sasanoji電台【台湾ポップス専門】

こちらはsasanoji電台第1廣播、TW-POP専門チャンネルです。

迷幻王子、林宥嘉。

林宥嘉Yoga Lin『美妙生活』(2011)

yoga-lin2011

 

林宥嘉(リンヨウジャ)。1987年生まれ、英語名はYoga Lin。あるいはJames Linの名でも呼ばれていましたが、現在はヨガ(ヨウガとも)のほうがポピュラーですね。2007年にスタートしたオーディション番組『超級星光大道』の初代優勝者。少年のような容姿と、バラード、ジャズ、ロック、R&Bなどあらゆるジャンルの曲を変幻自在に歌いこなす若手実力派トップシンガーです。

昨年5月リリースの3rdアルバム『美妙生活』は、前作『感官/世界』からは1年7ヶ月ぶりとなる作品。本作も前2作と同様に台湾、香港、中国などからトップクリエイター陣が集結し、林宥嘉自身もエレキギターの演奏に加え、プロデュース、編曲、ミキシングなどの工程にも挑戦した、アーティストとしての新境地を開いた意欲作となっています。相変わらずのハイクオリティ、ハイセンス、アメリカでのレコーディングを敢行するなど、たっぷり時間を掛け贅沢に仕上がった全11曲入り(ボーナストラック1曲を含む)のアルバムです。

 

香港地区の第二主打歌(第2弾シングル)となった、タイトル曲『美妙生活』。作詞は林夕、作編曲にはアメリカからRoger Joseph Manning Jr.が参加。林宥嘉もプロデュースに携わった1曲です。

 

今頃、ヨガ・リンです…^^;。

昨年ヨガと同じく『超級星光大道』第1シーズン出身者である楊宗緯Aska Yang、蕭敬騰Jam Hsiaoを立て続けに取り上げておきながら、優勝者である彼がまだだったこと、じつは気にしていました。嫌っていたわけではないのです。ただ、アスカやジャム・シャオに比べてもうひとつドラマに欠けるといいますか…、あまりにも才能に恵まれすぎていて、デビューも当たり前のようにスムースで…。ちょっと記事を寝かせてしまいました。

 

ヨガの恵まれた天分は、早くから現れていたようです。高校時代は校内の人気バンドのメインボーカルとして活躍。たまたまその頃の彼に歌の指導をする機会があった台湾の実力派ロックシンガー・楊培安Roger Yangは、まだ少年だったヨガが見せるR&Bの才能に深い印象を受けたと後日語っています。
ヨガは大学進学後、ソロで上のステージを目指したいとバンドを退団。レストラン歌手をしながら修行する道を選んだのですが…、不運なことにそのレストランが2ヶ月後に火事を起こし営業停止となってしまいます。そこで2006年12月、ちょうど始まるところだった新オーディション番組『超級星光大道』第1シーズンの地区予選にエントリー。正式な歌唱コンテストに1人で出場するのは初めてでしたが、無事予選をパスし、本選出場者100人に残ります。ヨガはこのとき、まだ19歳でした。

2007年1月、『超級星光大道』第1シーズンのTV放映が開始。そしてヨガの運命を決定付ける第9週、3月9日がやってきます。ヨガはここまで淘汰されることなく残ってはいましたが、未だ通過した20数名のうちの1人にすぎませんでした。しかしこの日見せたパフォーマンスは司会者や審査員らを唸らせ、ヨガは一気に注目を集める存在となります。

 

3月9日のPK戦、上海出身の実力派男性シンガーソングライター・李泉James Liの『走鋼索的人』を歌う(オリジナルも曲の冒頭、ボイスエフェクトしています)。司会の陶晶瑩Matilda Taoは彼の個性的な歌唱を『迷幻』と形容し讃えた。

 

その後も迷幻歌手・ヨガは素晴らしいパフォーマンス(とくに第16週から21週までは全て満点通過)で勝ち続け、決勝となる7月6日の『總決賽ライブ』で歌ったRadioheadの『Creep』と陳奕迅Eason Chanの『Last Order』は、共に満点の25点を記録。見事初代チャンピオンに輝いたのでした。

 

