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小白兔唱片のリーダーバンド・阿飛西雅、4年ぶりにアルバムをリリース。

阿飛西雅Aphasia『提去買藥仔』(2012)

Aphasia2012
ごく普通のCDケースタイプでした。何故か懐かしく感じました^^。

 

台湾は九州サイズの島国ながら、700を超えるレーベルが存在するという、かなり特殊な音楽業界構造となっています。その多くはインディーズで、中でも小白兔唱片White Wabbit Recordsは自前の録音スタジオとショップを持ち、海外アーティストの招聘やライブの運営も行なう、台北あたりで公館THE WALLインディーズレーベルと尋ねればおそらく誰もが小白兔唱片WWRと答える、台湾屈指の現場密着型ポストロックインディーズレーベルです。

今月初め、その小白兔唱片に所属するベテランポストロックバンド・阿飛西雅Aphasiaが、2008年の『失語的鱷魚社會』以来じつに4年ぶりとなる新作、2ndアルバム『提去買藥仔』をリリースしました。 ※小白兔唱片のショップでは8月31日リリース。

 

…と、いつもならここで新作MVを紹介するところですが、これまでにオフィシャルで公開されている阿飛西雅のMVは極端に少なくて、残念ながら今作に関係するものもナシでした…。仕方がないのでiNDIEVOXの試聴用ウィジェットを貼り付けておきます。僕は使ったことがないのですけど、こちらからダウンロード購入も可能のようです。 ※iNDIEVOXの試聴用ウィジェットが消えてしまったので、Spotifyを貼り付けておきます^^。

 

阿飛西雅の現メンバーは、ギターの維尼(張勝為)と小花(吳逸駿)、ドラムのYonker(廖洋)、そして紅一点・ベースのKK(葉宛青)の4名。前身は1997年に蔡宜銓、吳逸駿、KKら3名によって結成されたポストロックバンド・妮波寺樂團Nipplesです。その後、幾度かメンバーの増減、交代があり、Yonkerが加入した2007年にバンド名を阿飛西雅Aphasiaに改めました。

その阿飛西雅の女性ベーシスト・KKこそが、小白兔唱片の創設者です。

 

小白兔唱片と阿飛西雅についてはこのブログ内でも、同レーベル所属の女性シンガーソングライター・鄭宜農Enno Chengやポストクラシカルバンド・Cicada、シューゲイザーバンド・川秋沙Goosander、ポストロックインストバンド・Selfkillをピックアップしたときに少し触れたことがあります。

阿飛西雅が台湾インディーシーンで果たした役割はホントに大きくて、小白兔唱片と一緒にどこかでまとめておきたいなぁと思っていました。でもなかなか新作を出してくれなくて。今回やっと、というわけです^^。

 

インディーズレーベル・小白兔唱片WWRは、1999年に妮波寺(現・阿飛西雅)の女性ベーシスト・KK(葉宛青)によって設立され、ライブハウス《聖界》の運営などを行なっていました。2001年に録音スタジオ『NOIZ録音室』をオープン。2002年、アメリカのポストロックバンド・Explosions in the Skyを招聘し、同年、台湾のインディーズバンド・薄荷葉The Peppermints、壞女兒Bad Daughterのアルバムリリースをもってレーベルは正式稼働します。翌2003年、妮波寺は1stアルバム『James' Autumn』をリリース。同年11月、台北・公館地下にライブハウス《THE WALL》がオープン。小白兔唱片も拠点となるショップを同じ地下フロアに出店し、これで現場から製作、販売に至る独自のルートが出来上がりました。

 

The_wall_1 The_wall_2 The_wall_3

 

