盧凱彤Ellen Loo『你安安静静地躲起來』（2012）
11月15日リリース。香港を活動の拠点とするカナダ生まれの若手実力派女性シンガーソングライター・盧凱彤（ルーカイトン）の新作、2ndアルバムです。
盧凱彤は今年の初め、9月にニューアルバムをリリースする予定で準備中と語っていましたが、ほぼ…予告どおりに出してきましたね。夏に限量販売したシングル『你根本不是我的誰』も収録されています。
OPナンバー『誰』と全曲試聴PV。
2011年6月リリースの1stアルバム『掀起』に続いて、この2ndアルバムも標準中国語（華語）作品です。インストゥルメンタル1曲を含む全11曲を収録。作詞は1曲目『誰』が香港の名作詞家・周耀輝との共作。6曲目『了不起』は互いのライブにゲスト出演するなど親交が深い魏如萱Waaとの共作です（Eメールでやりとりしながら仕上げたらしい）。その2曲以外の作詞作曲は全て盧凱彤自身が手掛けました。所属プロダクション・人山人海の蔡德才らと共に楽曲プロデュースにも携わっています。
ゲストプレイヤーには、王菀之Ivana Wongとの共演シングル『Made of Water』でメチャクチャかっこいい音を鳴らしていた香港のインディーズロックバンド・觸執毛ChochukmoからMike Orange（E.Gt）とWaiting Soul（Ba）が参加。7曲目『玫瑰木』は盧廣仲Crowd Luをフィーチャーしたデュエットナンバーです。
2曲目に収録、首波主打『你根本不是我的誰』。
5曲目に収録、『活該活該』。
或る古株のC-POPブログでは、林二汶Eman Lamとのユニット『at17』時代の楽曲よりも聴きやすいなどと意味不明な比較をしていましたが、前作と比べるならまだしも、そんなのはナンセンス以外の何物でもない。今ここにいるのは、ソロアーティスト・盧凱彤なのですから。
1人になって彼女は自分を取り巻く社会について考え、自身の日常や心を見つめ直しています。内面をさらけ出すようなオルタナティブ色はより強くなりました。1曲目、觸執毛のMike OrangeとWaiting Soulが参加した『誰』は椎名林檎張りの湿度の高いロックナンバーです。いきなり誘（いざな）われたその世界には、『我很累（疲れた…）』、『我不後悔（後悔してない…）』と酔ったように繰り返しながら出口を求め足掻いている26歳の女の子がいました。何があったのだろう、苦い恋でもしているのだろうかと、ちょっと心配になってしまうくらいネガティブなゾーンに入り込んでいます。2曲目『你根本不是我的誰』でもその雰囲気は引きずったままで、現在この2曲と5曲目『活該活該』のMVが公開されていますが、どれも心の闇をイメージしたかのような暗い色調となっています。詞も文学的で難解、Google翻訳するしかない僕にはほとんど理解不能です…。
もちろん影ばかりではありません。7曲目『玫瑰木』はライブでも共演している盧廣仲とのアンニュイな掛け合いがおもしろいダルファンク。続く8曲目『Departure』は打って変わって叙情詩的でロマンティックなワルツ調のナンバーです。そのほかにもバラエティに富んだ楽曲が揃っています。
まだ変化の途中にある作品だと思いますが、2ndアルバム『你安安静静地躲起來』にいるのは今の等身大の盧凱彤です。自分自身をファインダー越しに見つめたような、内面をさらけ出したセルフポートレートのような生々しさを感じます。このアンダーグラウンドな世界に踏み込んでいく感じは魏如萱と被ります。魏如萱は舞台での経験をフィードバックさせながら、2nd、3rdとアーティスティックな面をどんどんと深めていきました。3rdアルバムの話はまだ早過ぎるでしょうか。でも次にどう変わっているのか、どんな作品が出てくるのか、想像しただけでゾクゾクします。
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