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sasanoji radio Awards 2013 【Album/EP of the Year】編

最後は【Album/EP of the Year】部門です。
選んだ候補は以下の6作品。

 

林俊傑JJ Lin『因你而在』(3月)

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JJ林俊傑(リンジュンジエ)の10thアニバーサリーアルバムです。2003年にCDデビューして以来毎年アルバムをリリースし続け、今作で10枚目。これを多いと見るか否かは人それぞれだと思いますが、僕は…前者のほうでした。果たして全てのアルバム、全ての楽曲に満遍なくエネルギーを注ぐことが出来るのか…と。これが周杰倫であればさして気にもならなかったのでしょうが、優男な雰囲気に惑わされていたのですね。今まで彼のアルバムに手を出さなかった理由には、それもあったように思います。でも実際に聴いてみれば、そんなものは軽く吹っ飛びました。最初から最後まで力のこもった、抜いたところなど微塵も感じさせない実に良い作品だと思いました。

豪華なゲストも話題となっています。これまでキャリアを共にしてきた五月天の阿信、大嘴巴の懷秋、台湾新四大天王・王力宏、そしてJJのお兄さん・林俊峰も参加しているほか、10周年記念として制作された微電影10タイトルには、映画『逆光飛翔』の張榮吉をはじめ、徐筠軒・徐筠庭兄弟、比爾賈、珍妮花、陳映之、David Barker、傅天余、廖明毅、陳映蓉ら第一線で活躍する監督が勢揃い。出演は張嘉年、曾愷玹、紀培慧、張家慧、黃健瑋、張卓楠ら実力派俳優陣に、阿信、懷秋、蔡卓妍、郭采潔らアーティスト仲間たち、2013年度の大型新人・王詩安Diana、映画『賽德克・巴萊』で馬上の軍官を演じた日本人俳優・日比野玲など錚々たる名前がズラリと並んでいて圧倒されます。

この溢れんばかりのエネルギーが10周年記念作故のものなのか、それは今後の作品も聴いてみなければ判断しかねるところですが、本作『因你而在』はまさに、JJ渾身の、と言っていい最重要の1枚だと僕は思っています。

 

蛋堡Soft Lipa『你所不知道的杜振熙之內部整修』(7月)

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本来であれば、2012年12月中旬にリリースする予定だったというこのアルバム。ところがその直前の11月24日、蛋堡SoftlipaはMV撮影中に右腕上腕部を骨折するアクシデントに見舞われ、以降のスケジュールは大幅な変更を余儀なくされてしまいました。結果、7ヶ月遅れでリリースされた本作『你所不知道的杜振熙之內部整修』は2CD、26曲入りという…サイズも内容もこれまでになく重厚なものとなったわけですが、もしもあのアクシデントが起きていなかったら、果たしてこのボリュームとクオリティは生まれ得たのでしょうか。病気や怪我に限らず、進むに進めない状況というのは往々にしてあるものですが、こうしてプラスに転ずる才能を持つ彼が羨ましく、また、そんな自分を省みて落ち込んでしまう…。とんでもない作品を出してくれましたよ、蛋堡は。責任取ってくれ!

 

李榮浩Ronghao Li『模特』(9月)

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これまで主に楽曲提供やプロデュースなどクリエイターとして活躍してきた中国・安徽省出身の男性シンガーソングライター、李榮浩(リーロンハオ)の初個人アルバムです。全10曲を収録。作曲は全て彼自身が手掛けています(10曲中6曲は作詞も担当)。1985年生まれの28歳、7月で29歳になるわけですが、アルバムは年齢に似合わずひじょうに渋い。80年代のAOR、ポップスを彷彿とさせる落ち着いた色彩で統一されていて、そのあたりプロデュースもこなす彼のこと、自分をよくわかっているなぁ…という印象です。あるいは奇をてらわず、今の自分を素直に表現した、とも言えるでしょうか。実直な人柄がにじむ1枚です。

彼が楽曲提供やプロデュースをしたアーティストは、蘇見信(信樂團)、A-Lin、趙薇、陳坤、楊丞琳、范逸臣、王心凌、曾昱嘉、林依晨、李唯楓、蔡旻佑、陸瑤、張暄祺、廖語晴、黃小琥、弦子、韓庚、張信哲、李宇春、黃雅莉、范逸臣など有名どころばかり。中でも大陸の人気俳優・陳坤Aloys Chenとは交流が深く、李榮浩は陳坤のライブでギタリストを務めたり、一緒にチャリティー活動を行なうなど互いに信頼を寄せている朋友という間柄。6曲目収録の『演員和歌手』はその2人のデュエットナンバーで、陳坤は多忙にもかかわらず朋友のためスケジュールの合間を縫ってレコーディングに駆けつけてくれたそうです。それにしても、これほどの人がなぜ今までアルバムを出していなかったのでしょう。不思議です。

 

馮翰銘Alex Fung『樂章』(11月,香港)

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1980年生まれ、香港出身。これまで陳奕迅、陳慧琳、王苑之、林一峰、容祖兒ほか大物アーティストの作品に数多く携わってきた実力派男性シンガーソングライター、馮翰銘(フォンハンミン)の初個人アルバムです。