The_wall_4THE WALL公館は、ヘビーメタルバンド・閃靈樂團ChthoniCのボーカル・Freddy(林昶佐)、春の音楽フェスティバル・春天吶喊Spring Screamの仕掛人・Jimi Moe、インディーズバンド・董事長樂團The Chairmanの阿吉(吳永吉)らが2003年に設立したキャパ600人ほどのライブハウスで、毎夜ジャンルを問わず国内外のアーティストやバンドが出演する、台湾インディーズの情報発信基地となっているライブスポットです(現在は高雄のTHE WALL駁二も稼働中)。ここで台湾デビューを飾った日本人アーティストも数多く、先日9月20日にはKREVAが出演したばかり。あす9月29日には、DJ CHIKA a.k.a. INHERIT、mic.b a.k.a 73Pike Set、DJ KENTAら日本人DJも参加する『JAPAN LOVE TAIWAN Vol.2 - Feel Soul Good 台日嘻哈盛會Ⅱ』と銘打ったライブが開催される予定です。

 

2007年、阿飛西雅は台湾を代表する映画監督・鄭文堂(チェンウェンタン)作品『夏天的尾巴Summer's Tail』でBGMを担当します。この映画で主演を務めていたのが鄭文堂監督の娘さん、つまり現在小白兔唱片に所属するシンガーソングライター・鄭宜農で、彼女が劇中で歌っていた自作曲も阿飛西雅の楽曲と共に映画のサウンドトラックに収められています。

 

鄭宜農のスクリーンデビュー作『夏天的尾巴 Summer's Tail』の予告編。当時19歳。

 

阿飛西雅としての1stアルバム『失語的鱷魚社會』がリリースされたのは翌2008年。その中の1曲『深春』のMVは、鄭文堂が監督をしています。2曲目収録の『深春』と、3曲目収録の『戰車』。

 

The_wall_5ところで今年1月、台湾インディーズファンにとってはかなり残念なニュースが入ってきました。公館の地下フロアで9年間に渡ってTHE WALLと共に歴史を刻んできた小白兔唱片の本拠地・THE WALL店が、2012年1月19日、惜しまれつつも閉店となってしまったのです。小白兔唱片の本部は現在、2009年にオープンした師大(国立台湾師範大学)店に移っています。KKが語ったところによると、THE WALL店はライブが開催される日は混雑して入店しづらく、店内も狭い。そもそも師大店と距離が近いうえ、スペース的にも立地的にも師大店のほうが利用しやすいことから、時勢もあって閉店を決めたとのこと。KKは元々お店を出す場所として師大のほうを考えていたらしいのですが、迷っているうちに候補地が売れてしまい、THE WALL LIVE HOUSEがオープンするということで同じ公館地下に出店したのだそうです。

 

2012年9月、ようやく阿飛西雅の2ndアルバムがリリースされました。
彼らが活動の中心としているのはあくまでライブ、現場です。メンバーそれぞれレーベル所属アーティストのサポートやプロデュース、自身のバンドとの掛け持ち、営業等で忙しい中よく頑張ってくれました。話によると半アドリブスタイルで録ったらしい。なかなかスリリングな作品になっていますよ。

でも単発でいいので、ときどきMVをUPしてくれるともっと紹介しやすいんだけど^^。

 

今回はちょっとイレギュラーな取り上げ方になってしまいました。

小白兔唱片はホントに大好きなレーベルです。写真で見えるショップの様子やウェブサイトからも、彼らの音楽スキスキ具合がビシビシと伝わってきて…。

いま日本も台湾もレコード(CD)業界が不況と言われていますが、小白兔唱片のような独自の販売ルートに特化したコンパクトスタイルこそが、これから生き残っていくヒントとなるかもしれません。

先日、カペラシスティーナのCEO・関口朋紀氏が設立したニューレーベル・afiresoundから、日本の女性クラブシンガー・AWAの1stシングル『愛の行方 ~Love Unlimited~』がリリースされました。僕も予約購入しましたが、これから日本でもこういったスタイルのレーベルが増えてくるのではないでしょうか。そういう視点で見れば、台湾のインディーシーンは日本の先を行っているように思えます。

 

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小白兔音樂城 White Wabbit Records - Online Music Shop

 

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