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利得彙は今、しっかりとここに立っている。

利得彙Freda Li『等』(2012)

freda-li2012

 

利得彙(リーダーフイ)。1985年生まれ。英語名はFreda Li。2009年にデビューした女性シンガーソングライターです。

2月7日、利得彙は1stアルバム『花痴』から1年9ヶ月ぶりとなる新作、2nd EP『等』をリリースしました。彼女の名義ではありますが、プロデュースを担当したギタリスト・沈志方とのユニット、利得彙×慢慢說樂團による作品で、現在はライブもこのユニットで行なっています。中文歌3曲とInterlude的な18秒のモノローグを含む全4トラックのインディーズEPです。

 

eTV星聞網から、2月7日に河岸留言で行なわれたEP『等』發表音樂會の映像。

 

ただし最新作ではありますが、彼女の友人知人らの援助無くしては完成しなかった、まさに手造りと呼べる独立作品で、プレス枚数も少なく日本からの購入は今のところ難しそうです。もし台湾に行かれる、あるいは知人がいらっしゃるなど入手する機会のある方、いかがでしょうか。なおダウンロードサイトからであれば日本でも音のみ購入可能です。

 

新曲『等』。『キラキラ星』のような雰囲気。だからちょっと五月天の『知足』にも似ているかもしれない。

 

EP『等』にはタイトル曲『』のほか、『你在找誰?』、『這深夜』の2曲と、モノローグ『stop and wait』が収録されています。

 

2006年、利得彙はバラエティ番組『快樂星期天』が企画した大学対抗歌唱コンテスト『校園歌喉戰』に靜宜大學代表として出場。成績は13位と微妙でしたが、本選出場者たちによるコンピレーションアルバムに参加、注目を集める機会を得ました[*1]。

2009年には台北の独立系レーベル・擎天娛樂Skyhighから2曲入りEP『不要你的我』をリリース。この2曲は共に同レーベル所属の男性アーティスト・吳听徹の作詞作曲によるアンプラグドスタイルが似合いそうなバラードで、タイトル曲『不要你的我』は泣けそうなくらいジ~ンとくる良品です。また2010年4月、我董娛樂iseedmusicからリリースしたダウンロードシングル『愛陪』も気持ちのよいフォークロックで、河岸留言ほか台湾各地でたくさんのライブを行なうなど、彼女らしいスタイルが出来上がったかに見えました。

 

ところが同年5月にリリースされた1stアルバム『花痴』(擎天娛樂)では、それまでのアコースティックな雰囲気から外見、音楽スタイル共に一変。プロデュースには吳听徹が携わっていましたが、髪を赤く染め、いかにもアイドル然としたポップなナンバー、じっくりと聴かせるバラード、また自らギターを弾いて見せたりと、タイトルどおり色とりどりの花をコレクションしたような摩訶不思議な作品となっていました。このアルバムをリリースした直後、彼女はオーディション番組『超級偶像』第3シーズンにPK戦の挑戦者として登場するのですが、いかにも宣伝っぽくて、そのとき審査員を務めていた男性シンガーソングライター・陳國華が露骨に嫌な顔をしていたのが印象的でした。

製作サイドの要求であれ、泥まみれになるようなハードなMV撮影もこなした彼女でしたが、アルバムとしては残念ながら平凡な成績しか残せず、どうやらそれで契約は解除となってしまったようです。2011年2月、『超級偶像』第5シーズンにPK戦の挑戦者として再登場していますが、このときはアイドルっぽさは抜けていたものの、清楚なバラードシンガーといった雰囲気でした。

 

その後、ここに至るまでの詳しい状況はよくわかりません。ただ、2011年10月に行なわれた『全台青年精彩大匯演』ライブでは既に沈志方とのユニット、現在のスタイルでした。同年11月には香港のオーディション番組『超級巨聲』第3シーズンのPK戦にもこのユニットで登場し、会場を沸かせています。

そして今年2月7日、利得彙は河岸留言で行なわれたオリジナルEP『等』発表ライブで、模索していた方向性はこれであると示し、結実。ようやく彼女が立つべきところに戻った、そんな印象です。このEP、一般販売ルートに乗るといいなー。利得彙、加油

 

利得彙演出活動:
3/16 19:30- 台南貳館音樂(台南市東區東寧路西段22號B1)
3/17 19:00- 高雄kamo gamo鴨巢咖啡(高雄市新興區仁智街235號2F)
3/23 20:00- Somebody Cafe(台北市萬華區西寧南路131號2、3樓)
3/24 16:30- 浮現藝文展演中心(台中縣龍井鄉新興路55巷12號)
4/13 20:00- 123藝文空間(忠孝東路三段251巷7弄12號1樓)
4/28 20:00- A house(台北市大安區復興南路一段107巷5弄18號)

 

2月7日、河岸留言でのライブ。Adeleの『Rolling In The Deep』をカバー。


Unofficial

 

こちらは1stアルバム『花痴』から、初期の少女時代を彷彿とさせる首波主打『花痴』。


Unofficial

 

第二主打『再見太難』。ここまでやるか~。


Unofficial

 

第三主打『My Flower』。


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この素晴らしい原石を、製作陣はいったいどう研くつもりだったのか…。

 

* * * * * *

脚注

*1:この時のチャンピオンは当時台灣大學代表として出場していた韋禮安William Weiで、彼はこのコンピレーションアルバムには参加しなかったが、その後ネットで作品を発表しながらビッグネームに楽曲提供するなどクリエイターとして活躍。2011年の第22屆金曲獎では自身の1stアルバム『首張同名全創作專輯』(2010年)で最優秀新人賞を受賞している。