全11曲を収録した本作『樂章』は少々特殊な作品で、C-POPの枠で括ってよいのでしょうか、作曲は全て馮翰銘によるものなのですが、詞のほうは陶淵明(約365-427)や李白(701-762)、李清照(1084-1155)、元好問(1190-1257)、楊慎(1488-1559)、納蘭性德(1655-1685)、徐志摩(1896-1931)、聞一多(1899-1946)ら歴史上の人物が詠んだ古詩を使用しています。そこにストリングスや電子楽器が大量投入され、文学と音楽、そして時間までもが渾然となったクロスオーバーな作品世界を創造することに成功しています。楽曲のほとんどは林一峰、關統安、觸執毛、盟友・王菀之、馮翰銘の奥さん・黃馨、陳奕迅、陳慧琳らフィーチャリングアーティストとのデュエットで、馮翰銘のボーカルアルバムという雰囲気はありません。しかしながら、まぎれもなくこのアルバムは、馮翰銘そのものです。彼の頭脳、コンセプトを含め、評価してしかるべき記念碑的作品だと僕は思っています。ぜひとも多くの人に聴いてもらいたいアルバムです。

 

周華健Emil Chau『江湖』(12月)

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2006年の『雨人』以来、実に7年8ヶ月ぶりにリリースされたオリジナルアルバムです。
2008年、周華健(ジョウファジエン)は羅大佑、李宗盛、張震嶽らと縱貫線SuperBandを結成し、2枚のEP作品『北上列車』(2009年)、『南下專線』(2010年)をリリース。縱貫線ワールドツアーを展開するなど、新作リリースが途絶えていた間、それまでとは違った形で音楽と向き合っていました。周華健は健康的で前向きなイメージから『陽光歌手』とも呼ばれている華人トップシンガーですが、当時はラップやヒップホップといった流行スタイルが合わず、一時作詞が出来ないほどのスランプに陥っていたそうです。そんな彼を救ったのが李宗盛でした。李宗盛に誘われて彼のコンサートにゲスト出演した周華健は、女性歌手のヒット曲を歌って拍手喝采を浴び、良い歌はやはり良いのだと気付かされます。従来の流行歌を作ることの大切さを認識した周華健は2011年、女性歌手のヒットソングをカバーしたアルバム『花旦』をリリースし、スランプを脱出。そして2013年12月、『これで引退しても悔いはない』とまで彼に言わせた本作『江湖』が誕生します。作詞を担当したのは、中華圏を代表する小説家・張大春。同世代の2人はデビュー間もない80年代の頃から面識があり、2007年に新京劇『水滸108』の脚本家と音楽監督という形で再会したのをきっかけに、このアルバムの構想を練り始めました。大成した2人だからこそ創り出せた、風格と浪漫に溢れる名盤です。

 

師子吼Simhanada『1/84000』(12月)

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これほどまでにカッコイイ般若心経を、かつて聴いたことがあったでしょうか。僕はないです。

師子吼Simhanadaは、第19屆金曲獎(2008年)で流行音樂類演奏專輯最佳作曲人にノミネートされていた章世和sehoと、S.H.E、大支、熱狗、飛輪海ほか多数のアーティストやバンドのプロデュース、楽曲提供等に携わってきた吳羽軒J. Wuによる男性2人組ユニットです。結成年はハッキリしませんが、2010年には既に活動を開始していたようです。
本作『1/84000』は、彼らにとって初めてのアルバムとなります。ユニット名の師子吼、現代では獅子吼(日本語では『ししく』と読む)と書くようですが、これはお釈迦様の説法や教説を表す仏教用語です。そしてアルバムタイトルの『1/84000』、これも仏教に由来する数字で、八万四千の煩悩、即ち無限にある煩悩の中の1つが『音楽』、ということのようです。2人はユニット結成直後から仏教をテーマとしたこのアルバムの構想を練り始め、3年を掛けて完成させました。仏教にまつわる言葉をこれでもかというほど盛り込んだ歌詞は、まさに説教。歌詞カードをみれば、もう…まるで経典です。それをヒップホップやR&Bなど、ちょっと懐かしめのテクノサウンドに乗せて歌おうっていうのだから、このバチ当たりめがっ!(笑)

でも本当に気持ちいいのですよ~。いいんですよね、気持よくて^^。

 

狙ったわけではないのですが、男ばっかりになってしまいました。自分でもちょっとビックリしています。師子吼はやっぱり外し難かったので、ここに突っ込みました。代わりに誰が落ちたのかは…秘密です^^。

こうして見ると、男性アーティストもいいですよねー。僕は今まで女性アーティストのほうを多めに買っていたのですが、これからは男性陣にも目を配らなければ、と考えさせられました。それから大陸アーティストたちにも…。

 

これでsasanoji radio Awards 2013、全候補出揃いました。

本日6月28日は、第25屆金曲獎発表の日みたいですね。今回はコチラに掛かりっきりで、実はほとんどチェックしていませんでした。新人賞候補だけはチラ…と見ましたが、誰が候補に選ばれているのか、これからチェックしてみようと思います。それと一緒に、sasanoji radio Awards 2013のほうも一気に決定しちまいましょうか~^^。

では後ほど、また現れます。