライブは1000を超え、2008年と翌2009年には、行政院新聞局(現・文化部)が主催する台灣原創音樂大獎の最優秀ライブパフォーマンス賞を2年連続受賞。2011年には『野狼125』で第22屆金曲獎の最優秀台湾語アルバム部門と最優秀ボーカルグループ部門にノミネートされています。

金曲獎ノミネート作となった『野狼125』は、自主製作盤2作からの楽曲に新曲を加えた、10数年に渡る彼らの作品を凝縮した精華のようなアルバムです。今回リリースした『夾腳鞋』も同様の位置付けと見てよいのでしょうか、『野狼125』に収録されなかった自主製作盤2作からの楽曲+未発表曲3曲という構成になっていますね。

 

2010年5月8日に台北のカフェ・女巫店で行なわれたライブから、彼らの代表曲『站火車』。3rdアルバム『野狼125』から『後山的山』と『潮』。2012年9月22日にTHE WALL賣捌所(URI-SABAKI-JO)で行なわれたライブから、ニューアルバムのOPナンバー『Bali Sunshine』。

 

彼らは1999年に結成したMa-La-Sun Bandでの活動も平行して行なっています。2人のときはノスタルジックなフォークスタイルですが、キーボードやドラムを従えたステージでは、エレキサウンドを駆使した激しい一面も見せています。のんびりとした『站火車』が、かなり熱い1曲になっていたり^^。

 

“Ma-La-Sun”は台湾の原住民族・阿美アミ族の言葉で『酔っ払った』を意味するそうです。2005年に阿美族出身のロックシンガー・張震嶽(チャンチェンユエ)が『馬拉桑』というタイトルの4曲入りEP(1曲は『馬拉桑』の放送禁止用語修正バージョン)を出していますが、ネットで調べてもそれ以前に“馬拉桑”、あるいは“Ma-La-Sun”というフレーズは出てこないので、張震嶽が歌って以降ポピュラーになったのでしょうか。

それから、台湾には粟で出来た『馬拉桑』という小米酒(Millet wine)もあるそうですね。2008年公開の大ヒット映画『海角七號』の劇中でもチョイチョイ登場しては見る者の興味を誘っていました、まるでコマーシャルのように^^。
小米酒は1000年以上も前から原住民たちが神事で供えたり、また飲んでいた、歴史のあるお酒です。でも、この『馬拉桑』という商品自体は出来てそれほど時間は経っていません。なぜなら『海角七號』の監督・魏德聖(ウェイダーション)が、この映画で使うためにわざわざ作ったお酒だからです。

2006年、魏德聖監督は劇中に登場させる重要アイテムとしてお酒が必要と考え、『少し俗っぽくて、でもちょっぴり可愛らしい、そしていかにもローカルな感じ』のする小米酒の開発を、南投縣の信義鄉農會(農民協会)に依頼しました。完成した『馬拉桑』は映画公開後正式に商品化され、売り切れ店が続出するなど爆発的ヒットとなっています。現在も『海角七號』のお酒として地元等で継続販売しています。

 

湯姆與哈克の2人は9月22日、台湾北東部・宜蘭縣にある和風建築カフェ《THE WALL賣捌所》(URI-SABAKI-JO)でライブを行ないました(上のYouTube映像)。

『賣捌所』(うりさばきじょ)は日本語です。日治時期(日本統治時代)、煙草賣捌所(煙草の専売所)だった家屋をリフォームし、現在は宜蘭縣とTHE WALLが軽食喫茶、ライブスペースとして再利用しています。ライブは店内のほか裏庭の屋外ステージでも行なわれます。今回2人は裏庭のほうでやっていますね。ライブの様子をUPしてくださったfishsaidさんのYouTube映像を最初から見ると、明るかった空がだんだんと暮れていく風情が感じられて、なんともたまらんです^^。

 

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