蔡健雅Tanya Chua『若你碰到他』（2009）
シンガポール出身の実力派女性シンガーソングライター・蔡健雅（ツァイジエンヤー）の最新國語アルバムです。デモテープ作りから完成に至る過程で、世界最大級のSNSであるMyspaceを通じて、ニューヨーク、ロサンゼルス、オランダ、オーストラリアなどに住む互いを知らないアーティストたちとアイデアを出し合い、コラボレーションしながら制作していったとのこと。都会的で、ちょっと切ない雰囲気も味わえる全10曲入りのアルバムです。
愛は放物線に沿って進むが、落下したときの地点は幸せからちょっと離れている…。3曲目収録のナンバー『抛物線』。都会での孤独感、切なさがキュンと胸に迫る。
この曲はCDバージョンよりも、このMVのほうが好き。途中サビの部分で演奏が消えて、生歌みたいになるところがゾクッとくる。トリハダ立つ。CDはもちろん持っているしWALKMANにも入れてるけど、ついコッチを見てしまう^^。
1975年生まれ、シンガポール出身。1997年に地元レーベル・Yellow Musicからリリースした英語アルバム『Bored』中の1曲『Ashes』が、90年代“台灣歌壇三大天后”の1人・許茹芸にカバー[*1]されたことがキッカケで寶麗金PolyGram[*2]と契約。1999年に1stアルバム『呼吸』でメジャーデビューしました。この作品で蔡健雅は第11屆金曲獎最佳新人獎にノミネート。また中華音樂人交流協會による年度十大專輯、十大單曲にも選ばれています。
ただ、翌2000年に環球Universalからリリースした2ndアルバム『記念』は一応の成功を収めたものの、続く3rdアルバム『I Do Believe 相信』（2001年）が、ちょうど台湾で発生していた音楽著作権関連団体とケーブルTV業界組織の対立[*3]の影響をモロに受け、残念ながら売上は振るいませんでした。
8曲目に収録、アルバムタイトルソング『若你碰到他』。台湾映画『陽陽』の主題歌にもなっています。
あの人に会ったら私からの祝福を伝えて。そして私が幸せに暮らしていることをあの人と、あの人の傍にいるひとに教えて…。
『五番街のマリーへ』とか『ジョニィへの伝言』みたいな感じでしょうか…。
当初から作曲能力はズバ抜けて評価が高く、劉若英や梁靜茹ほか多数のビッグネームに楽曲提供していた蔡健雅ですが、一方シンガーとしては伸び悩んでいて、2001年末に新曲＋ベスト集『默契』をリリースした後、環球Universalとの契約は解除となってしまいます。華納Warnerと契約するのは1年置いた2003年のことですが、じつは蔡健雅はそれまでの間、日本の独立系レーベル・S2Sから7曲入りの英語アルバム『Secret Lavender』をリリースしています。歌唱力では既に定評のあった彼女ですし、なかなかの良作との話ですよ。中古でも手に入るようですので、ぜひ聴いてみたいものです。
華納Warnerでの蔡健雅は、当時新人女優だった桂綸鎂出演のMV『無底洞』のヒットや、アジアの歌姫・孫燕姿とデュエットするなど機会に恵まれ、シンガーとしての評価も急上昇。そしてついに2006年、5th國語アルバム『雙棲動物』（2005年）で第17屆金曲獎最佳國語女演唱人獎を獲得、名実共にトップアーティストの仲間入りを果たしました。
その後、2008年の第19屆金曲獎でも再び最佳國語女歌手獎と最佳專輯製作人獎の二冠を獲得していますが、受賞作となった2007年リリースの國語アルバム『Goodbye＆Hello』（亞神音樂）は、前年に彼女が母親と共にシンガポールに設立した新レーベル・Tangy Music製作による作品となっていて、この独立については当時華納Warnerとの間でいささか不愉快な事柄（契約上の？）があったから…とされています。
2曲目収録の『誰』。MVとジャケット写真のイメージが同じところからすると、作品の核はこれでしょうか？
2006年リリースの『T-time 蔡健雅 新歌＋精選』は新曲＋ベスト集の2枚組、2007年の『Goodbye＆Hello』はオーソドックスなフォークロック、2008年『My Space』は既作品と提供楽曲のアコースティックライブ盤です。とくに『Goodbye＆Hello』は、今まで自己表現が得意でなかった彼女が、自身が経験してきたこと、プライベートな感情までもさらけ出すことにチャレンジした意欲作です。
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脚注
