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K歌天后、丁噹。

丁噹Della『未来的情人』(2011)

Della2011

 

丁噹(ディンダン)。本名は吳嫻。1983年生まれ、中国浙江省嘉興の出身。英語名はDella Ding。2007年アルバムデビュー。情感溢れるバラードが人気で、皆が好んで彼女の歌をカラオケ(卡拉OK)で歌うことから『K歌天后』とも呼ばれている実力派女性シンガーです。

本作『未来的情人』は昨年1月にリリースされた丁噹の4thオリジナルアルバムで、前作となるカバー&ベスト集(+新歌1曲)『Fu Good 下一站,天后』からは半年、3rdアルバム『夜貓』からは1年4ヶ月ぶりとなります。プロデュースはヒットメーカー・鍾成虎Tiger Chungに、五月天MayDayの石錦航(石頭)と溫尚翊(怪獸)ら所属レーベル・相信音樂B'in Musicの兄貴分が担当。楽曲提供には弟分・嚴爵Yen-j、魔幻力量Magic Powerらに加え、マレーシアの女性シンガーソングライター・宇珩Yu Heng、南アフリカ生まれで現在はロンドンで活躍しているクリエイター・Pete “Boxsta” Martinも参加した、ロック、ソウル、バラード、ダンスミュージックなど彩り豊かなナンバーが揃った丁噹快心のヒットアルバムです。全11曲、昨年7月にはMV7曲を収録したDVD付きの2ndバージョン『夏日特典版』もリリースされました。

 

Pete Martin作編曲による台湾地区第五主打歌、『多愛少怪』。アルバム11曲目に収録されている英語歌『Back Up』が原曲。

 

今頃、丁噹です^^;。

僕はこのアルバム、今年の金曲獎に絡んでくるのではないか…と思ってるのです。当たったことはないですけどね^^;。ただ、そう思う根拠はあって、先日台湾の大手CDショップ・五大唱片が2011年度華語アルバム売上チャートを発表していたのですが、『未来的情人』が見事19位に喰い込んでいたのですよ。このアルバムがリリースされたのは昨年の1月21日ですから、ほぼ1年前の作品です。1月に出た作品でベスト20に入っているのはコレだけで、2月で見れば8位に入っているSuper Junior-Mの『太完美』は置いといて、あとは1位となった羅志祥Show Loの『獨一無二』(平價版)のみです。いかに1年間コンスタントに売れ続けたかという証しでもあります。

個人的な願望ですが、アルバム賞は楊宗緯Aska Yangの『原色』で決まりだと思っているので、最優秀国語女性歌手賞あたりがいいかなと^^。ライバルは田馥甄Hebe、楊丞琳Rainie Yang、A-Lin、郁可唯Yisa Yuといったところでしょうか…。孫燕姿Stefanie Sunも売れましたがけっこう瞬間的だった気もしますし、今回は蔡健雅Tanya Chua、張惠妹A-meiらベテラン勢には控えてもらって、若手にチャンスを回してほしいかな(正直なところHebeではないかと思っています^^)。ちょっと気が早すぎですねww。

丁噹は今年新作のリリースを予定しているようで、これも金曲獎前にド~ンと出してくるんじゃないかと予想してるんですけど、どうでしょう~。

 

彼女の本名は吳嫻。丁噹は芸名です。由来について真偽は定かではありませんが、彼女の友人が聞いたところでは、丁噹は日本の漫画『哆啦A夢』(ドラえもん)が大好きで、初期翻訳版の中文タイトル『小叮噹』(Xiao dingdang)から取ったとのこと。当初は『叮噹』表記にしていましたが、『“叮”の字の“口”は災いを呼ぶ』との占い師のお告げで現在の『丁噹』に収まったのだそうです。

こうしたエピソードを聞けばちょっとホノボノしてしまうところですが、彼女のここに至るまでの道のりを知るとなかなか苦労しているようで…、ちょっと涙が出てしまいました。

 

1999年、丁噹は高校卒業後、リュックサック1つを背負い、歌手になる夢を求めて家を出ました。両親は彼女が幼い頃に離婚していて、そのことには深く傷ついていたようです。丁噹は故郷を飛び出したあと、湖州、寧波の歌謡パブなど歌える場所を探して転々としました。でもまだ高校を出て間もない少女なのです。化粧の仕方も知らず、正装をしたこともない彼女はそれだけでオーディションの舞台から下ろされたこともあったそうです。

