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閻韋伶、4年ぶりに新作をリリース。

閻韋伶Olivia Yan×世外桃源Utopia『浮光掠影』(2012)

Utopia2012

 

11月10日リリース。台湾生まれ、スペイン育ちの女性シンガーソングライター・閻韋伶(ヤンウェイリン)をボーカルに結成されたポストロックバンド、世外桃源(シーワイタオユエン)の1stアルバムです。閻韋伶のアルバム作品としてはデビュー作『傻孩子』以来5年ぶり2枚目。CD作品としては2008年10月のEP『我知道』以来、ほぼ4年ぶりとなります。エレクトロ、アンビエントなスタイルをかなり強く押し出した、第19屆金曲獎の新人賞候補・閻韋伶の存在を再認識させる意欲作です。

 

首波主打、『夢』。出演しているのは閻韋伶(Vo)と許霈文(Key)、克拉克(Dr)の3名。


※MV、消えてしまいました。残念。

 

世外桃源Utopiaの始まりは、閻韋伶が2010年に結成した5人組ロックバンド・桃花源樂團Invisible Gardenということになるでしょうか。正式な成立がいつか詳細は出ていませんが、その桃花源に参加していた小護士樂團La Petite Nurseのフロントマン・許霈文(阿文)と閻韋伶が2011年夏に組んだユニットがおそらく原形です。そこに紅花樂團Red Flowerのドラマー・克拉克が加わり、桃花源とはまったくタイプの異なるトリップホップバンド・世外桃源が誕生しました。首波主打となった代表曲『夢』のMVでは阿文がキーボードを担当していますが、現在はビートメイカー・DJ Point、紅花樂團のドラマー・克拉克、同じく紅花樂團のギタリスト・大堡、主にこの3名が彼女をサポートしているようです。閻韋伶を中心に複数のバンドからメンバーが参集した、ゴージャスな香り漂うスペシャルバンドです。

 

3曲目に収録、アルバムタイトルナンバー『浮光掠影』。


※これも消えてしまいました、残念…。

 

この5年間、閻韋伶は様々なスタイルの音楽を試してきました。ソロライブではしっとりと大人っぽく、バンドスタイルでは激しく、デュオではアコースティックに、そして今、エレクトロにいます。9年前、彼女が最初に組んだバンドは、PortisheadMassive Attackのようなトリップホップに影響を受けていたそうです。原点回帰か、あるいは試行錯誤の途中の姿かもしれませんが、しばらくはこのまま思いっきり深くまで潜ってもらいたい、そう思わせられるアルバムです。

世外桃源は文化部影視及流行音樂產業局に認められ、アルバム製作補助として30萬元(約80万円)の資金援助を受けました。発行レーベルは期待を裏切らない亞神音樂Asia Museです。

 

閻韋伶(ヤンウェイリン)。1984年11月8日生まれ、先日28歳になったばかり。英語名はOlivia Yan。両親の意向で僅か7歳でスペインに留学。しかし東洋人ということで仲間外れにされたり不公平な扱いを受けるなどしたことから不登校となり、生活は荒れ、反逆児という言葉が相応しい少女時代を過ごしています。廃工場に火を付けて全焼させたこともあったとか。音楽活動を始めたのは16歳のとき。彼女にとってスペインでの生活はつらいものでしたが、何度かライブで歌ううち音楽の世界に希望を見出したようです。19歳、帰国した閻韋伶は男性ギタリスト2名とインディーズバンド・甘納許Ganacheを結成、台湾での活動をスタートさせました。

脚光を浴びるキッカケとなったのは、2007年公開の映画『六號出口』です。バンド結成から1年後、映画監督・林育賢(リンユーシェン)に発掘された閻韋伶は、この物語の鍵となるパンク少女・小薇役に大抜擢(芸名は辰伶Olivia Chen)。複雑な内面を抱えた少女の等身大の演技と、ED主題歌、劇中歌となった自作のスペイン語曲で注目を集め、同年11月、曹格、張峰奇ら有名アーティストらを楽曲提供に迎えた1stアルバム『傻孩子』でCDデビューしました。翌2008年3月にはスペイン語の自作曲を加えた慶功版も追加発売され、第19屆金曲獎では最具潛力新人獎(現在の 最佳新人獎)の候補にも選ばれています。

