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許哲珮のニューアルバム、『三拍子』…が揃っています。

許哲珮Peggy Hsu『圓舞曲』(2014)

peggy-hsu2014

 

2014年5月6日リリース。独特の世界観が魅力の個性派女性アーティスト・許哲珮(シージャーペイ)の最新作、2011年の『奇幻精品店』以来2年半ぶりとなるファン待望の6thアルバムです(EP『馬戲團1號』を除く)。

 

12曲目に収録、『催眠』。出演は人気男性3人組ユニット・JPMの邱勝翊(王子)。

 

アルバムタイトルからもわかるとおり、本作『圓舞曲』のコンセプトはワルツ、即ち『三拍子』です。Intro、Interludeを含む13曲(なぜかOutroは無し)全てに三拍子を取り入れた、童話ミュージカルをイメージさせるロマンティックで可愛らしい作品です。

許哲珮は、誰の中にも存在する“大人になりきれない子供”の部分に優しく語り掛け、光と影の迷宮へと聴き手を誘います。その企みはCDをプレーヤーにセットする前、ジャケットを手にするところから既に始まっていました。魔法のオルゴールをイメージしたというジャケットの装丁は、バレリーナのシルエットが踊る幻想的な絵が描かれた引き出し付きの小物入れのよう(この時点でオジサンはかなり照れている^^;)。中には手の平サイズの歌詞本やメッセージカード、小さな缶バッジなどが入っています。上蓋を開けると、鏡の前で踊るバレリーナが飛び出してくる仕掛けにビックリ。そこへIntroに続いて、2曲目『Tippy Toes』が聞こえてきて…。

 

 

ハイ、見事にPeggy's Worldに落ちました^^。

許哲珮は今回、オーケストラとの同時録音にチャレンジしています。この曲などはもう完全にミュージカルの臨場感ですよね~。舞台の上でクルクルと踊りながら歌う彼女の姿が目に浮かぶようです。

 

ゲストアーティストにも要注目です。7曲目『愛是…』でデュエット相手を務めるのは、彎的音樂Wonder Music所属の同僚・Tizzy Bacの陳惠婷。許哲珮の優しい高音ボイスと陳惠婷の迫力ある低音ボイスで、白と黒、光と闇を表現しています。

 

ほか、許哲珮の専属バンド・馬戲團、彎的音樂の同僚アーティスト・小民(旺福)と小玉(宇宙人)、男女2人組アコースティックユニット・十九兩樂團の阿雞と瑞奇といった個性豊かな面々が集まっています。楽しそうな現場の雰囲気がコチラにも伝わってきますね。

 

許哲珮は1981年生まれの33歳。2000年、19歳のときにダウンロードサイト・滾石可樂RockaColaで発表した自作曲『氣球』が年間アクセス数トップとなったのをきっかけに、捌捌陸陸8866唱片と契約。翌2001年、1stアルバム『氣球』でCDデビューしました。この作品は業界からも高く評価され、彼女は翌年の第13屆金曲獎で最佳新人獎にノミネートされています。ちなみにその年の受賞者は、先日の第25屆金曲獎で最佳單曲製作人獎に輝いた男性シンガー・孔令奇でした。また、S.H.Eやマレーシア出身の実力派男性シンガーソングライター・易桀齊(易齊)は、当時一緒に候補に選ばれていた同期です。

 

1stアルバムから、タイトルナンバー『氣球』。彼女独特の世界観が既にそこにあることを実感させてくれる、記念すべき1曲。華人アーティストとして初めて北欧・アイスランドでロケを行なったというMVも印象的です。

 

中華圏でいくつもの新人賞を獲得し順調に音楽家人生をスタートしたかに見えた許哲珮ですが、その後、所属レーベルが経営危機に陥ってしまい契約は解除。結局、2007年に種子音樂Seed Musicと契約するまでの6年間、新作をリリースすることが出来ませんでした。しかしその間、彼女はくじけることなくアメリカに渡ってバークリー音楽大学でジャズボーカルを学んだり、楽曲制作や他アーティストのプロデュースなどクリエイターとして働きながら機会を待ちます。2006年にはTizzy Bacの2ndアルバム『我想你會變成這樣都是我害的』にプロデュースで参加し、翌年の第18屆金曲獎で最佳專輯製作人獎を共同受賞しています。

2007年、種子音樂と契約した許哲珮は、『氣球』から6年ぶりとなる新作『許願盒』をリリース。以降、2009年に四季をテーマとした二部作『美好的』と『雪人』、2010年にEP『馬戲團1號』、2011年に『奇幻精品店』と、寡作ではありますがコンスタントに作品をリリースし続けています(種子音樂との契約は2008年に満了。2009年、彎的音樂と契約)。

 

また、彼女は2007年頃から音楽活動と並行して児童ミュージカルにも挑戦しています。2007年にバーネット原作の『祕密花園 The Secret Garden』(2010年、2011年再演)、2008年に『小花 Lil' Flora』(2009年再演)、2012年8月にはアンデルセンの童話『雪の女王』を原作とするミュージカル『雪后』に出演。いずれも主役を務めて好評を博しています。舞台での経験が自身の作品世界にも大きな影響を与えているようです。

 

4曲目に収録、過去の自分に捧げたという『孩子王』。

 

彼女の言う『大人になりきれない子供』とは、言いかえれば、子供の頃の夢を今も持ち続けている大人、夢を忘れられない大人…ということになるのでしょう。いつまでも円を描いて回り続ける三拍子。今回Outroを入れなかったのも、終わりのない夢の世界を表現したかったから…なのかもしれません(考え過ぎでしょうか)。いま疲れている大人たちにこそ聴いてほしい、郷愁を誘う癒しの1枚です。

 

ちなみに『誰に一番このアルバムを聴いてもらいたい?』との質問に対して、
彼女は『Tim Burton』と答えています^^。

 

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許哲珮 Peggy Hsu - Facebook

 

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