この大会、たしかに話題をさらったのはアスカとジャム・シャオだったかもしれません。翌2008年、3人それぞれに1stアルバムをリリースしデビューしましたが、売り上げランキングでもジャム・シャオは第3位、次いでアスカが第4位、ヨガはやや離されての第5位でした。でも最後まで安定した強さを見せたのは、ヒョロッとしてちょっと影の薄い19歳の少年、林宥嘉だったことは間違いありません。その人気を証明する話として、YouTubeにはこの大会の映像がたくさんUPされてるのですが、彼の映像は軒並み数十万アクセスに達し、その中の1つ、蕭煌奇Ricky Hsiaoの『你是我的眼』を歌った回に至っては現在500万アクセスを突破しています。MVではありません。オーディション番組の映像が、です。

また2008年6月リリースのデビューアルバム『神秘嘉賓』には台湾を代表するトップクリエイター陣が集結していますが、その中の1人、映画『藍色大門』(邦題:藍色夏恋)の監督として知られる易智言は番組で聴いた彼の歌声にインスパイアされ、自らレコード会社に彼のMVを撮らせてほしいと懇願したほどだったといいます。そしてヨガは1stアルバムリリース前に台北、台中、高雄でソロコンサートを行ない成功させるのですが、これもこの若さでというのは記録的なことだったようです。

 

3rd『美妙生活』から、台湾地区の第二主打歌となった『想自由』。作詞は姚若龍。

 

1stアルバム『神秘嘉賓』はアジア各国で大ヒットし、数々の賞、新人賞を受賞します。ちなみに2009年の第20屆金曲獎・新人賞にもノミネートされますが、こちらは惜しくも盧廣仲Crowd Luに敗れてしまいました。この年は梁文音Rachel Liang、王若琳Joanna Wang、蕭敬騰らもノミネートされていて、新人が豊作だったことをうかがわせますね。その2009年10月には2nd『感官/世界』をリリースし、これも続けて大ヒット。この作品からは『飄』が、是枝裕和監督の日本映画『空気人形』の中文版主題歌に選ばれています。

3rd『美妙生活』のリリースまで1年半の間が開いたことについては、これは華研HIM側の配慮があったとのこと。2ndアルバムもヒットし台湾、大陸、東南アジア各国でのプロモーション、コンサート活動に奔走する日々が1年以上も続いていた彼には休息が必要でした。そして新作の制作時間もタップリと取ってもらったようです。その甲斐あって本作は1st、2ndよりもさらにハイスペックな一品となっています。

預購版には2nd『感官/世界』巡回ライブツアーの音源17曲を収録したCDがオマケに付いているので、入手可能ならそちらがお得…ですが、今からだとむずかしいでしょうか…。とにかく聴いて損はしない作品です。

 

1st『神秘嘉賓』から、易智言監督によるMV『伯樂』。

 

同じく1st『神秘嘉賓』から、『眼色』。李泉がヨガの持つ雰囲気を活かして作詞作曲したもの。ストリングスは上海交響楽団に依頼、ブロードウェイミュージカル風の華麗で魅惑的な色彩を持つ作品に仕上がった。

 

2nd『感官/世界』から、映画『空気人形』の中文版主題歌となった『飄』。

 

超級星光大道』、5月25日の映像。蕭煌奇『你是我的眼』を歌い4回目の満点を記録。中央は7月6日の『總決賽ライブ』から、満点を取ったRadiohead『Creep』。下も同じく『總決賽ライブ』から、満点を取った陳奕迅『Last Order』。

 

コチラは2011年8月21日、Legacy Taipeiで行なわれた盧廣仲の慢靈魂音樂會の映像。ヨガがゲストで登場し、爆笑と感動のコラボを観せてくれます。

 

コチラは那英Na Yingの『那又怎樣』をピックアップしたときに一度紹介していますが、彼女の曲『變幻的年代』をテーマとしたショートムービーのようです。ヨガ、いい演技するんですよねー。表情がいい。

 

テンコ盛りの紹介になってしまいましたが、『超級星光大道』第一季冠軍(チャンピオン)に敬意を表して…。でもまだまだこんなモンじゃないのですよ、このひとは^^。