 

Unofficial

 

また、同性愛を描いたアルバムタイトル曲『傻孩子』でも話題を呼びました。閻韋伶は自身が同性愛者であることをカミングアウトしていますが、宋世堯が書いたこの曲は彼女の体験を基にしたものです。アルバムデビューする4年ほど前(帰国して間もなく?)、閻韋伶は同じ職場で働く女性外交官と同棲をしていました。恋人の赴任先である南米にも同行しましたが、半年後に破局。傷心のうちに帰国しています。

 

閻韋伶本人が出演したMVはそのストーリーをイメージさせるもので、センセーショナルな映像(共演女優・蔡裴琳とのキスシーン)が含まれることから放送禁止に。現在も第三者がUPした非公式の映像がいくつかの動画サイトで見られるのみです。

Unofficial

 

2008年10月リリースのEP『我知道』収録の2曲は自身が作詞作曲を手掛けました。タイトル曲『我知道』は2009年公開の映画『夏天協奏曲』(導演:黃朝亮)の主題歌に採用されています。


※消されてますね…。

 

閻韋伶はソングライターとしての才能も豊かです。1stアルバムでは周りを固めていたベテラン勢提供の楽曲よりも、むしろ彼女が書いた『Be with me』や慶功版収録の『Little Baby 早安 小寶貝』のほうが僕は聴いていて気持ちがよかった。この『我知道』もジ~ンと沁みました。EPをリリースしたあと閻韋伶は再びインディーズ活動に戻ってしまうのですが、ひょっとすると自分がやりたい音楽と周りから要求されるスタイルの違いに違和感を持ったのかもしれません。2009年の様子については蛋堡Softlipaのアルバム『Winter Sweet』で共演した以外ほとんど情報が出てきませんが、地道にライブ活動を続けていたようですね。

 

2010年、閻韋伶は世外桃源の前身となる5人組ポストロックバンド・桃花源樂團Invisible Gardenを結成します。メンバーは四分衛樂團Quarterbackのギタリスト・虎神とドラムの緯緯、キーボードは小護士樂團La Petite Nurseから許霈文(阿文)、そしてベースは彼女が最初に結成したバンド・甘納許Ganacheの小岡が務めています。2月にはライブの告知が出ていますので成立は1月か、それ以前のようです。桃花源としての活動は翌2011年夏まで続きます。

桃花源活動終了の直前、閻韋伶と許霈文は2人でアコースティックライブを行なっていますが、おそらくそれが世外桃源の原形でしょう。正式な成立がいつなのか、2011年10月の大彩虹音樂節には紅花樂團のドラマー・克拉克を加えた3人組・世外桃源として既に出演していて、ここではもう打ち込みを多用したトリップホップアンビエントスタイルを前面に出していますね。

 

桃花源、世外桃源は、これまでクリエイターズサイト・StreetVoiceなど、主にネット上で作品を発表してきました。この『Truth』は今年9月にStreetVoiceが製作したコンピレーションアルバム『StreetVoice夏季選輯』に収録されている曲で、残念ながら『浮光掠影』には入っていません。映像集団・MixCodeによるオリジナルMV、ズシ~ンと胸に響く傑作です。

 

ビートメイカー・DJ Point、紅花樂團のギタリスト・大堡が参加したのはごく最近のようですね。こちらは先日UPされたばかり、樂人Session版『夢』と『愛我你會死』。出演は閻韋伶(Vo)、克拉克(Cajon)、大堡(Gt)の3名。アコースティックバージョンの『夢』もいいですね~。

 

世外桃源にはいろいろなところからミュージシャンが集まっています。先日ピックアップしたJuzzy Orangeのビートメイカー・Tower da Funkmasta(小陶)、Duzs(達子)の2人もどうやら関わっているようですね。閻韋伶は四分衛、小護士、紅花樂團それぞれのライブにもたびたびゲスト出演していて、やはり閻韋伶Olivia Yan Projectと呼んだほうが似合いそうな雰囲気です。

 

『浮光掠影』の予約特典は、彼女が描いた『Dream Map』というDVD付きの絵本です。これはそもそも今年8月に600部限定のチャリティー作品として発表されたものだったはずですが、それをオマケに付けちゃったのかな。目標額の10萬元は既にクリアしているみたいですけどね。

 

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