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若手女性シンガーソングライターのトップ、徐佳瑩。

徐佳瑩Lala Hsu『極限』(2010)

Lala-hsu2010

 

徐佳瑩(シュージャーイン)。1984年生まれ、英語名はLala Hsu。2009年5月にアルバムデビューした期待の新進女性シンガーソングライターの2ndアルバムです。

昨年の第21屆金曲獎で新人賞を受賞したデビュー作『LaLa』は全楽曲が彼女の手によるものでしたが、この2ndアルバム『極限』では、人気作詞家・葛大為(グォダーウェイ)や蘇打綠Sodagreenのボーカル・吳青峰(ウーチンフォン)らも参加。全体的に音の繊細さや深みが増していて、例えるならカジュアルなジーンズから洗練されたワンピースに着替えたような雰囲気。失眠三部曲と名づけられたヒーリング的なミディアムナンバーが核となっている、全10曲入りのアルバムです。

 

失眠三部曲の1曲目、第2弾シングル『懼高症』。

 

本作『極限』ではジャケット写真からも感じられるように大人っぽさを前面に出していて、可愛らしさは控えめになっています。4曲目に入っている『香水』が他の曲と比べると少し派手に聞こえますが、これは2008年に彼女がオーディション番組で歌った自作曲だからかもしれません。前回の金曲獎で6部門にノミネートされたデビュー作『LaLa』は収録されている曲のほぼ半分が番組で既に歌っていた自作曲で、可愛らしいポップなナンバーやロマンティックなスローナンバーなど、いろいろなことをやってみたい新人らしさに溢れた作品でした。そんなところからも1年たったんだなぁと実感させてくれます。MVを見ても彼女に対するレコード会社の入れ込み具合がわかりますよね。

 

徐佳瑩は小学2年生のときピアノを習い始め、中学生の頃には作曲もするようになりました。2006年、インターネットで公開した最初の作品が人気となり、当時中山医学院付属病院で看護師の実習をしていたときに出場した大学主催の歌唱コンテストで優勝。そして2008年、台湾のオーディション番組『超級星光大道』第3シーズンでグランプリに輝きました。この番組は出場者100人を約6ヶ月、30ステージをかけて振るい落とし、優勝者を選ぶという壮絶な番組です。そのとき彼女が歌った、標準中国語(華語)と台湾オペラを融合させた自作曲『身騎白馬』は審査員らを驚嘆させ、最高点の25点を獲得。徐佳瑩はそれまでで最も早く満点を得た出場者となりました。

 

2008年、『超級星光大道』で25点を獲得したときの映像、自作曲『身騎白馬』。

 

『平凡なルックスとスタイルにもかかわらず、抜きん出た創作力で台湾の人気オーディション番組第3シーズンのチャンピオンを獲得した』(今周刊)

 

2008年、徐佳瑩は当時デビュー前の新人であったにもかかわらず、台湾の経済誌・今周刊による『年間財政経済風雲人物』で馬英九総統やオバマ大統領、EMSの最大ブランド・フォックスコンの会長らに混じってその年の顔に選ばれ、メディアの注目を集めました。

 

とはいえ、もちろんここにすんなりとたどり着いたわけではないようです。
オーディション番組に出る前、レコード会社各社にデモテープをたくさん送ったそうですが返事はなし。また、今では笑い話かもしれませんがこんなことも…。

ある夜カラオケで歌っていると、居合わせた酔っ払いの中年男性に歌を褒められた。ところが続いて出てきた言葉は、『顔さえ見せなければね』…。

面と向かってそこまでハッキリ言われたのは初めてだったとのことでかなり傷ついたそうですが、それも彼女の類い稀なる創作能力に火をつけた源の1つだったりするのかなぁ…、現在は謝安琪Kay TseやA-Linら有名歌手に楽曲提供するなどクリエイターとしても活躍中です。

 

『失眠三部曲』の3曲目、第1弾シングル『極限』。

 

C-POPのMVの多くは歌詞がテロップで入っているのですが、パッと見ただけでなんとなく意味がイメージ出来てしまうのが漢字のいいところ。これが平仮名や片仮名、ハングルがただズラズラ並んでいるだけだとそうはいきません。その歌詞を映像の一部としてスタイリッシュに活かし込んでいるMVも多いです。おっと、ガイナックスっぽいなんて言わないでくださいね。僕らオジサンの世代からすれば、ソレだって市川昆っぽく見えているのですから。

 

デビューアルバム『LaLa』から、『出口』。

 

台湾では長丁場のオーディションを勝ち抜きながら、デビュー前の新人が確実にファンを作っていくシステムが出来上がっています。だから1stアルバムを出す前からブレイクしている新人も珍しくないのです。

 

こちらも良い曲、デビューアルバム『LaLa』から『一樣的月光』。

 

じつを言うと僕は、徐佳瑩は日本のシンガーソングライター・YUIのような、アコースティックなストリートスタイルで行くもんだとばかり勝手に想像していて、この新作にはちょっと驚きました、そっちのほうに行ったかと。もちろんそれで僕の中での評価が下がるものでもありません。今作の徐佳瑩も聴けば聴くほど沁みますよ~。