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火星熊、アルバム出るよ~。

火星熊Mars & Coara『同名創作專輯』(2012)

Mars-coara2012

 

珍妙な名前のユニットが現れました~^^;。

 

火星熊(フォシンシュン)、英語名はMars & Coara。阿爾發音樂Alfa Music所属の火星Marsと熊Coaraによる女性デュオです。

6月22日、火星熊は亞神音樂Asia Museから1stアルバム『火星熊同名創作專輯』をリリースします。インストバージョン4トラックを含む全14曲入りのフルアルバムです。

 

首波主打、『青玉案』。

 

色モノかと思ったら、けっこう正統派でしょお~^^。

『青玉案』とは、特定の旋律を持った67字からなる宋詞のスタイルです。南宋時代の政治家で優れた詞人でもあった辛棄疾(しん・きしつ,1140–1207)の『元夕』はとくに有名で、ご存知の方も多いと思いますが、中国の検索サイト『百度』の社名はその『元夕』の一節、『衆里尋他千百度』(群衆の中、想い人を探すこと数限りない…私訳^^;)に由来することでも知られています。

首波主打となったこの火星熊版『青玉案』では、そんな切ない心情をモチーフに現代の歌として蘇らせています。韻を踏んだ歌詞は心地よく、『元夕』にあったフレーズもアチコチに散りばめられていますね。

 

彼女たちのキャッチフレーズは『萌太奇女孩』、つまり『モンタージュガール』。

理知的でクールな雰囲気のシンガーソングライター・火星と、アイドルっぽいビジュアルでダンスもこなすボーカルの熊。全く違う2つの個性が出会い、ポップス、ジャズ、ロック、クラシックなど様々なジャンルの音楽を『蒙太奇』(モンタージュ)したようなスタイルが誕生した。だから、『萌(蒙)太奇女孩』。

でも安っぽくはない。それはたぶん火星が創り出す楽曲のチカラだ。文学的でとても奥深い。MVに出てくる歌詞を眺めているだけでは歌のイメージが掴めない。難しい。なかなか世に出づらいタイプのアーティストかもしれない。それを華やかに包んで魅せてくれているのが、熊だ。

熊もシンガーとして1人で出るのはちょっと難しかったと思う。デビュー出来たとしても一過性のアイドルで終わっていたかもしれない。彼女がしっかりと立てるのは、やはり火星の引力があってこそだ。会社側の戦略で生まれたユニットだったとしても、互いを支え合う良い組み合わせだと思う。

このユニット、長続きしてくれればけっこう独特の世界観を出してくれそうな気がする。先日アルバムデビューした香港の女性デュオ・Robynn & Kendyが直球なら、こっちは台湾の魔球だ。

 

それにしても火星熊よ…、この名前でよかったのか?

 

2人の詳しいプロフィールはまだ公開されていません。

楽曲創作&演奏・ボーカル担当の火星Marsこと林理惠(日本人ではないみたいです)は高校時代から数多くの創作音楽コンテストに参加、大学では自分のバンドを結成し音楽活動をしていました。阿爾發音樂所属の現在は男性2人組となってしまったユニット・南拳媽媽(ナンチュエンママ)のメンバー・宇豪とは大学の同級生だそうで、彼が1981年生まれということですから、おそらく彼女もその前後ではないでしょうか。理惠と宇豪は大学卒業後、阿爾發音樂でアルバム製作など裏方をしながら音楽のノウハウを学び、宇豪は2004年、当時レーベルに在籍していた周杰倫Jay Chouのプロデュースで南拳媽媽としてデビューをしました。翌2005年リリースの2ndアルバム『2號餐』には理惠も1曲、『橘子汽水』の作詞で参加をしています。また、ジャズバンドに加入してライブなども行なっていたようです。

メインボーカルを務める熊Coaraこと黃教惠はちょっと変わった経歴の持ち主です。このユニットを結成する前、彼女は俳優・劉畊宏Will Liuの紹介で日本でも有名な台湾のトップマジシャン・劉謙Lu Chenのアシスタントガール(魔術女郎)を務めていて、海外公演など大きなステージをいくつも経験しているそうです。

劉謙と教惠は共に敬虔なクリスチャンで、同じキリスト教団体『新生命小組教會・大九牧區』の同じ小斑に所属しています(ひょっとすると2人は同郷?)。メンバーページにはまだ子供っぽい教惠の写真が出ていますが、この頃からもう『無尾熊』(コアラ)のニックネームで呼ばれていたのですね。その小斑のリーダーがVIVIこと女優の王婉霏、そして3つの小班を束ねているのがVIVIの旦那さんである劉畊宏でした。教惠は劉畊宏にとって妹のような存在で、彼女がジャズダンスグループでダンサーをしていることも、表現力が豊かなことももちろん知っていました。それで彼女を劉謙に推薦したようです。

でも教惠本人は音楽への情熱のほうが強く、当初劉畊宏は自分のところの新人として彼女と契約するつもりだったらしいのですが、ならばレコード会社に入ったほうが道が開けるとだろうとそちらに進めるよう援助したのだそうです。なぜ阿爾發音樂だったのかはよくわかりませんが、劉畊宏自身歌手であり、かつてレーベルに所属していた親友・周杰倫や溫嵐Landy Wen、創設者で歌手の吳宗憲Jacky Wuらに詞を提供した作詞家でもあるので、そのあたりの人脈からでしょうか。

阿爾發音樂は周杰倫を発掘したレーベルとして知られていますが、2007年に彼との契約が満了して以降は所属する有名アーティストの離脱が相次ぎ旗下芸人はほぼ皆無。現在の主力は、周杰倫が立ち上げたレーベル・杰威爾音樂JVR Musicから2010年に出戻った南拳媽媽のみという状態でした。昨年、阿爾發音樂は移転をすると共に業務形態を製作及びブローカー会社に変更。火星熊は新生・阿爾發音樂から生まれた初めてのアーティストとなります。

2人の売り出しについては、彼女たちが出演する連続モノのショートドラマを制作しネットTVで無料放送したり、マイクロソフトとタイアップしてウェブサイト上でMVを流すなど、映像を絡めた、ひじょうに効果的なイメージ戦略が採られています。

 

コチラがそのドラマ、『火星無尾熊』(全5回)とその予告編。共演は張睿家Ray Chang。

 

僕の“ビビッとレーダー”はいったい何に反応しているのだろう…、自分でもよくわからない。

最近デビューした新人ということでいえば陳芳語Kimberleyもいるけれど、ビビッと来なくてスルーしてしまった。でも火星熊には反応した。楽曲の優劣とかではないのだと思う。何か好みの音の響きとかリズム、アレンジ、アーティストが醸し出す雰囲気…、そんなものでもあるのかな?

う~ん、わからない…^^;。

 

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