sasanoji電台【台湾ポップス専門】

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台湾では国が積極的に音楽産業を支援しているよ。

台湾のエミー賞『金鐘獎』(テレビ,ラジオ)、そしてこのブログ中にも度々出てくる台湾のグラミー賞こと『金曲獎』(音楽)は、行政機関の1つである『文化部影視及流行音樂產業局』(旧・新聞局)、つまり中華民国政府が主催をしています。先月26日には金鐘獎の授賞式が行なわれ、陳柏霖(チェンボーリン)が最優秀主演男優賞、林依晨(アリエル・リン)が最優秀主演女優賞に輝きました。今月24日には旧・新聞局が設立した電影事業發展基金會主催による台湾のアカデミー賞『金馬獎』(映画)の授賞式も控えています。選考基準などへの不満もあるようですが、金鐘獎、金曲獎、金馬獎ともに台湾国内だけでなく、アジア華人社会に大きな影響力を持つ賞として注目をされています。

 

今年5月、台湾中央政府の大規模な組織改編が行なわれました。これらの賞を主催していた新聞局は閉局となり、権限を大きく増した『文化部』が新たに誕生。新聞局が行なってきた放送、映画、音楽関連業務は『文化部影視及流行音樂產業局』に引き継がれ、今後さらに文化クリエイティブ産業の国際市場への輸出を活発化させていく方針のようです。『政治は文化のために奉仕すべき』、文化部はこの理念のもと、政治の影響を受けず、中央政府が国家を運営するうえで無視出来ない存在となることを目標としています。

 

台湾も日本と同様音楽業界は不況ですが、レーベルやアーティストへの金銭的なサポート、インディーズの創作コンテストを主催するなど、国が文化産業促進政策を積極的に行なっている姿が目立ちます。台湾は九州サイズの島国ながら巨大マーケット・中華圏を抱えているという点で、マーケットが国内に限られる日本よりも恵まれているのは間違いありません。業界が拡大する余地はまだまだ残っているということでしょう。

 

国家戦略としての文化産業促進・輸出といえば韓流が有名ですが、台湾が行なっているサポートは、押し売りの如く売りつける韓流商法とはまったく異なる、まさに『支援』という言葉に相応しいものです。

例えば今年度の行政院新聞局による補助政策『旗艦型流行音樂製作與整合行銷產業促進計畫』には35件の申請があり、厳しい審査の結果、17件34企画に対して合計で2億7900萬元(約7億5000万円)以上もの資金援助が行なわれました。
このうち1200萬元(約3200万円)を獲得したのは、倪安東、Ella陳嘉樺、林宥嘉、S.H.E、嚴爵、羅志祥、張芸京を含む3件12企画。徐佳瑩、女孩與機器人、韋禮安、萬芳、林凡、盧廣仲を含む8件18企画には各600萬元(約1600万円)。先日デビューしたばかり、山東Sadonの1stアルバムも350萬元(約950万円)の資金援助を得て製作されています。

この支援はメジャーアーティストに限らず、インディーズバンドに対しても行なわれます。規模はかなり小さくなりますが、『補助樂團錄製有聲出版品』として今年度は計40バンドに各30萬元が支給されました。今年新作をリリースしたhush!樂團、Juzzy Orange、Mary See the Future、Oli杭士琁+Band、PiA樂團、SELFKILL、來吧!焙焙!、Astro Bunnyなどもこの資金援助を受けているバンド、ユニットです。

そのほか、海外遠征の資金補助なども行なっています。今年度の『補助國際流行音樂活動及赴海外研習』では銀巴士樂團、閃靈樂團を含む28の団体、アーティストに対し、10萬元から100萬元の助成がされました。紅花樂團と碎紙花樂團は先月日本でライブを行ない、旺福は今月東京で開催される『2012日本Mods Sunday』への出演が予定されています。

 

これはほんの一部です。日本では音楽離れに歯止めがかからないと嘆き、政府は瑣末な規制や法整備にばかりチカラを入れていますが、ホントに音楽が好きな人たちはそんなものが根本的な解決にならないことくらいわかっていました。政治がどう映画や音楽など国内文化産業を支えていくか、台湾の関わり方から学ぶところも大いにあるのではないでしょうか。