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台湾客家期待の新進女性シンガーソングライター・黃宇寒、2ndアルバムをリリース!

令和3年9月12日、日曜日。時刻は午後11時を回りました。

皆さん、こんばんは。いかがお過ごしでしょうか。人知れずコッソリ不定期放送中、フェイクラジオ・sasanoji電台です。

 

今夜は9月1日にリリースされました台湾客家出身の新進女性シンガーソングライター、黃宇寒(ファンユーハン)の2ndアルバム虛空現下Return To Realityをご紹介いたします。

 

 

黃宇寒Han『虛空現下』(2021年9月1日)

Han2021

 

黃宇寒は1996年生まれの現在25歳、桃園龍潭の出身。台湾客家人を父に、華僑系インドネシア人を母に持つ、民族期待の新進女性シンガーソングライターです。大学時代、いくつものコンテストで優秀な成績を収めた黃宇寒は、2019年1月、オーディション番組『聲林之王』に本選出場者と対決する一騎討ち(PK戦)の挑戦者として出場。最終的に優勝者となる李友廷Yo Leeに惜敗したものの、審査員や観衆から高い評価を受け、翌2020年1月、クラウドファンディングサイトで募った資金を元手に製作した1stアルバム有時有日でCDデビューしました。

 

1stアルバム有時有日から、お母さんの故郷の言葉であるインドネシア語も聞こえる癒やし度の高いナンバー、有時有日をどうぞ。

 

黃宇寒はこの作品で、同年10月に開催された第31屆金曲獎[*1]に於いて最佳客語歌手獎 、最佳客語專輯獎、年度專輯獎の三賞にノミネートされ、大きな注目を集めました。ベテランが居並ぶ中、ただ1人の新人ということで残念ながら受賞とはなりませんでしたが、12月に行なわれた客家歌手の音楽賞・客家流行音樂大賽では、新曲係無?で見事優勝を飾っています。

 

2ndアルバム『虛空現下』の3曲目に収録、客家流行音樂大賽で新たな黃宇寒を打ち出したナンバー係無?をお聴きください。1stアルバムの優しく柔らかい雰囲気をイメージしていると、ちょ~っとビックリすると思いますよ。

 

この2ndアルバムで、黃宇寒はヒーリング系からオルタナティブ系へと大きくスタイルを変えてきました。というより、1stアルバムは彼女がやりたいことのホンの序章にしか過ぎなかった、と言ったほうがよいのかもしれません。今回の作品、アルバムタイトルからも不穏な空気が漂ってきますが、まさに今、社会問題となっているネット上での誹謗中傷、イジメですね、これが本作のテーマの中心となっています。

 

ではここで2曲目に収録のナンバー社會現象をお聴きください。MVの監督は、大象體操ElephantGymの『頭,身體』、『半個』などを手掛けた李彥勳@切音樂電影です。

 

この息苦しさ、激しさ…。プロデュースは前作に引き続いてVast & Hazy林易祺LNiCHが担当していますが、もう1stアルバムのときのアコースティックギターを抱えた彼女のイメージとは、全然違いますよね~。

演奏陣はゲストを多用した前作とは逆に、舒國銘Shu Shu(A.Gt,F.Hr)、張天偉Myles Chang(E.Gt)、卞宗仁John Pien(Key)、逄捷Chieh Pang(E.Ba)、曾景崧Relaxx Tseng(Dr)ら実力派勢でキッチリ固めています。黃宇寒がアコースティックギターを弾いている曲もありますが、今作ではむしろ演奏のほうは彼らに任せて、自分はボーカルに集中しようという様子が見えますね。バンドサウンドが強く押し出された作品になっていると思います。

 

黃宇寒がボーカルに集中しているナンバーを4曲続けてどうぞ。1曲目に収録の虛空、4曲目影戲人、6曲目太陽系、9曲目繼續走吧です。カッコイイ~、痺れますよ。


 

続いてお掛けする3曲は、黃宇寒がアコースティックギターを弾いているナンバーです。5曲目下夜、7曲目和天空問好、8曲目をどうぞ。本作には全10曲が収録されておりますが、全て黃宇寒自身の作詞。作曲のほうは演奏メンバーとの共作となっています。全員でアイデアを出し合いながら録っていったんでしょうね。

 

 

ここまで2ndアルバムから9曲ご紹介いたしましたが、もう1曲掛けると全部紹介したことになってしまいます。よいのでしょうか~、流しちゃって~。

ただこのアルバム、CDは今のところ入手先が台湾の独立系レーベル・子皿In Uteroオンラインストア限定のようなので、慣れていないと日本からの購入はちょっとハードルが高いかもしれませんね。僕なんか尻込みしちゃう。だからこうやってYouTubeで全曲公開してくれるのは、申し訳ない気持ちもあるのですけど、正直、ありがたいです。
追記:五大唱片(在庫あるみたい)、博客來(ラインナップなし)、誠品線上(在庫あるみたい)、佳佳唱片(在庫あるみたい)。

 

さて、今回は黃宇寒の2ndアルバム『虛空現下』をご紹介してまいりましたが、いかがだったでしょうか。柔らかい雰囲気だった前作とあまりにも大きくスタイルが異なっているので、戸惑われた方もいらっしゃるかもしれませんね。でもこれは、自分たちの母語を大切に思う彼女の意志の表れでもあるのです。

台湾客家は、閩南系の福老(ホーロー)人に次ぐ第2のエスニックグループですが、自分は客家人である、または客家の血を引いていると自認する人の数は、2016年調べで453万7千人。台湾人口2,300万人のうちの2割に満たず、しかも客家語を流暢に喋れる人の数は5割を切っているそうです。とくに若年層に於ける客家語離れが深刻で、台湾語や原住民諸語も同様ですが、如何に若い世代に自分たちの母語を伝え、残していくのかが、近年の台湾の重要な課題ともなっています。
僕は先月行なわれた第32屆金曲獎を見て、台湾語客家語、原住民語の各部門、若い世代に訴求力のある作品が例年よりも多いような印象を持ちました。黃宇寒のこの変化も、若者たちに客家語の歌を如何に聴いてもらうかを考えた中でのポジティブな変化だったのでしょう。黃宇寒は今回、前作で使っていた標準中国語(國語,華語)やインドネシア語を封印し、母語である客家語のみで歌っています。そのあたりからも、彼女の強い思いが感じられる気がしますね。

 

 

それでは今夜のラストナンバーです。2ndアルバム『虛空現下』から、10曲目に収録の『現下』を聴きながらお別れいたしましょう。お天気は相変わらず不安定、寒暖差も大きいようですね。皆さん、どうぞ体調管理には十分に気をつけて。良い1週間をお送りくださいませ。お相手はsasanoji電台でした。おやすみなさい。

 

 

全曲、紹介してしまいました~!
だって~、公開されてるんだも~ん。

 

 

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本日のオンエア曲

 

 

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脚注

*1:コロナ禍の影響で例年の6月開催から3ヶ月以上も延期となった。