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音楽医師・Oli、メジャーデビュー。

Oli杭士琁+Band『首張創作專輯』(2012)

oli2012

 

それにしても亞神音樂Asia Museは興味深いアーティストを次から次へと…。

杭士琁(ハンシーシュン)、英語名はOlivia Hang。5月18日に本作でメジャーデビューする台北出身の新人女性シンガーソングライターです。愛称はOli。生年月日は未公表ですが、さそり座の女、だそうです^^。

Oliに付けられた冠は“音樂大夫(ミュージックドクター)”。それからもう1つ、“女・羅大佑”の異名も与えられました。もちろんこれらは彼女の経歴に由来するものですが、そのあたりからして既に個性派の匂いがプンプンと漂っています。

 

アルバム収録曲ではありませんが、まずは1曲。楊宗緯Aska Yang『懷珠』と楊丞琳Rainie Yang『仰望』をリミックスしたカバーPVを。このPVのOPとEDに使用されているのはアルバム2曲目に収録のオリジナル曲『Go Go Fighting』です。

 

女性が歌う『懷珠』もイイもんですねー。この2曲は僕の個人的2011年最佳年度歌曲の1位、2位でもあるお気に入りなのですが(隠れ2位はShinSight Trio & Soft Lipa『Moonlight Sunrise』)、あまりの縫合技術の見事さに鳥肌が立ちました^^。まさに“音樂大夫”の面目躍如。でもこの冠は、そういった彼女の音楽技術的な部分から付いたものではありません(加味はされているかもしれませんが)。

 

Oliは台北で生まれ、7歳のとき両親と共にオーストラリアに移民しました。最終学歴はオーストラリアの名門・アデレード大学医学部卒。そう、Oliは外科医の免許を持つお医者さんなのです。ところが4年前、その誰もが羨む道を放棄して、Oliは一人生まれ故郷である台湾に戻り音楽の道に進むことを選びました。

彼女は生まれながらの反骨的精神の持ち主、医者であると同時に、Rockerでした。自らが美学とするのは、バイオレンス、頽廃…。生・老・病・死と直面する場にいたことが、哲学的思考、楽曲創作の原動力となっているようです。

2008年3月、クリエイターズサイト・StreetVoiceに登録、作品のUPを開始しますが、当初台湾に基盤を持っていなかった彼女の生活はかなり苦しかったそうです。1日1食、預金残高はわずか5元となり、冬の寒さに耐えかねてドライヤーで暖を取ったこともあったとか。ピアノの先生、英語の家庭教師、アテレコ、通訳、ラウンジ歌手などをしながら練磨を重ね、2009年、仲間たちと出場したアマチュアバンドコンテスト・創作天團 Super Bandで優勝。そして今年、台湾に戻って1000日余り、Oliはメジャーデビューすることとなりました。

 

アルバム3曲目に収録、自作曲『那一年』。

 

彼女と似た経歴を持つ男性アーティストがいます。音楽的な時代は二世代ほど前になりますが、最近も2008年に李宗盛Jonathan Lee、周華健Emil Chau、張震嶽Ayal Komodらとスペシャルバンド・縱貫線SUPER BANDを結成し、ヌルくなった音楽界に喝を入れるが如くオヤジの底力を魅せつけていました。それが反逆のアーティスト・羅大佑Lo Tayouです。

羅大佑は医者の家庭に生まれ、台北の私立医科大学・中国医薬学院(現・中国医薬大学)を卒業したエリートですが、82年のデビュー時から政治や社会を風刺したメッセージ性の強い作品を歌い続けていて、日本の70年代とフォークソングの関係と同様、その世代の人々にとってはシンボル的な存在のシンガーソングライターなのだそうです。

医学部出身ということでは、第19屆金曲獎(2008年)で新人賞を受賞した女性シンガーソングライター・蕭賀碩Debbie Hsiaoもいますが、彼女には反逆のイメージはありません。“女・羅大佑”の異名を与えられたのは、おそらくOliが初めてではないでしょうか。本人が納得しているかどうかは別として^^;。僕はこんな冠、初めて見ました。

 

今のところYouTubeにUPされているPVは他アーティストの楽曲をカバーしたものがほとんどで、まだ『面白そう』という段階ではありますが、行政院新聞局が『101年優秀樂團補助』対象に選んでいますし、注目しておきたいアーティストの1人です。

 

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