今あの頃を振り返るとただ暗く、悲しかったと彼女は言います。だいたい1、2ヶ月で別の地方に移動する。大きなリュックとトランクを持って駅に向かう。雨空の下で、誰でもいい、助けてほしい…、そう願ったこともあった、と。

2年後、彼女はようやく落ち着いて働ける場所、杭州世界貿易センターにあるパブでの仕事を得ます。毎晩8時30分から翌朝の2時まで、化粧をし、衣装を着て舞台に上がっていたそうです。

 

3rdアルバム『夜貓』(2009年)から、ジ~ンと沁みる『你為什麼說謊』。ドラマ『下一站,幸福』の挿入歌に使われたようです。

 

こうして家を飛び出して6年ほどが経った2005年、まったくの偶然でした。たまたま友人が北京駐在の滾石唱片Rock Record Taiwanのお偉いさんを連れて店を訪れ、突然に道が開かれたのです。ある記事には“8秒聴いただけで…”との記述もありましたが、それが大げさな表現であったとしても、彼女のこれまでの辛酸苦楽は、この1つの偶然で一気に報われることになったのでした。何度か歌を聴いて潜在能力ありと判断した滾石唱片は彼女と契約をします。ただ残念なことに、その後の滾石唱片側の組織改編により、この契約ではアルバムリリースまでには至りませんでした。彼女の身柄は2006年に滾石唱片CSO・陳勇志と五月天が新たに設立したレーベル・相信音樂へと引き継がれることになります。

 

結局1stアルバム『離家出走』がリリースされたのは2007年、さらに年月が掛かったわけですが、これはけっして無駄な時間ではありませんでした。丁噹は自分を磨きながら、五月天や梁靜茹Fish Leong、品冠Victor Wongらレーベル所属アーティストの妹分として大切に育てられていたようです。2006年には大陸ドラマ『神雕俠侶』の挿入歌『雙飛』を主演の黃曉明(ホヮンシャオミン)とデュエット。また、映画『盛夏光年』の挿入歌『明白』を歌い、彼女はいったい何者だ、と注目を集めました。そしてリリースしたデビュー作『離家出走』はそのタイトルのとおり、彼女のストーリーそのものです。スタッフは笑って言ったそうです。長いあいだ家を離れていた丁噹にとって、これは『回家』だ、と。

 

本作『未来的情人』から、『很愛過』。MVは昨年3月にLegacy Taipei で行なわれたライブ『一半冷血一半熱情』の映像を使っているようですね。ジ~ン…。

 

嘉善四中時代、当時彼女を受け持った音楽の先生によれば、丁噹は読書と流行歌を歌うのが好きで、とくに音楽表現の才能豊かな少女だったそうですが、テレビで奔放な活躍を見せる丁噹が当時自分が教えた少女・吳嫻だとは、今でもにわかには信じられないと言います。でも歌声を聴けば、間違いなく歌うのが大好きだったあの少女だとわかる。年月を経た今でも、すぐにその少女の姿を思い出す、と感激して語っています。そして、見た目はたしかに大人になっていますが、意志の強そうな眉はその頃と変わっていない、とも。

 

2008年に2ndアルバム『我愛上的』、2009年に3rdアルバム『夜貓』、2010年のベスト盤『Fu Good 下一站,天后』を挿んで昨年は4thアルバム『未来的情人』をリリース。丁噹は今、デビュー前の苦労が信じられないくらい順調な音楽人生を歩いているようです。

 

日本でも放映された大陸ドラマ『神雕俠侶』の挿入歌、『雙飛』。

 

カラオケ用のMVしか見つからないけど、映画『盛夏光年』の挿入歌『明白』。映画のサントラのほか1stアルバム『離家出走』、ベスト盤『Fu Good 下一站,天后』にも収録。

Unofficial

作詞作曲をした王美蓮は5人組バンド・火星人でボーカルを務める一方、ドラマ主題歌や、張惠妹孫燕姿S.H.E、梁靜茹、任賢齊、蔡健雅、そして今は亡き阿桑など多数の歌手に楽曲を提供しているクリエイターでもあります。

 

五月天・阿信とのデュエット曲『花火』。3rdアルバム『夜貓』に収録。

 

昨年末から今年1月に掛けて台湾で放送されたドラマ『真心請按兩次鈴』の主題歌、『偷偷的愛』。嚴爵とのデュエット。新作に入るかな?