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迸るエネルギーと可能性、子安聖皓。

子安聖皓ZA-SH『然後,我們懂了』(2011)

zash2011

 

子安聖皓(ズーアンシェンハオ)…という名前の人ではありません。吉他手・子安(ズーアン)と主唱・聖皓(シェンハオ)、2人の若手シンガーソングライターを中心とするユニット、男性5人組ロックバンドです。英語表記はZA-SH。以前ピックアップした呂莘Connie、蔡孟臻Mon Mon、伊雪Eisheiらと同じ独立系レーベル・喜國娛樂Cheer Musicに所属するアーティストです。

本作『然後,我們懂了』は、昨年9月に代理発行レーベル・禾廣娛樂からリリースされた彼らの初EP作品(4曲入り)。ベースとなるサウンドはアコースティックですが、エレキギターなど電子楽器が違和感なく融合されて、優しさを感じさせる聖皓のクリアなボーカルは、ときに熱さと鋭さを伴なって沁み入ってきます。若々しい疾走感が印象的な、注目しておいて間違いなしのロックユニットだと思います。

 

2曲目に収録の『定義完美』。このMVの撮影は台湾北部・新北市金山にある廃工廠で行なわれました。監督を務めたのは台湾初の本格ホラー映画『絶命派對』(2009年)で知られる新鋭・柯孟融Kevin Ko。首波主打『然後,我們懂了』のMVに続いて担当しています。

 

このMVの撮影中、子安はちょっと不思議な体験をしたそうです。

撮影隊一行は金山に向かう途中激しい雷雨に遭遇しましたが、到着する頃にはきれいに晴れ渡り、昼の撮影部分は滞ることなく終了。やがて陽は落ちて夜の部分の撮影が始まりました。辺りは闇に包まれ、照明に照らされた場所以外はもう何も見えません。その暗闇の中で子安は三度、何者かに左腕を叩かれたのだそうです…。初めは虫でも当たったのだろうと払いましたが、すぐにまた叩かれた。怖くてそちらを見ることが出来ずにいると、同じところを三たび叩く者がいる…。だれかメンバーのイタズラか、と振り向いてみると…

暗闇の中に手の平だけが、浮いていたそうです…。

そのとき子安は皆に言う勇気がなくて、撮影終了後会社に戻って話をしたところ、他のスタッフもたしかに奇妙な感じがした…と。困難な場所での撮影であったにもかかわらず、順調すぎるくらいスムーズに事が運んだのがまず妙だった。しかも撮れた映像はこれ以上ないほどの素晴らしい出来…。

だから子安聖皓のメンバーたちも楽観的に考えることにしたそうです。義理人情のある好兄弟(幽霊)が、二度ならず三度自分たちを押してくれたのだ。このEPはきっと良い成績を収めるに違いない、と。実際この作品は高雄を中心にヒットして一時入手困難な状況にもなっていたようですから、あながちそれも間違いではなかったのかもしれません。

 

林子安、呉聖皓ともに高雄の出身。地元・道明中學(高校)の同級生で、聖皓をボーカルにバンドを組んで音楽活動を行なったりしていました。生年月日等詳しいプロフィールはまだ出ていませんが、2007年、彼らが高校3年生のとき、校内バンドコンテストに出場し3位になったとの記録が残っています。

また子安は2011年5月、陳珊妮Sandee Chanや陳綺貞Cheer Chen、蘇打綠Sodagreenらを輩出したことでも知られる学生音楽コンテスト・金旋獎に、インディーズバンド・玫瑰花牛肉Rose and Beef(2010年結成)のボーカルとして出場、樂團創作部門のチャンピオンに輝いています。そのあたりから計算すると、2人ともまだ23、4歳といったところでしょうか。

彼らは高校時代から数多くのコンテストに出場し、ライブ出来る場所があれば地方へも積極的に出かけて行くなど、音楽にドップリとハマった学生生活を送っていたようです。

 

玫瑰花牛肉は現在もライブをメインに精力的に活動中。メンバーは子安(Vo,Gt)、小B(Gt)、以諾(Ba)、紅一点・煎煎(Cho)、阿丁(Dr)の5名。バンド名はちょっと笑ってしまうけれど、音は本気です。かなりイケます。

 

所属レーベルとなる喜國娛樂が子安と契約したのは2011年ですが、彼の存在自体はその3年前から既に知っていたそうです。コンテストにソロで出場しているのを見て以来ずっと彼に注目をしていたとのこと。絶えず努力を続けている姿、成長した彼を見届けての正式契約だったようです。

子安聖皓が正式に結成されたのはいつ頃なのでしょう、子安が金旋獎に出場したのが5月、クリエイターズサイト・StreetVoiceに『子安聖皓』の名前が登録されたのがEPリリース直前の8月ですので、その間ということでしょうか。メンバーは子安と聖皓の2人に、玫瑰花牛肉からそのまま小B、以諾、阿丁がスライドしてきた形。やはり聖皓をボーカルに据えた子安とのユニット…と言ったほうがよいのかもしれません。バンド名については討論の結果、子安が『高雄の神のお告げ』であるとして『子安聖皓』に決めたとのこと。本当のところは『原点回帰』、『自己紹介や説明がし易い』などの理由もあったようです。

 

首波主打、1曲目収録の『然後,我們懂了』と、3曲目収録の『他和她之間的事』。共に聖皓の作詞、子安の作曲。『然後,我們懂了』のMVを監督したのは『定義完美』と同じく柯孟融です。

 

聖皓についての話はあまり出てきていませんが、2011年1月にUPされた玫瑰花牛肉のMVにチラ…と名前が見えたので、学生時代と変わらず2人は身近なところで音楽活動をしていたのでしょうね。

彼の魅力は何と言っても清々しさが漂うストレートなボーカル…ですが、創作能力にも非凡な才を見せています。同僚女性シンガー・伊雪が今年4月にリリースしたEP『春雨』に提供した2曲『空轉』と『還是一樣的愛情』は、伊雪の泣きのボーカルとも相まって、震えるくらい上質のナンバーに仕上がっています。これまでの伊雪の作品はレーベルのボス・周世暉Terry Chouによる台湾語ポップスの色がやや目立っていたので聴き手を選ぶような雰囲気もありましたが、聖皓がそこに新風を吹き込んでくれました。周世暉の曲も1曲入っていますが、心なしか聖皓の色に寄せたように若々しく聞こえます。

 

作詞作曲は聖皓。4曲目収録の『陪著我離開』。

 

聖皓、子安ともに身長は180cm近くあって見栄えが良い。とくに長く髪を伸ばした聖皓はパッと見、女性と見紛うくらい。これはデビューにあたっての会社のイメージ戦略だそうで、長髪だったのを切らずにそのまま活かしたとのこと。実際、デパートで男子トイレに入る彼を見た女子高生が大騒ぎをしたり、地下鉄で移動する際はいつもマスクを着用しているそうですが、回りでヒソヒソ声が絶えないなど、面白い話題を提供していたようです。本人も会社に戻って大笑いしながら状況報告をしていたとか。

 

今年1月、iNDIEVOXに新曲のDemoが2曲UPされていました。EPでいいから新作を出してくれると嬉しいのですけれど…。とにかく迸るエネルギー、若さと可能性を感じさせてくれるユニットです。今からチェック入れときましょう、玫瑰花牛肉も一緒に^^。

 

 

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伊雪。(2012年3月29日)