sasanoji電台【台湾ポップス専門】

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J-POPのMVも、監督の名前を入れてみない?

『J-POPのMVも…』シリーズ、第2弾です(そんなシリーズはない^^;)。

 

以前『J-POPのMVも、歌詞を入れてみない?』という記事を書きました。

日本語って本当に綺麗でカッコイイ、もっと誇りを持とうよ、J-POPのMVもTW-POPのように歌詞を画面に活かし込んでみない?、という内容の記事でした。

今回は『監督の名前を入れてみない?』です。

 

 

これは先日コッソリ公開したJ-POP Playlist【Pod-J】です。もともと自分用に作っていた非公開リストなので、中身は少々片寄っているかもしれません。ただ、自分好みの曲ばかりを集めたからこうなった…というわけでもなくて、それ以上にJ-POPメジャーのオフィシャルMVが集まらなかった、そっちのほうが寧ろ大きい。

 

もちろん日本のメジャーレーベルも自社のYouTubeアカウントでMVを公開していますが、その多くは『デパ地下の試食』のようなショートバージョンやダイジェスト、メイキングといった販促用のPVタイプで、フルバージョンはMTVなどの音楽番組で見かける程度。惜しげもなくネット上で公開するTW-POPのMVを見慣れてしまった所為か、どうしても日本のメジャーレーベルは出し渋っているように感じられてしまいます。

 

 

TW-POPでは通常、アルバムリリース前にレーベルあるいはアーティスト自身によって首波主打(1stシングル)のフルバージョンMVがYouTube等にUPされます。間を置かず第二波主打(2ndシングル)のMVがUPされることも珍しくありません。アルバムリリース後に新作MVを次々と公開していくのも台湾では当たり前のこと。
例えば昨年12月25日に1stアルバム『What's Mine』でCDデビューした福茂唱片Linfair Recordsの注目新人・謝沛恩Aggieなどは既に6本ものMVを公開していますし、場合によってはMVを集めただけでなんとなくEPアルバムが1枚出来上がってしまいそう、なんてこともあるほどです。

たしかに楽曲やアーティストの認知度を高めるのにネット上での露出を増やすことは手段として有効でしょう。現に僕はYouTubeなどをきっかけにCDを購入することがほとんどですからね。でも露出が多過ぎて、大丈夫かな~と心配になってしまうこともたまにあります^^;。

 

 

一方、日本語というローカル言語をメインとするJ-POPは巨大マーケット・中華圏を相手とするTW-POPとは異なり、現状限られたマーケットで商売をするしかありません。ネット上での露出には著作権の問題も含めてひじょうに敏感です。

昨年8月、日本レコード協会RIAJ)が12~69歳の男女約5000人を対象に行なったアンケート『音楽メディアユーザー実態調査』によると、未知アーティスト(この半年以前に購入したことのないアーティスト)のCD、または着うたフル・音楽ファイル購入のキッカケがYouTube等の無料動画配信サイトだった割合は、CD購入では前年度7位だったのが3位に、着うたフル・音楽ファイルでは3位から1位へといずれも上昇をしていました。しかし同じアンケートの中で、無料聴取層が音楽ソフトを購入しなかった理由として最も多く挙げたのが、無料動画配信サイトでの代替、という結果も出ていて、効果が見込めるなら露出を増やせばいいという単純な話でもないようです。

 

前置きが長くなりました。 本題に入ります。

TW-POPのMVに入っていて、J-POPのMVに入ってないもの…
1つは歌詞。それからもう1つ、MVを撮った【監督の名前】があります。

 

TW-POPのMVには大抵どれも画面中に監督(導演)の名前が入っています。僅か5分程度の短編映像ながら雰囲気は映画的、ドラマ的なものが多く、実際に映画やドラマの有名監督が撮った作品も少なくありません。アーティストがただ歌っているだけ、といった安っぽいMVを撮ろうものなら、寧ろそちらのほうが逆の意味で目立ってしまう状況です。

 

 

映像のプロが見れば、名前が入っていなくとも誰が撮ったか分かるそうです。それほど画(え)には監督の個性が表れるということなのでしょう。撮るほうにしても、名前を出すからには恥ずかしい画は撮れない、これは自分の作品なのだという意識はますます強くなるはずです。あの監督が撮ったMV、このMVは誰が撮ったのか、TW-POPではそこも話題の対象となります。それ故にドラマティックで印象深い、短さを感じさせないMVが多いのかもしれません。

 

一方、J-POPのMV中で監督の名前を見かけることは稀です。MTVなどでは曲名テロップの下に小さくDirector名が表示されたりしますが、一般的には誰が撮ったかなどほとんど気にしないでしょう。

僕はそこにこそPV(宣伝用ビデオ)とMV(ミュージックビデオ)の境界があるのではないか、と思っています。宣伝用なのだから短く切っても構わない、曲を聴かせたいのだから映像は二の次…。音楽ソフト購入への影響は理解出来ますが、J-POPメジャーはあまりにもMVを軽く扱い過ぎているのではないか、と。まるで無理やり90分どころか15分くらいに切り詰められた映画番組を見せられているような、ショートバージョンを多用する日本のメジャーレーベルからはそんな無粋な様子ばかりが感じられて、どうにも興ざめがして仕方がないのです。

 

それでまずは宣伝用ビデオから脱却をして一個の映像音楽作品であることをアピールするために、TW-POPと同じく、MVの中で監督名を明示してみてはどうか、と思ったわけです。

 

実際のところビジネス上でのチカラ関係や権利関係が複雑なメジャーレーベルでは難しいのでしょうが、積極的にフルバージョンを公開している中小レーベルやアーティスト、クリエイターたち(上のPlaylistに収めているような)ならば可能なのではないでしょうか。制作資金が限られている中で少しでも面白い画を撮って見せてやろうとしている彼らこそ、ぜひMVに曲名やアーティスト名、作詞者名、作曲者名と共に監督名も入れてほしい。見慣れていないと最初ヘンに感じるかもしれないけれど、一般化してくれば必ずMVの質の向上、多様化につながると思うし、そこから次のステージに進んでいくクリエイターだってきっと増えると思うのです。

 

だから試しに、J-POPのMVにも、監督の名前を入れてアピールしてみませんか?

 

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